第6話 もしも、ペットが人間の言葉を話したら
もしも、ペットが人間のようにお喋りすることができたら。そんなことを考えたことはあるだろうか。
誰しもタイトルくらいは聞いたことがあるだろう、十数年続く某女児向け変身アニメのシリーズがある。ほぼ毎年主人公が交代していくかのシリーズ、今年はペットの犬や猫が人間の姿になって、飼い主と一緒に変身して戦うのだが、あんなふうにペットと意思疎通出来たら……個人的には遠慮したいと思う。
犬は忠義の生き物だから、飼い主大好きかもしれないが、猫はああはならんだろうな、と思う。子供向けアニメだし、夢のないことを言うのは野暮というものかもしれないが。
でも猫は室内で飼ってほしいと思う。半分外に出しておいて、「どこかに行って帰ってこない」はないだろう、と思ったエピソードがあったし、子供たちが真似して飼い猫を外に出したり、散歩に連れて行ったりして逸走させやしないかと思ったが、まあそれは置いておこう。
いややっぱりこれだけは言っておきたい。ねこはうち!
先日職場で、何かの流れで「猫を飼ってるんですよ」という話をした。そうしたら、「散歩とかするの?」と言われた。
内心「えっ?」と思った。猫の散歩は、思った以上に広がっているのかもしれない。
譲渡元の施設は、完全室内飼いが譲渡条件だったし、外で辛い思いをしてきた元野良猫だ、また外に出して迷子にでもなったら大変だ。
私も知識のない一昔前だったら、外に出したりしていたかもしれない。猫の飼い方を調べようとすると、「散歩をさせるのがよい」と書いてある雑誌やネットの記事も出てくる。散歩をさせているSNSのインフルエンサーの影響もあるだろう。
でも、やっぱりそれは誤りだと思う。「猫は家につく」と言われるように、猫は自分の縄張りと定めた範囲で暮らすのが落ち着く生き物なのだ。外に出せば、ダニやノミがついたりするかもしれないし、感染症のリスクも上がる。
運動不足を解消するには、おもちゃで遊んであげたり、キャットタワーを用意したりすればいい。そして、「猫は液体」と言われるように、彼らは関節が柔軟にできているので、ハーネスをすり抜けてしまうこともある。迷子になったら、帰って来られないかもしれない。そう考えると、猫は快適な家の中でぬくぬく暮らすのがいいと思う。
話が逸れた。
もし、うちの猫が人間の言葉を喋ったら。私は文句をたらたら言われる予感がする。
もっと美味いご飯を用意しろとか、量もたくさん食べたいとか、たまにはマグロの刺身や肉が食べたいとか、寝ているときに撫で繰り回すなとか、広い部屋で思い切り走りたいとか、爪切りや病院は嫌だとか。それこそ、「外で遊びたい」とか言われるかもしれない。
人間のエゴで、動物に嫌なことを強いていることもあるだろうな、と思う。
気持ちよく寝ているときに、お腹を撫で回されたりしたら嫌だろうし、何かのはずみで「シャーッ!」と威嚇した時に、「もう一回お口見せて? 歯はきれい?」とか言われたら「何やコイツふざけてんのか」と思うだろう。
それでも、一緒に快適に暮らすためには、やらなければいけないことがある。
通院が必要な時もあるし、爪切りや投薬も必要なことだ。太りすぎてはいけないから、ご飯の量も決めているし、たまに鶏のささみや刺身を買ったときは、茹でてほんの少しお裾分けしているけれど、そればかりでは栄養が偏る。金持ちだったらもっと広い部屋に住んで、大きなキャットタワーとかを置いて自由に遊ばせてやりたいけれど、現状では難しい。文句を言われるだろうなと思うことは、満足にしてやれていないと思うことの裏返しかもしれない。
そもそも、動物をペットとして囲うこと自体がエゴかもしれない。しかし、共に暮らす以上は、彼らの健康を願って、嫌がられることもしないといけないのが、飼い主の責任だと思う。世の中全ての人が動物好きではないし、周囲への配慮という面もある。
忘れてはいけないのは、犬も猫も、他の動物も、人間とは違う生き物だということだ。人間が食べられるものでも、彼らには毒になることがあるし、身体の特性も違う。人間の常識は、動物には通用しない。
実際に猫を飼い始めて、苦手になってしまったものがある。猫が人間と同じように思考しているかのように台詞が当てられた、ほのぼの系猫漫画だ。フィクションにあまりグダグダ言うのも野暮だろうが、人と動物は違う生き物であるということをわきまえていきたいと思う。たまに「この子、『病院』とか『爪切り』とか理解してるのかな」と思う時もあるが、それはまた別の話だ。
最近お気に入りの猫漫画は、キュルZ氏の『夜は猫といっしょ』(KADOKAWA)である。猫あるあるがリアルで、猫の柔らかさが再現された絵が可愛いので、おすすめしておく。
猫飼い初心者の奮闘 月代零 @ReiTsukishiro
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