第1話 テロリストハンター

 イラクの第二の都市、モスル。この街はテロ組織によって破壊された。

もうすぐ崩れそうな家屋の隙間からマークスマンライフルを突き出し、何かを狙っている赤い目の若い男。彼の名前は誰も知らない。というよりは無いと言った方が正しい。

彼はテロリストが支配する街で生まれたため、テロリストによる政府ごっこに付き合わされ、出生届を本来のイラク政府に提出できなかったのだ。もちろんテロ組織が運営する政府に提出された出生届になどなんの信頼性もなく、戸籍もない。成長していくにつれて彼のテロリストへの怒りも大きくなっていった。

世界各国による空爆によりテロリストらはほとんど撤退し、荒廃した街だけが残った。自分の家もわからず、両親も見つからない。

そして17歳を迎えようとしていたある日、目的もなく彼が街を歩いていると、黒い軍用車両に乗った男たちに一緒にテロリストの残党と戦わないかと誘われた。その男たちは自らをイラクの特殊部隊だと言っていた。

彼はついていくことにした。

 彼らはテロリストに強い恨みを持っており、イラクのテロ対策局から指令を受けており、時には非合法にテロリストらの残党を始末していた。彼はそこで高度な軍事訓練や、教育を受けた。

 数年後、彼は部隊のチームに感謝を告げ、舞台を去り独立。一人前のテロリストハンターとなった。その後は小さな商店街で戦利品を売り、生計を立てている。

 現在に戻る。モスルの南部。難を逃れ、破壊されていない公園。そこにタンカラーの迷彩服を着て、バラクラバをした男が近づいてくる。

脇に122ミリ榴弾砲を抱えている。信管部分がなく、そこから配線が顔を出しており、一昔前の携帯電話に繋がれている。おそらく即席爆弾だ。幸い近くに子供はいないが、この男はおそらくこの爆弾を公園に埋め、もはや雀の涙ほどになったテロ組織に対する畏怖を取り戻そうとしているのだろう。

 だが気づくと頭部は破壊され、途端に倒れ込む男。

一呼吸おいて何者かの銃声が乾いた市街地に響く。

 しばらく経った後、赤い目をした若い男が近づいてくる。彼は死んだ男と即席爆弾を抱えて砂埃の中へと消えていった。

彼がテロリストハンターだ。

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