第4話 花のカーテン
「花のカーテンを作りたい」民間平和組織、フラワーソルジャーの代表は言った。
「何をバカな、君が女性だから花のカーテンと言ったのか?」
「違う、男のあなたには分らない」
「まさか、うちの団体名が、フラワーソルジャーだからなんて言わないよな。
「ネーミングなんてどうでもいい」
「図星なのか?」
「だから・・・、それにこの作戦はバカなことじゃない。世界が北と南で分断されて百年、鉄のカーテンも老朽化で崩れ落ちそうなところがある。そこを内緒で花のカーテンにすれば良い」
「そんな事をして、北と南の政府が黙っていないだろう。ともに脱北、脱南で年間数千人が行き来しようとして撃殺されているんだから」
「じゃあ、世界は分断したままで良いと言うの」
「いや、そんな事は言っていない」
「じゃあ、計画は実行します」
民間平和組織フラワーソルジャーは、世界十カ所に花のカーテンを設置した。
それから秘密裏に、北と南の人々が行き来できるようになった。
世界は北と南で分断されていた。
そして百年、北と南の文化は独自に発展にしていて、それぞれ交流はなく、長い月日でお互いに対する興味は無くなっていたが、その中でも、興味本位で壁のむこうに行ってみたいという人間が一定数いる。そういう人間が、年間数千人が撃ち殺される。
「失敗だ」
「どういうこと」
「花のカーテンは脱北。脱南はしやすくなったが。みんなそこから脱出するので、政府がそこに軍備を多く配置した。今撃ち殺される人間は数千人ではなく、数万人だ。君がやったことは、犠牲者を十倍にしただけだ」
「たとえそうだとしても、世界はこのままではいけない。分断は解消されなければ」
それからも鉄のカーテンと呼ばれる壁が、老朽化で壊れたところに、フラワーソルジャーは花のカーテンを設置していった。全ての鉄のカーテンが、花のカーテンに変わったのは、それから百五十年後の事だった。その間どれほどの犠牲が出たのか、だれにも分らない。花のカーテンは、鎮魂の壁でもあったのだ。
鎮魂 (セブンデイズチャレンジ企画2) 帆尊歩 @hosonayumu
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