第8話 業務報告書

 今回、先史研究博物館は(株)回天堂に対し公式な依頼を出しておらず、あくまで博物館の担当管理官が独断で行った依頼であった。

 本件において、社員1名の派遣費及び関連会社である『古書店 回天堂』のデータベース使用料について先方より満額での支払いを確認した。

 よって本件は通常業務として処理を行い、規定に伴い本件についての一切を外部へ発信しないように守秘義務が関連社員へ通達されることになる。

 また先史研究博物館とは今後も利益を得るためには必須の関係である事を双方で確認しており、今後共に協力していくことを確認した。


 報告書をまとめながら、わたしは松井管理官の事を考えていた。

 結局、彼女は善意から行動していたのか。

 それともその場をつくろうためについた嘘が本当だったのか。

 その真偽はわたしには分かるところではないが少なくとも、暴走が発生してからは神戸亜咲花を助けようとしていた事は本当だと思う。

 結果として彼女は神戸亜咲花を無断で覚醒させたことの責任を取る形で管理官の地位を退く形になった。

 ただ、暴走を止めたことが一考されているらしく、懲戒免職処分ではなくあくまで管理官を離任する形に落ち着いたという。

 恐らくそれで博物館側は落ち着いたと思うが、問題はこちら側だ。

 例によって留守にしていた課長がどの程度、事態を理解してわたしに仕事をまわしていたのか。

 ことと次第によっては、会長であるばあちゃんに言いつけてやろうと考えながら報告書を提出したのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

言葉地雷 サイノメ @DICE-ROLL

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ