第5話 本社

 なんやかんやあったが、無事に飛行機に乗ることができた。


 ホンダのプライベートジェットに乗り込み、ようやく腰を下ろすことができた。

先ほどの女性は私の隣の窓側に座る。

機長が出発の合図を送り、飛行機が滑走路から飛び立つ。

しかし、彼女の顔はずっと下を向いたままだ。

 モスリーが口を開く。


「…急に常識はずれな要求を申し訳ない。責任を押し付ける形になってしまった。」


「…大丈夫ですよ。私なんてどうせ遅かれ早かれクビになっていたでしょうし。」


(相当ナーバスになってんなこりゃ…)


モスリーはどう反応したら良いか分からず困惑する。


「ちなみに、お名前は?聞いていませんでした。」


「杉山葵‥です。」


「スギヤマ? 日本人ですか?」


「はい‥」


「では、これからスギヤマさんと呼ばせてもらってもよろしいですか?」


「いいですよ‥」


「ちなみになぜこの仕事を?」


「私もともと日本の警察組織で働いてて、友達から『英語喋れるなら海外で働くといいよ』って言われたので、」


「へぇ〜。全然そう見えませんでした。‥あっ」


「大丈夫ですよ。よく警察には見えないって言われます‥」


「すいません。続けてください。」


「…一応アメリカに来たんですけど、いい仕事が見つからなくて、日本に帰ろうと思ってたらお給料の高い仕事を見つけて、セキュリティ系の仕事だったからちょうどいいと思って、この仕事ならできるかもと思って応募したんです。それがこれでした。」


「案内役兼ボディーガードってことですか?」


「ただの案内役‥いや、ただの付き添いです‥」


「あっ、はい。」


(やばっ、めっちゃ気まずくなったし、もう話すこともない‥)



 数時間特にすることもなく、半日以上気まずい空気のまま、彼らを乗せた飛行機はアメリカの空港に到着する。モスリーは常時罪悪感からか緊張していたが、寝ている時だけは心が休まった。



———数時間後———



 朝日が昇っている。

 アメリカのノースカロライナ州の都市。

送迎用の黒塗りキャデラック・エスカレードから降りるとそこには一際大きなビルがそびえ立っていた。


「ここが本社か。。。」


 地元では見ない建造物に思わず驚きの声が出る。


「では、執務室まで案内しますので、ついてきてください。」


「あっはい。頼みます。」


あれ以降杉山と会話したのはこれが初めてだ。


屈強な警備員がドアの前に立ちはだかっている。


「あの…案内係の杉山です…」


杉山が胸ポケットにつけたネームタグを見せる。


「どうぞ。」


警備員が自動ドアのロックを解除する。


「…行きますよ。中、広いのではぐれないでくださいね。」


「…はい。」




———数分後———


ビルの最上階。

木製のいかにもなドアの前まで来たところだ。


杉山が扉をノックする。



コンコンコンコン‥



「す、杉山です!ただいま戻りました!」


「入ってくれ。」


中から男の声がする。

杉山がドアを開け、モスリーを部屋へ通す。


 奥のたった一つのデスクには金髪ロン毛にメガネをかけた男、スーツだがネクタイはしていない。おそらくこの会社のボスだろう。

その前の円卓には5人座っており奥から時計回りに、


20代、身長179cm程度で緑色の、シャツにカーゴパンツ、金髪海兵隊ヘアーの青い目をしたいかにもなアメリカ人。


10代、身長162cm程度でアニメのキャラクターがプリントされたシャツを着た、黒髪短髪のパソコンで何か作業をしている男。おそらくアジア系でそばかすがある。


20代、身長175cm程度でタンクトップの、艶のある茶髪を後ろでひとつ結びにしている屈強な女性。トルコ系で美しい顔つきだ。


一つ席を開け30代、身長200cm以上、アメリカ国旗柄のシャツ、ひげをはやし、スキンヘッドで顔が怖いレスラーのような大男、アメリカの国旗柄の帽子をかぶっている。


最後に30代、179cm、タンカラーのネックウォーマーで口を隠しており、全身砂漠迷彩の戦闘服を着た男。肩にはスーダンの国旗のワッペンをつけている男が腕を組んで座っている。


全員がモスリーと杉山の方を見る。

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ウーバー傭兵 オブイェークトななこ @T-345572

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