第13話 さよなら
「—…はい。」
スマホ越しに聞こえた懐かしい声に、私は驚いて身震いした。
「カズヤ!??カズヤなの!??」
「そうだけど。久しぶり。何、こんな変な時間に」
朝方の静かな時間だというのに、私は堪えきれず大声で泣いた。
「どうして、どうしてずっと出てくれなかったの??私、カズヤが死んじゃったらどうしようって、ずっと—…」
それ以上は声にならず、私はひたすら泣いた。
「アイカ、俺、もう、仕事してねーから、今からでも会えるけど、会わない?迎えに行く。」
「…うん。会いたい。」
化粧を直し、すぐに着替えた。
薄暗い外へ出て、和哉の車を待った。
30分もしないで、和哉が迎えにきた。
懐かしいその顔をみた瞬間、またボロボロと涙がこぼれ落ちた。
「カズヤ—…」
私は車に乗るなり、助手席から身を乗り出してカズヤの頬に触れた。
温かいその温もり。
—和哉が、生きている—
私は、カズヤのその柔らかい髪を
困ったような眉を
えくぼの似合う頬を
ゆっくりとゆっくりと優しく両手でなぞった。
涙は、留まることを知らない。
「アイカ—…」
カズヤが私の背中を抱いて、私達は何度も何度も、とろけるようなくちづけを交わした。
「カズヤ、大好きだよ。」
「俺もだよ。アイカ。ごめんな、連絡できなくて。俺ずっと、仕事できなくて、鬱になってて。」
「ううん、いいの。カズヤが元気でいてくれれば、それでいいの。よかった。」
カズヤは車を走らせる。
「アイカ、色々とごめんな。俺には、やっぱりお前が必要だ。俺と、一生一緒になろう?」
「うん、もう、いなくならないで…。」
「わかってるよ。俺にはもう、アイカしかいないんだ。俺たちは、永遠に一緒だよ。」
「カズヤ…」
アイカの目には、希望という名の明るい光が灯った。
涙を拭い、アイカは笑顔になった。
カズヤは、アクセルを踏んで車を走らせる。
海へと続く、まっすぐな一本道を、ただひたすらに、ずっと—
Downer 〜 ダウナー 〜 タカナシ トーヤ @takanashi108
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