映画「ライオンキング」で主人公の父親が死ぬシーンで崖の下を走ってた動物の名前‥何だっけ？

第1話

この俺、田中白雪(たなかしらゆき)には三分以内にやらなければならないことがあった。

それは映画「ライオンキング（1994）」

における悲劇の瞬間

【主人公の父ムファサの死亡シーン】

の時に崖の下でメチャクチャ群れて移動していた動物の名前を手元のフリップに書くことである。

そうここは

「ミッキーマウス杯　TDR 冬季全日本ディズニー映画クイズ選手権大会」

（通称:冬ミッキー）の舞台。

日本では夏季のミニーマウス杯

（通称:夏ミニー）と並ぶ規模を誇る一大イベントだ。

一度これが開催されれば、

全国から選りすぐりのディズニー映画ファン（通称:DMF）が

「ワンス・アポン・ア・スタジオ-100年の思い出-」のキャラ達のように飛び出し

ディズニープリンセスの如く

回答を【歌い】、結果に【踊る】。

まさにDMF達にとっての

”お城の舞踏会”ともいえる場所なのだ。

もちろん俺もこのDMFの例に漏れないことは、名前からして分かっていただけると思う（白雪か有江流の2択だったらしい）。

子守唄代わりに「星に願いを」を聞き。

地上波には目もくれず

ディズニーチャンネルに見入り。

パパやママより先に

「ミッキー」と発声した。

映画は最新の「ウィッシュ」（マグニフィコ王の二次創作めっちゃ漁った）から古くは「ファン・ファンシー・フリー」（ミッキーと豆の木はいいぞ）まで全て視聴済み。

その甲斐あってか、無事この冬ミッキー神奈川地区大会決勝の舞台まで登り詰めることができた。

現在、点数は横並び。

そして勝敗を分ける最後の1問。

それが、前述の問題なのだ。

難しい問題ではない。

何なら簡単、いやDMFの間では常識と言ってもいい問題だろう。

だが、俺の指はエルサの魔法で凍り付いたアナのようにピクリとも動かない。

なぜだ、わからないはずがない。

アニメ版は、1作目（至高）はもちろん、

2作目（最推し）、3作目（ライオンキング0）もアースラの足の数並に見返した。

実写版（ティモンがくそ可愛い）だって公開初日に見に行った。

スピンオフの「ライオン・ガード」シリーズ（スカーファン必見）も大好きだ。

なのになぜ思い浮かばない？

いや実のところ理由は明確

俺の「ドリーム（夢形）」の問題だろう。

【ドリーム】

それはDMFの持つ「好みの偏り」。

多岐にわたるジャンルを誇るディズニー

それを見る中で自然に生まれる属性である。

俺のドリームは

「お姫様（ザ・プリンセス）」

プリンセス系の映画には強いが

それ以外への脆さは否めない。

ここにきてその弱さが顕著になった。

それだけの話だろう。

『のこりじかんは2ふんだよー！

みんながんばって⭐️ハハッ！』

場内にミッキーマウス（声-星野貴紀）の声が響き渡る。

歯噛みしながら、チラリと隣の回答者を盗み見た。

彼女はとっくにフリップを書き終え、口笛を吹いている。

曲はもちろん「スチームボート・ビル（蒸気船ウィリーのやつ）」。

彼女の名は、佐藤晩美（さとうばんび）。

冬ミッキー神奈川地区大会優勝常連者。

ドリームは「動物（ザ・アニマル）」。

動物キャラをこよなく愛し、スカーの夢小説を日夜連載している（更新待ってます）彼女にとってこの問題は、ジーニーが願いを叶えるが如く容易なものであるだろう。

ふと彼女がこちらを向き

ニカッと、笑ったような牙を剥いたような

そんな表情を浮かべた。

『のこりじかん1ふん！

いそいでいそいで！⭐️ハハッ！』

くそっ、これじゃあまるでドリーだ。

動物園にでも行っておけばと

映画館とディズニーばかりの自分の人生を

ラプンツェルの髪ばりに長く後悔する。

だかその一方で

俺の「インサイド・ヘッド」では

高速で記憶が整理され

一つの答えを絞り出していた。

その記憶は「ズートピア（2016）」

2つ張り出した立派な角。

黒い体表。

力強いその肉体。

間違いない

この問題の答えの動物は

「ズートピア」の警察署長と同一生物！！

そうか、わかった。

たどり着いた。脳裏に光景が浮かぶ。

今にも崖から落ちそうなムファサ

それを見下すスカー

健闘虚しくムファサは崖の下に落ちていく

それを飲み込むのは

「全てを破壊しながら突き進む

バッファローの群れ」！！！

答えはバッファロー！！！

『のこり30びょう！

あと少しだ！⭐️ハハッ！』

大丈夫だ、ミッキー。

答えは出た。

ゆっくりと優雅に

さながらガラスの靴を履く

シンデレラのように

フリップにペンを落とす。

だがそこで手が止まる。

本当にこれが正しいのか？

頭の中を言葉が巡る。

「バッファローでいいのか？」

「本当にバッファロー？」

「大事なタイミングでバッファロー？」

「バッファローはないんじゃないか？」

そもそも「ズートピア」もまた

俺の守備範囲ではない。

この答えは正しいのか？

そこで不意に、

ある記憶が蘇る。

ディズニー史に残る傑作

「美女と野獣（1911）」

そのアニメーションの指揮者

グレン・キーン

彼へのインタビュー記事

《キャラクターの感情は、主に眉と目に表れるもの。観客はそこを見ますよね。角など、いろいろな動物の要素も、目に合うよう整えていったんですよ」。》

ライオンの「たてがみ」

イノシシの「きば」

クマの「にくたい」

そしてそびえ立つ2本の「つの」それは‥

瞬間

俺の手は「カーズ」のグイド並の速さで動き

答えを書き上げていた。

『しゅうりょうだよ！

ぺんをおいてね！⭐️ハハッ！』

俺は‥やり遂げた‥

司会者に促され

ゆっくりとフリップを持つ。

心の中は充足感でいっぱいだった。

軽く息を吐きゆっくりと立ち上がる。

もちろん晩美もこれは当ててくる。

まだ決着は先だ。

しかし俺には”確信“がある

もう外すことはないという”確信”が

『こたえをみせてくれるかな！⭐️ハハッ！』

そう、この問題の答え

崖の下にいた生き物

それはバッファローなどではなく‥

「バイソン」

これがこそが正しいこた‥

『ざんねんふせいかいだぁ！⭐️ハハッ！』

‥‥‥‥

その言葉は俺の頭に

糸車の針の如く突き刺さり

オーロラ姫の如く、世界は暗転した。

最後の瞬間、セリフが脳をよぎる

「やっぱり、バッファローじゃねぇか」

（正解はヌーです）