図書館星と呼ばれた星の巫女、その先を綴る物語

 他の星に居を構えるようになった人類は、大切な水や自薦環境を守るため紙の製造を抑え。本の生産を中止した。これにより、とある星に希少物となった地球時代の“本物の本”を管理する大規模施設が建築され、そこにはただひとりの管理者『図書館の巫女』が置かれることとなる。マリはその第15代めに選ばれたのだが……とあることから紙の本が復活することとなったのだ。時代の転換期にマリはどう生きるものか。

 図書館星から出版星へ呼び名を変えつつある星で“巫女”を務めるマリさんは、言わば旧時代の遺物となります。しかしながら彼女は少女であり、新時代の担い手でもあるわけですね。本を芯に置いた舞台設定、その完成度にも目を奪われずにいられませんが、マリさんという新旧どちらもを象徴する主人公! 変じていく世界の中、彼女が綴るエピソードはささやかでやさしくて明るくて、すばらしくリリカルなのですよ。

 繊細さをいっぱいに詰め込んだ濃密な世界観、その芳香を胸いっぱいに吸い込んでいただきたく。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋剛)