第10章 老孤と武道家?

第九話 老狐と武道家?


「この度は、我が愚弟がご迷惑をおかけしたようで……、母から、きついお咎めを受けました。ほら、コンペイ!お前も謝りなさい!」

薫的神社の傍らにある庵の祈祷場で、和服姿の若女将風の女性が、太夫に謝っている。初めて見る客だった。その隣で、かしこまっている女性は、ヤスエという、顔見知りだ。ただし、謝るように、叱責されているのは、そのヤスエ本人ではなく、彼女に憑依している、コンペイという妖狐だった。

「申し訳ありませんでした!荼枳尼天さまのお遣いと名乗った白狐に騙されまして……、ヤスエの旦那がおかしくなった、と言って、太夫さまを呼びだせと……」

と、ヤスエに憑依しているコンペイが謝った。

「まったく!荼枳尼天さまが、そんなお遣いを差し向けるわけがないことくらい、わかるだろう?ヤスエに取り憑いて、平和ボケしてしまっているんだね!母上から、元の秩父の山で、修行し直すように!ってお達しが来たんだよ……!」

和服の女性は、一応、コノハと名乗ったが、本体は、コンペイの姉のコンジョという妖狐だった。こちらは、憑依しているのではなく、妖力によって、人間に変身しているのだ。

「まあまあ、コンペイちゃんも悪気があったわけやない!荼枳尼天さんのお遣いと言われたら、ヘタに逆らわれんキ、従うしかないワね!こっちが確認センかったガも悪いし……。ケンド、そのおかげで、相手の正体が妖狐の仲間とわかったガヤキ……」

と、太夫はコンペイを庇うように言った。

「そう言って、こいつを甘やかしては、こいつのためになりません!何か、罰を与えないと、示しがつきません!太夫のお役に立てたなら、こいつの罪を許して貰えると思います!しばらく、こいつをここで、コキ使ってくださいませんか……?」

「お願いします!秩父の山に帰ったら、二度と人間界には帰って来られません!」

コンペイは、深々と、土下座に近いほどに、頭を下げた。妖狐が修行のやり直しをさせられる、ということは、次のステップ、稲荷神社のお遣いになるか、妖力を持つ子孫を育てるか、のどちらかに進むことになる。人間社会に関わることは、ほぼなくなるということだ。

「コンペイちゃん!もうヤスエは幸せになった。オマンが居らんでも大丈夫よね!ヤスエから離れて、そうやねぇ……、オマン、子犬に化けれるかよ?柴犬になって、ここで暮らし!明日から、ミユキゆう娘が、ここで暮らすことになっチュウキ、その娘を守ってくれんかよ……?」

「人間ではなくて、子犬ですか……?」

「オマンの変身能力やと、ミユキの見鬼の能力で、あっさり見破られる!犬やったら、狐に近いろうがね……?バレても、言い訳ができるワヨ……!」


「へえ!コンペイさんが、子犬に化けて、ミユキちゃんの護衛役をするんですか……?」

明日、引っ越してくるミユキに、道順を教えに行っていた、スエが帰ってきて、柴犬ぽく変身した妖狐を見て、そう言った。

「おやおや!この子犬がコンペイとわかったかね……」

太夫は、スエに子犬のことは話していない。コンペイが変身した子犬は、ほぼ柴犬だ。

「スエにあっさり見破られる、ということは、ミユキにも、怪しいと、思われるワねぇ……」

「スエさん!何処がおかしいのですか?もう一度、やり直しますから、教えてください!」

「まず、匂いね!犬の匂いがしない!妖の匂いがプンプンするよ!次に、尻尾と耳!狐のまま、じゃあないけど、柴犬より、狐っぽいわ……!身体の曲線も、ね……!」

「匂い?それは……、スエさんだから、匂いがわかるのですよ!」

と、コンペイが反論する。

「いや!この匂いは、犬を飼ったことのある人間なら、皆わかるね……!コンペイちゃんは、犬の匂いを知らんガやないかね……?」

「犬の匂い……?知っていますよ!でも、嫌な匂いなんです!自分の身体から、あの匂いがするなんて……、気が狂いますよ!」

「ああ、そうか!犬は狐の天敵みたいなモノですからね……」

スエの言葉に子犬は頷く。

「コンペイ!オマンは、罰を与えられチュウがゾネ!犬の匂いくらい我慢ができんでどうするゾネ……!匂いは慣れるモンよね!」

太夫の言葉に、コンペイは仕方なく頷いて、もう一度変身した。汗の匂いを犬の匂いに近づけ、尻尾と耳の形も、丸みを帯びた身体も作り直した。

「まあまあ、合格かな?ミユキちゃんには、怪しまれるかもしれないけど、普通の人には、わからないわ!たぶん、シロウさんには……」

「それで、ミユキにここへ来る道順を教えたかね?」

「ええ、普通にここへ来ると、妖魔の眷属に見つかりますからね……。『方違え』ではないけど、妖魔の見張りを掻い潜るために、いくつかの関門を通過する必要がありますから……。縁切り寺の鼬(いたち)の妖の寛善さんや、物部川の川漁師の長老の獺(かわうそ)の妖、タイサクさんと、狢(むじな)の住職のコウジンさん。天狗の三郎坊。ほかに、狸の妖たちが、狐の妖魔が四国で暗躍することは、空海さんの掟に反している、と言って、協力してくれました。何ヵ所にも結界を設けて、ミユキちゃんがそこを通るたびに、ミユキちゃんに似た子供に化けた狸の妖が現れ、そのたびに、ミユキちゃんの姿は、元の姿と変わっていく。天狗の三郎坊の能力によって、ミユキちゃんは、空間を飛び越えて、この庵の結界の中に入ってくる。という手筈になっています……」

と、スエは説明した。すべての妖は、以前にスエと関わりがあったモノたちだった。そして、皆、喜んで、協力することを約束した。

「スエさん!荼枳尼天さまは、使わないのですか……?」

と、スエが一番頼りにしているはずの『荼枳尼天』の名前が出てこないことを、不思議に思ったコンペイが尋ねた。

「今回の妖魔は、遠い昔、荼枳尼天さまが稲荷神と集合なされる時に、反対した、お使いの狐の一匹が、逃亡し、時を経て、妖力が強くなったモノなんです!眷属というのも、集合反対派の狐たちと、野生の狐の中の妖力を持つモノ……。ですから、荼枳尼天さまのすぐ側に、妖魔の眷属、あるいは、スパイがいるかもしれないんです……!それに、荼枳尼天さまは、こんな人間界の些細な争い事には、関与してくれません……」

「些細なこと、か……?」

「まあ、荼枳尼天さんの力を借りんでも、大丈夫よね!妖魔は、眷属を使わんと、ナンチャアできんバァ、妖力を失くしチュウがよ!白猫の式の力で、ね……。眷属の雑魚の妖たちは、見張るだけ。攻撃はヨウセンき。ここは、四国。狐は棲めん場所ヤキ。ミユキを見失なったら、大慌てするだけよね……」


     ※

「太夫!首尾よく、いったようじゃのう……!」

山伏姿の赤ら顔に高い鼻の三郎坊が酒の入った盃を口に運びながら、言った。

その場所は、太夫の庵ではない。刻屋という、旅館の二階の二間を借りて、宴席を拵えたのだ。長机に皿鉢料理と、二合徳利が何本も並べられている。

ミユキの引っ越しを無事に終え、妖魔の眷属である妖狐たちに一泡吹かせた、戦勝祝いの宴席だった。席についているのは、男六人と女二人。コノハという、妖艶な女性が最も年少のようだ。

「まあ、手応えのない、雑魚でしたなぁ……」

と、コウジンが盃を三郎坊に差し出しながら言った。

「マッコト!最初の結界で、古狸が化けチョッた、ミユキを本物と思って、竹藪に誘い込まれて、寛善和尚らぁ、鎌鼬にボロクソにされチョリましたキねぇ……」

と、物部の川漁師の長老のタイサクが、自分の盃を呑み干して言った。

「それで、ほぼ全滅!逃げ出した、妖狐のうち、鼻の利くモンが、第二の結界に辿り着いたケンド……」

「三郎坊さんの金剛杖で、ノックアウト!第三の結界で待ちヨッタ、ワシらぁ物部組は、手柄をたてれんかったですキニ……」

「ホンに!皆さんのおかげで、無事ミユキをアテの庵に、招き入れることができました。ここの女将は、アテの昔からの馴染みの人ですキ、気兼ねのう呑んでくだされ……!」

「おお!さっき挨拶にきた、年寄の女将じゃな?太夫の幼馴染、と訊いたが、タダモンではないな!閻魔の化身か?或いは、閻魔の加護を得ておる!美人の若女将には、複数の加護がついておる!中でも、美丈夫の男の霊が、観音の指令を受けて、加護しておるな!毘沙門天の化身か?鶴の名を生前は名乗っていたようじゃ……」

と、三郎坊が、コウジンから差された盃を呑み干して、その盃をコウジンに返杯しながら言った。

「千代さんは、『顔回の生まれ替わり』言われゆうガですよ!才色兼備の若女将で、そりゃあ周りの男衆が……」

「その割りには、男と悪い噂はないようじゃのう……?」

「コウジンさん!彼女は、観音菩薩の化身じゃよ!普通の男では、手が出せんガよ……!」

二階の座敷で、自分たちの話題が『酒の肴』にされていることも知らないで、千代とお寅は、追加の酒と肴を用意している。テレビのある座敷には、千代の息子が、スエとミユキを相手に、食事をしながら、会話を交わしていた。

「お母さん!太夫さんのお知り合いの集まり、ってことでしたけど……、変な方ばかりですよね……?」

「変な?千代さん!どう、変なガぞね?」

「お坊さんがふたりに、ご長老さんらしい、お年寄り。若い女性がひとり。まあ、見た目は、変ではないですよ……、あの山伏さん以外は……。あとの小太りのお百姓さんのふたりは、狸が化けているみたいだけど……」

「まあ、人間やないね!」

「えっ?お母さんは、見えるんですか?」

「はは、アテに霊感がないことは、知っチュウろうガね……!」

「ええ、わたしも同様ですけど……」

「妖や霊は、見えんケンド、人間は見えるガよ!ケンド、あの二階の面々は、さっぱり、見えん!つまり、人間やない!と、いうことよね……!」

「あっ!そうか……!お母さんは、人を観る眼は、確かですものね!その女将の眼で、何者ともわからないなら、人に非ざるモノ……。逆説か……、流石、年の功ですね……!」

「こら!人を年寄扱いしなや!」

「それで、二階は、太夫さん以外は、妖の方々。人間のシロウちゃんと、ふたりのお嬢ちゃんは、一階、ってわけか……。でも、一緒についてきた、柴犬も怪しいですよ……。普段、他の犬には、絶対吠えない、ジョンが、吠えて、息子が、なだめていましたよ!」

「ああ、あれも妖やろうね!多分、あのミユキゆう女の子を守る、お役目なガやろうね……」

台所で、ふたりの老若の女将が会話をしているのを、スエは何気なく、訊いている。

(流石!評判の老舗旅館の女将さんね……。霊能力は、ほとんど持っていないのに、完璧な変身をしている妖たちを、見抜いている……!まあ、三郎坊さんは、天狗さんそのままだし、柴犬のコンペイは、やっぱり!ってことか……)

「スエさん!何が可笑しいのですか?」

「あら?わたし、笑ってた?そう、このお料理が、美味し過ぎて、笑顔になったんだわ……!」

「違うね!家(うち)の『はちきん女将』の会話を訊いていたのさ!わからないはずの、二階のお客様の正体を、あのふたりが、推理しているのが、可笑しかったんだよね?まあ、太夫さんが、こんな寂れた旅館で、宴会するなんて、タダ事じゃないから、お客様もタダモンじゃないことくらいは、最初から覚悟していたけど、ね……」

「ええ!ボン!わかっていたの?」

「スエちゃん!前に言っただろう?この刻屋には、はちきん女将と、美人の若女将。それと、名探偵が居るって……!俺の助手にしたいくらいだ!」

と、すぐ側の食卓で、千代の亭主相手に、酒を呑んでいるシロウが会話に入ってきた。

「なんて、素敵な家族なの……」

 と、ミユキが呟いた。

「ミユキちゃん!修行が辛すぎたら、いつでも、息抜きに、遊びにおいで……、今日はいないけど、菜々子さん、という、ちょっと霊視ができる、お姉さんがいるから……」

「あら?ボン!ミユキちゃんだけ?わたしは……?」

「スエさんは、修行を済ませた段階だろう?もう、立派な、霊媒師だよ……!」


「マッコト、土佐の酒は、美味いですのう!」

と、狸が化けている。百姓姿の男が言った。

「それと、追加できた、煮物の美味いこと!一流の料亭でも、この味は出ませんゼヨ……!」

「いやいや、この吸い物!京の料亭の味にも負けてない!これが、板前やのうて、あの女将が作ったものと、いうガでしょう?太夫!オマンの馴染みは、人間にしておくには、惜しいモンばかりやのう……!」

「それは、そうと、太夫!あのミユキという娘は、どうするガゼよ?才能は確かにあるが、まだ、幼過ぎる……。修行を誤れば、力を失くすか……、災いの元になるかゼヨ……」

「寛善さん!妖魔の眷属が、ミユキを血眼になって探しゆう!アテの庵で修行できるのは、結界の力を使(つこ)うても、一年が限界やろうねぇ……。それまでに、ミユキが初潮を迎えてくれたら、もう大丈夫ながやケンド……」

「初潮?オナゴになれば、能力を維持できるか……?」

「オナゴは、初潮の時に、能力を失くすモンが多いからのう……。ミユキは、今、いくつじゃな……?」

「三郎坊!オマンの力で何とか、しチャリ!」

「まったくの子供の初潮の時期を早めることはできんが、一年未満なら、できんことはないゾ!」

「ミユキは、数えで、十二歳のはずやが……?」

「ふむぅ!あと一年!ワシの力でもそれがギリギリ……。妖魔の眷属にそれまで、見つからないように、皆で協力して貰えるかな……?」

「それは、もちろん!我々、狸の妖は、狐の妖魔に、『デカイ顔』は、させませんキニ……!」

「物部組も、できることはするゼヨ!シバテンのゴロウにも、協力させるキ……」

「鎌鼬組は、全面協力じゃ!」

と、タイサクと寛善和尚が、年寄には似合わない声を挙げた。すると、今まで、無言で皆にお酌をしていた妖狐のコノハが、持っていた銚子を置いて、改まった声を発した。

「皆様!あまり、妖気が一ヶ所に集まると、かえって怪しまれます!実は、今回の『九尾狐』を名乗る妖魔は、我々の同族!稲荷神とは、繋がっておりませんが、巷に棲む妖狐たちとは、関わりを持つことができます。稲荷神に仕えております、我が母上から、ある妖狐が四国に密かに侵入いたした!との連絡がありました。其奴は、出雲の老狐で、九尾ではありませんが、『二股のオギン』という呼び名の婆さんです!昨日のミユキちゃんの移動には、間に合わなかったようですけど、一匹だけ、無傷のモノがいる、と警戒してください……!」

「二股のオギン?それは、我が祖先の狸と四国で争うた、空海どのに四国から追い出された、一派のモノじゃゾ!」

「むむぅ!空海どのの結界を侵して、四国に入ってきたか……?ミユキを守るも大事じゃが、四国の狸と狐の掟を護ることも、我々の使命じゃゾ……!」


「婆さん!それじゃ、まだ妖狐がいて、我々は、その妖狐と戦うことになりそうなんだな……?」

翌日、太夫の庵で探偵のシロウが尋ねた。

「さて?我々が戦うことになるろうか……?狸の妖たちが戦う気で、地方の狸の頭領に檄文を出したようや……」

昨日の宴席中に、狸の妖のひとりが、席を立ち、狸の眷属に指令を出したことを太夫は訊かされている。

「昔、四国で起きた『狐と狸の合戦』が、また始まる!ってことか?」

と、シロウが重ねて尋ねた。

「合戦には、ならんねぇ……、一対何百、何千ヤキ……、勝負にならん!アテが妖狐の立場やったら、合戦はセン!戦わず、ミユキの情報を集めることに集中するね!それと、敵の弱点を調べて、そこを攻めて、交渉の場を作るね……」

「忍びか、スパイか、のように、か……?狐らしい、といえば言えるな……」

「ここは、結界を張っチュウキ、ミユキがここに居ることは、わからん。ミユキ自身も、九尾狐が会った時のミユキとは、別人の気配になっチュウキ、妖狐といえども、ミユキ本人を見つけることは、不可能ナガよね……」

「そしたら、妖狐は、どんな手を使って、ミユキちゃんを探すんだ?」

「ミユキを知っている、人間から、情報を集めるろうね……」

「お師匠さま!それなら、ミユキちゃんのお父様が、危ないですよ!」

「そうだぜ!ミユキちゃんの唯一の家族だ!」

「まあ、誰でも、そう思う……。ソヤキ、狸の妖が、父親を見張っている。妖狐が、単純に父親に関わってくれたら、勝負はあっさりつくガやケンド……。妖狐がそんな、罠には……」

「かかってくれないでしょうね……。何千年も生きてきた、老狐ですから……」

「そしたら、別の人間から、ミユキちゃんの情報を集めようとする?ってことだよな?ミユキちゃんがここに居ると知っている人間は、それほど多くないぜ!刻屋の家族とか……」

「お寅さんの家族は、大丈夫よね!あの家族には、妖は近づけんキ……」

「そんなに、あの『はちきん』さんは、凄いのか……?そしたら、あとは……?我々だけだぜ……?」

「そうよ!探偵さん!あんたが、最も危ない人間ゾネ!不動明王の護符を使うことになりそうやねぇ……」

「婆さん!不動明王の真言をもう一回、復唱させてくれ……!」


「おいおい!何で、スエちゃんが俺の事務所兼ネグラに泊まり込むんだ?俺は男で、独身だぜ!」

市内の繁華街の外れ、古い雑居ビルの二階に、シロウの事務所はある。その応接室というか、事務所のソファーに、シロウとスエが座っている。

「それに、この柴犬まで、何でついてきたんだ……?」

スエは、敷布団と毛布を運んできて、ベッドにもなるソファーの上に、それを乗せている。その側に、コンペイが化けた柴犬のコロが、シロウを見上げているのだ。

「一番、妖狐に狙われる、シロウさんを見張るために決まっているでしょう?二番目がわたしだから、ふたりが一緒のほうが、防御しやすいんです!物部村の鎮守さまで、一夜を過ごした時に比べれば、寝る部屋が別だから、問題ないですよ!シロウさんは、わたしの父親みたいなものですから、変な噂にはならないし……」

と、スエは説明した。シロウの寝室は、隣の狭い部屋で、鍵が掛かるようになっているのだ。

「まあ、スエちゃんと俺が、男女の関係になるなんて、誰も噂はしないだろうけど……、で、この柴犬は?さっきから、変な顔しているぜ!」

と、スエの側にちょこんと『お座り』状態で、さっきから、ふたりの会話に頷く仕草をしている、不気味な柴犬をシロウは気にして尋ねた。

「この柴犬は、コロといって、ちょっと特殊なんです……。妖狐に反応するように訓練しているんです……」

「なるほど!式代わりか……?よろしく、頼むぜ!」

そう言って、シロウは、コロの頭を撫でた。コロは迷惑そうに、身体を振るわせた。

「しかし、いつまで、ここに居るんだ?婆さん(=太夫)のほうは、いいのか……?」

「いずれ、老狐が、何処かに接触してきます。狸や鼬の妖がアンテナを張っていますから、その影を掴んだら、三郎坊さんの仲間が、神通力で老狐を捕らえる手筈になっています。ですから、数日。長くて、一週間くらいですよ!その間は、わたしが料理を作ってあげます!刻屋の女将さんから、煮物の作り方を習ってきましたよ!あの味は、無理でしょうけど……」

「そいつは、楽しみだ!スエちゃんの手料理が食べられるなんて、老狐に感謝しないといけないな……」

「ワン!」

「おや?コロも、スエちゃんの手料理を期待しているのか……?」


「へぇ~、また、妖と戦うことになったの……?」

 と、電話の向こうで、ユミが訊いた。

「ああ、だから、デートは、お預けだな……。いや、デートより、君の両親に挨拶にいかないと、いけないんだけど、ね……。しかし、本当に、俺でいいのか?君なら、もっといい男と出会えるだろう……?」

 事務所の黒電話の受話器越しに、シロウが本音を語る。

スエは、コロと一緒に、夕飯の材料を買いに出かけている。事務所にいるのは、シロウだけだ。シロウは、ふと、ユミに電話をしたくなったのだ。長くて一週間くらいだが、ユミと逢えないかもしれないからだ。

「シロウさん!わたしじゃダメなの……?スエちゃんがいいの……?」

と、不安気にユミが尋ねる。

「ま、まさか……!スエちゃんは、俺にとっては、娘みたいなモンだぜ!いや、本当に、スエちゃんと、死んだユリエとを、比べてしまうんだ……。生きていて、あと、五年もしたら、スエちゃんと同じ歳になっていた……って、ね……」

「ごめんなさい!シロウさんとスエちゃんの関係が羨ましくて……。そうよ、ね!本当に親娘の関係だもの……。わたし、スエちゃんのお母さんになりたい!」

「母親?そうだ!スエちゃんは、捨て子で、両親を知らないそうだぜ!婆さんが亡くなったら、身寄りがないんだ……。まあ、あの婆さんは、百までは生きるから、スエちゃんも充分、大人になっているよ、なぁ……」

「シロウさん!それって、スエちゃんをわたしたちの養女に……ってこと?それ、素敵!太夫さんに頼んでみましょう!」

「いいのかよ?俺はいいけど……!再婚になるし、今から子供を作れるか、わからないし……」

「いいに決まっているでしょう!あんな素敵な女の子は、滅多にいないわよ!この世の『救世主』になってもおかしくない娘よ!」

「確かに、そうだぜ……。だけど、あの娘の側にいるってことは、常に、妖どもの側にいるってことだぜ……!」

「それは、今でも同じよ!わたしたちは、すでに、妖と関わりを持ってしまったんですもの……。わたし、『吉祥天』さまの護符を貰ったよ!吉祥天は、毘沙門天の妻。真言は、『オン・マカ・シュリエイ・ソワカ』よ……」


     ※

「お嬢さん!なかなか、いいものを身につけているね……?」

 ラジオの放送が終わって、社屋を出たユミの後方から、突然、声がかけられた。

 振り返ると、汚れた木綿の着物を着た、腰の曲がった老婆が、乱杭歯を覗かせて、笑っていた。

「どなたですか?何かご用でしょうか?」

「いや、あたしは、霊媒師なんだよ!あんたが身につけているのは、『吉祥天』の御札だね?ほら、あたしが持っているのは、『奈枳尼天』の御札だよ……」

 老婆は、そう言いながら、着物の懐から、梵字の書かれた紙片を取り出した。

 ユミは、不思議に感じて、その御札を覗き込む。

「違うわ!これは、奈枳尼天の護符じゃない!わたしの友人が持っている護符と、梵字が違っているわ……!」

 ユミは、アイコの持っている護符を見たことがある。眼の前の護符は、明らかに、違う模様が描かれていた。

「違わないよ!よく見てご覧!これが本当の奈枳尼天さまの護符だよ……!」

 老婆の強い語気につられて、ユミは、護符をじっと見つめる。すると、梵字のような模様が、クルクルと回り始め、あっ!と思った時には、身体の力が抜けてしまっていた。カクンと膝が折れ、地面に座り込むと、意識を失ってしまった。

「ふふふ、手間をかける女だよ!まあ、ミユキという名の霊媒師の卵に繋がる、大事な人質だから、ねぇ……」

 老婆は、懐から大きな風呂敷を取り出し、地面に膝をついたユミの頭から被せた。

「ヒューッ!」

 と、口笛のような音をたてると、幾つもの黒いモヤが集まってきて、風呂敷の端を掴むと、ユミの身体がその中に包まれた。

「さあ!寂れた『お稲荷さん』があっただろう?あそこに、この女を運び込んでおくれ!この女を餌に、次は、シロウとかゆう、ミユキと関わりの深い男を虜にするんだから、ね……」


「さ、西郷さん!あなた、うちの娘と何かあったの……!」

探偵事務所の電話が鳴って、シロウが、

「はい!西郷探偵事務所です!」

と、対応するや否や、受話器の向こうで興奮した女性の声がしたのだ。

「うちの娘?あの、すみません!どちら様でしょうか……?」

「榊原ですわ!榊原紫野!ユミがあなたに好意を抱いていることは、薄々感じていましたよ!でも、そんな深い仲になっていたなんて……」

「ああ!ユミさんのお母さま……。ご無沙汰しています!ユミさんとは、シンスケ君の事件以来、ご縁ができて、お付き合いをさせて頂いておりますが……、何か、ユミさんから、僕のことでお話があったのでしょうか……?」

シロウは、ユミが自分と結婚を前提に付き合っていることを、母親に打ち明けたのか?と思って、遠慮がちに尋ねた。

「何を悠長なこと言っているの……?ユミが誘拐されたんですよ……!」

「ユミさんが誘拐された!?いつです?何か……、そう、脅迫状のようなものが届いた、ってことでしょうか……?」

「そうよ、本人の字で、あなたに連絡して、手紙の指示に従って欲しい、って書いてあるのよ……!」

「手紙の指示?わかりました!直ぐ、そちらに伺います!警察には、まだ知らせていないですよね?ええ、僕が行くまで、何もしないでください!犯人の仲間が見張っている可能性がありますから……」

 そう言って受話器を置くと、スエがハンガーに掛けてくれていた、革ジャンを手に取った。

「ワン、ワン!」

 と、いつの間にか足元にいた、コロが吠えた。

「シロウさん!どうしたの?」

 割烹着を着たスエが、ドアを開いて、尋ねた。夕飯の仕度をしていたのだ。

「ユミさんのお母さんから、電話があって、ユミさんが誘拐されたっていうんだ!本人の書いたと思われる、脅迫状が届いたそうだ……!直ぐに、ユミさんの家に行ってくるよ……!」

「ユミさんが、誘拐された?待って!わたしも行くわ!それって、もしかしたら、例の老孤が関わっている可能性があるわ……!」

 と、言って、スエは割烹着を脱ぐと、一旦部屋を出て、火の元を確かめた。そして、麻のショルダーバッグを頭から肩へとかけると、コロに命令を下した。

「コロ!お師匠さまに、伝えるのよ!ユミさんが誘拐された、って、ね……!」

「スエちゃん!コロにそんな伝言ができるのか……?」

 と、シロウが訊いた。

「探偵野郎!オイラを見くびるんじゃあねえよ!」

「あっ!コイツ、喋った……!」


「奥さん!脅迫状というのは……?」

榊原家の応接室に入るや否や、シロウが紫野に尋ねる。

「これですわ……!」

と言って、紫野は封をハサミで丁寧に切り開いた、白い普通封筒を差し出した。

「宛名もありませんね……?」

「ええ!ポストに直接入れたものですわ!」

「では、拝見します……」

シロウが封筒から便箋を取り出す。

「ちょっと、待って……!」

便箋を開こうとしたシロウにスエが声をかけ、真言を唱えて、フッと息を吹きかけた。

「ごめんなさい!ちょっと、怪しい気配がしたから、念のために……」

「いや!ありがとう、今のは、『荼枳尼天』の真言だね?やはり、妖狐の仕業か……?」

シロウがゆっくりと三つ折りにされた便箋を開く。

「ママ、この手紙を開いたら、直ぐに、西郷さんに連絡をしてください。探偵事務所にいるはずだから。そして、シロウさんに、この手紙を渡して、手紙の指示に従うように伝えてください。わたしは、無事です。心配しないで。シロウさんを信じてあげてください」

一枚目の便箋をシロウが読みあげた。

そして、二枚目に移る。

「シロウさん!わたしは無事です!ただ、何者かに、拉致されて、何処かわからない場所に監禁されています。乱暴な目にはあっていません。その何者かの目的は、わたしではなく、シロウさんか、そのまだ先の人間のようです。その者に命じられて、この手紙を書いています。その者の風体を書くことは禁じられていますので、一応、Sと呼びます。Sはシロウさんと、話がしたいそうです。わたしに危害を加えない代わりに、シロウさんひとりで、朝倉神社の境内に来てくれと言っています。素直にSの質問に答えてくれたら、わたしにもシロウさんにも危害は加えない、と約束するそうです。シロウさん!危険と感じたら、来る必要はありません!わたしのことは大丈夫です!わたしには、『吉祥天』の護符があります。『オン・シラバッタ・ニリウン・ソワカ』……」

シロウが手紙を読み終えた。

「待って!シロウさん!最後の真言、間違えていない?『オン・マカ・シュリエイ・ソワカ』じゃなくて……?」

「そうだ!これは、吉祥天の真言じゃない!さっき、スエちゃんが唱えた、荼枳尼天の真言だ……!いや、ユミさんは、吉祥天の真言を覚えていたよ!俺に電話で教えてくれたんだから……」

「わざと間違えた……?つまり、犯人のSは、荼枳尼天の眷属……、妖狐ってことを報らせてくれたのよ……!Sということは……、『She(=シー)』、彼女、妖狐はメスってことなのね……」

「犯人は、『メスの狐』、つまり、出雲から来た、『二股のオギン』。目的は、ミユキちゃんの居場所を知ること、か……」

「そうとわかれば、対策ができるわ!三郎坊さんと寛善さん!それに、狸の頭(かしら)に協力してもらえる……。ただし、ユミさんを救出できるのは、シロウさんひとりですよ!不動明王の護符と真言を使って、ね……」

「ああ!護符がなくても、ユミさんだけは、無傷で救出するさ!俺の命と引き換えにしても、な……!」


「朝倉神社は、どう行けばいいですかね……?」

土讃線の朝倉駅にカワサキのバイクを停めて、革ジャンにジーパン。ミラー型のサングラス姿で、シロウは西に歩いて行った。路面電車の線路沿いに『朝倉神社前』の電停が眼に入った。そこにいた初老の男性に道を尋ねたのだ。

男は、無言で、神社に続く小道を指差した。

「ああ、この道を真っ直ぐですね?一本道……?」

シロウの問いに、男は頷いた。

(あの男、口がきけないのかな……?それとも、怪しい狐の眷属なのか……?)

神社の鳥居が見えて、歩みの速度を落としながら、シロウは周りの気配に集中する。武道家としての『気』を下腹部の丹田にゆっくりと沈めて行った。

神社の境内に入ると、社殿の前の杉の木の陰から、さっき会った初老の男とよく似た人物が現れた。

(兄弟なのか?本人ではないはずだ……?服装も違うし、こっちは野球帽を被っている……)

不審に感じながら、シロウは男に近づいた。

「俺は、西郷という者だが、榊原ユミという女性を探している……!俺をここへ呼び出したのは、おまえさんかい?」

周りに、男以外の人の気配はない。登場の仕方からみても、ユミを拉致した犯人の関係者としか思えなかった。

「ああ、女は預かっている。無事に返して欲しくば、ミユキという、霊媒師の卵の居どころを教えろ!」

と、男が言った。

「ミユキ?そんな女は知らねぇな……。それより、ユミは無事だろうな?」

「そこの社殿にいる!だが、簡単には、返さないぜ!ミユキという娘を知らないなんて、嘘をつかれちゃあな……。おまえがミユキの父親に会っていたのは、確認が取れているんだよ……!」

「おいおい!俺は探偵だぜ!事件の捜査でいろんな情報を集めるために、何人もの人物に会っているよ!そのひとりに、娘がいて、ミユキなんて名前だなんて、知るはずがないだろう……?」

「けっ!あくまで、シラを切る気か……?仕方ねぇ!ユミって女の指を一本噛み切ってやろうか……?」

そう言った男の口が大きく裂けるように開いて、尖った牙が現れた。それと同時に、男の顔が、狐の顔に変化していった。

社殿の前に、怪しい黒い靄が三つ現れ、靄が狐の形に変わった。社殿の扉が跳ねるように開いて、社殿の中に女性が荒縄で手足を縛られた状態で床に寝転がっているのが見えた。

「やはり、狐の妖か……!『ノウマク・サンマンダバザラダン・カン』、ヤァー!」


「シロウさん!それは、ユミさんではないわ!あぶない!離れて……!」

社殿の前の大きな杉の木の上から、スエの叫び声がした。

不動明王の真言と、二枚の護符をシロウは柔道家の気合いを込めて、狐に変じた男と、黒い靄に向けて、カードのごとく飛ばしたのだ。不動明王のパワーは、あっという間に、妖たちを炎に包み込んで、邪気を祓った。社殿の陛を駆け上ると、倒れている女性を拘束している荒縄に手を伸ばしたのだ。

スエの声がしたのは、ジャックナイフで、身体に巻き付いている縄を切ろうとした時だった。

スエの声に、シロウは素早く反応して、社殿の扉の方に、身体を反転させる。横になっていた、女性の身体が、服と荒縄を残して、中身が消えていた。その代わりに、シロウの腕がさっきまであった空間に、青白い狐の形の靄が浮かんでいた。宙に浮かんだ、その鋭い牙を持った口が、悔しそうに、カタカタと鳴った。

「クッ!あと少し……、この牙で噛みつければ、ワシの思い通りに動く、下僕にしてやることができたのに……」

そう言いながら、青白い靄は、完全に一匹の金色の狐に変化していった。大きな狐は、二本の尾を持っている。

「まあ良い!ゆっくり料理してやろう……!不動明王の護符も、品切れだろう……?さあ、ワシの眼を見よ!」

老弧の眼が金色に輝く。

「無駄だぜ!催眠術をかけようとしているなら、な……!このサングラスは、伊達じゃあ、ないのさ!『二股のオギン』さんよぅ!あんたの得意技は、お見通しなんだよ……!」

「な、何?人間のくせに、ワシの名を知っているのか……?」

「土佐の国を舐めるんじゃあねぇ!出雲ではデカイ顔ができても、四国は、弘法大師のお膝元だぜ!狐の妖に、好き勝手は、させねえんだよ!さあ、ユミさんを素直に返せば、おまえさんも、無事に出雲へ帰れるぜ!さもないと、霊力を吸い取られて、ただの死にぞこないの『老弧(ろうぎつね)』になって、この地に骨を埋めることになる!さあ、さあ……!」

「人の分際で、霊力もないくせに……!ワシに歯向かう気か……?」

「オギン婆さん!あんたひとりで、土佐中の妖たちと争うつもりかい?稲荷神もあんたの味方は、しないよ……!」

社殿の扉の前に、粋な着物姿の若い女性が現れて、オギンに言った。

「あんたは、誰?狐の妖のようだけど……?土佐に狐がいたのかい?」

「わたしの名は、ここではコノハ。ちょっと、ここの連中に恩があってね!稲荷神にお仕えしている母上から、あんたと九尾狐の出来損ないが、手を組んで悪さをしているって、報せがあったんだよ……」

「クッ!余計なことを……。妖狐なら、手出し無用にしておくれ!ワシは、人間に危害を加えるつもりはないんだ!ミユキという娘のいる場所さえ、教えてくれたら、それで、引き下がるよ!」

「ダメだね!ミユキという娘は、大切な娘なんだ!四国の妖が守っている!あんたも九尾狐とは、縁を切って、人質を返して、出雲へ帰りな……!」

「ああ、そうかい!じゃあ、人質の女は、そのままにして、ワシはここから、おさらばするよ!あんたらに、ユミという娘を探せるものか……!餓え死にするだけだよ!じゃあ、あばよ……!」


「それで?オギンとかいう狐の婆さんは逃げたがカヨ……?」

薫的神社の傍らにある庵で、太夫が尋ねた。

「まさか!三郎坊さんの眷属の烏天狗が周りを固めていましたから、あっさり、お縄になりましたよ!でも……」

と、スエが言葉を濁した。

「ユミの居る場所をオギンは白状センがやね?」

と、太夫は、その濁した言葉を察したように確認する。

「ええ、三郎坊さんの力で、オギンの妖力は、ほとんどなくなったんです!それなのに、三郎坊さんの催眠術で尋ねても、オギンの口から、ユミさんの居場所は訊き出せないんです……!」

朝倉神社の木々には、烏天狗たちが結界を張っていて、宙へ逃げようとしたオギンは、その結界に捕らえられた。天狗の頭領である三郎坊の前に引き出され、妖力を吸い取られたのだ。

「つまり、オギンは自らの術で、最後に記憶を消してしもうたってことナガやね……?そりゃ、厄介やねぇ……」

「婆さん!何とかしてくれ!早く探し出さないと、ユミさんが餓え死にしてしまう……!」

と、シロウが訴える。

「三郎坊さんにもわからん場所……?結界を張られチュウがゾネ……!アテの力でも、難しい、ねぇ……」

太夫は首を傾けた。

「ば、婆さん!ユミさんを見捨てる!ゆうガか……?」

 と、シロウが普段は使わない『土佐訛り』を興奮した所為で発したのだ。

「もちろん!全力は尽くすキニ!しかし、時間もかかる……!スエ!三郎坊さんにゆうて、烏天狗を空に放ってもらい!何処かに、結界を張っチュウ場所があるはずヤキ……!狸たちでは、ヨウ見つけんやろうキニね……」

「婆さん!俺にできることは、あるか?何でもするぜ!火の中に飛び込め!と言われたら、飛び込むぜ!」

「スエ!どう思うゼヨ?」

「婆さん!無視かよ!」

「いや!探偵さん!あんたにしかデキんことがあるガよ!それをスエがどう思うチュウか、知りたいがよ……!」

「かなりの危険を伴いますよ!」

「危険な業(わざ)なのか……?かまわない!ユミさんが助かるなら、俺は、どうなっても……!ユミさんは、今回の事件は、部外者なんだから……!さあ、教えてくれ!その危険を伴う方法を……」


「オン・ベイシラ・マンダヤ・ソワカ」

と、スエが真言を唱えた。

「覚えたかね……?」

と、太夫が言った。

「ああ、何とか……。しかし、婆さん!俺には、不動明王の護符があるんだろう?何故、毘沙門天の真言を覚えるんだ……?」

「妖狐の結界を突き抜けるためよね!」

「結界を突き抜ける……?」

「スエ!説明しチャリ!」

と、太夫は新しい御幣を作る作業に集中するために、会話をスエに譲った。

「妖狐の結界を突き抜けられるのは、普通の人間だけです!妖やお師匠さまのような霊能力を持ったモノは、弾かれてしまいます!たぶん、わたし程度でも……」

「つまり、妖力や霊能力に対してバリアを張っているってことだね……?それと、毘沙門天の真言との関係は……?」

「ユミさんのもとへ行く、わずかな方法です!ユミさんは『吉祥天』さまの護符を身につけています。その護符に導いていただくのです……。毘沙門天さまと、吉祥天さまは、ご夫妻ですから……」

「わかったかね……?結界の中に入れるのは、探偵さん!オマンひとり!闇のような結界の中で、ユミにたどり着くには『心の結びつき』しかないガよね!オマンが、どれだけ、ユミを思っているか!が勝負の分かれ目……。ユミは、オマンを信じて、待ちユウはずよ……!」

「わかった!俺が命を捨てて、ユミさんを救い出せばいいんだな……?毘沙門天の護符を信じて……」

「ダメです!シロウさん!ふたりとも生きて帰ってこないと、我々の負けなんですよ!シロウさんなら、老弧に負けない!とわたしは信じているから、この方法を選んだのです!実は、もうひとつ方法があるんです!わたしがミユキちゃんになって、囮になる方法が……。シロウさん!どっちを選択しますか……?」

「スエちゃんを囮になんかできるものか!俺が狐のババアをやっつけてやるよ!」

「そうそう、それよね!探偵さん!オマンのエイところは、何の確証もない、相手の力もわからん戦でも、勝つ!という信念を持っチュウことよね!それは、毘沙門天さんの力との相乗効果になるガよね……!」

「婆さん!それは、褒めているのか……?」

「もちろん!オマンの『武道家の魂』に賭けチュウがゾネ……!」


「もしもし!あっ!スエさんか……?よかった!太夫さんが出たら、何て話し始めたらいいのか、不安だったんだよ」

庵の黒電話をとると、そういう言葉がスエの耳に飛び込んできた。

「はい!スエですけど……、どちら様でしょうか……?」

声の主は、男性。まだ若い、というか、声変わりをしていない、少年のようだ。

「ああ、ごめんなさい!名前を先に名乗るべきだった……!僕は『刻屋』の息子だよ!先日、太夫さんが妖たちと宴会をした時に会っただろう?」

「ああ!刻屋のボンね……?あっ!ちょっと待って!確認するよ!お母さんの名前と、そのあだ名は……?」

「ふうん……、やっぱり、我が家と妖が関わりを持っているのか……?いや、その問いに答えるよ!母の名前は千代!謂われは、土佐藩初代藩主、山内一豊の妻、賢妻で有名な千代女からもらっているそうだ!あだ名は『顔回の生まれ替わり』だよ!顔回は『一を訊いて十を知る』といわれた孔子の高弟さ!」

「あらあら、これはご丁寧に……。ボンに間違いなさそうね……?それで、お師匠さまに、でなくて、わたしに何の御用?デートなら、残念だけど、今、忙しいのよ……!」

「へえ~、スエさん、冗談が言えるんだ……?あっ!シロウさんの影響か……?スエさん、シロウさんのことが好きだものね?いや!そんな話をしている場合じゃないんだ!実は、我が家の周りで、ちょっと知らせておくべきだ!と思うことがあるんだよ!」

と、ボンが話題を変えるために、一呼吸をおいた。

「この前、宴会の時に話したけど、我が家の下宿人に、ちょっと霊視みたいなことができる、菜々子さんという大学生がいるんだ……!」

「ああ、ボンの恋人ね?かなり、歳の差のある……」

「まあ、菜々子さんと僕との関係はおいといて……、その菜々子さんが、最近、我が家の周りに、狸や鼬をよく見かける!っていうんだよ!ほら、この前の宴会に狸さんが来ていたから、あり得るって、問題にしていなかったんだけどね……。今日は、狐を見たんだよ!つまり、妖狐の影なんだけど……、頭にタンコブのある狐で、狸たちと違って、こそこそ、探るような行動をしていたんだってさ!」

「狐の妖が現れた?それを菜々子さんが見た……?菜々子さんは『見鬼』なの?」

「スエさんほどじゃないよ!菜々子さんの能力の話は、またいつかに、ね……。狐の妖の話だよ!その狐が、家の側の電柱を伝って出入りしたようだから、ジョンに匂いを嗅がせて、あとをつけたんだよ!そしたら、ちょっと北の方にある、寂れた神社に入ったんだ!お稲荷さんのようなんだけど、祠があって、ジョンが吠え続けるんだ!その祠の扉が、どうやっても開かないだ!」

「ボン!ジョンって、人の言葉がわかる、名犬よね?稲荷神社の祠にジョンが反応しているのね?」

「そう!今、その神社の近くの、たばこ屋さんの公衆電話から、かけているんだ……」


「間違いございません!ここは、廃社となった、稲荷神社跡。おそらく、昔は、屋敷内に祀られていたものでしょう。今は、稲荷神はおられません……」

刻屋のボンからの電話を受けて、スエとシロウと柴犬のコロ、それと妖狐のコノハが、寂れた神社の境内に入った。

「ただ、今、この社(やしろ)には、強い結界が張られております!中を透視することができません……!」

と、コノハが妖狐の能力を使って、社の情報を伝えた。

「三郎坊さん!烏天狗たちの情報は、どうですか?ほかに結界が張られた場所は、見つかりましたか……?」

スエが、境内に植えられている檜の高木の上空に向かって尋ねた。

「特殊な結界が張られているのは、この社殿だけじゃ!」

と、空から声がした。

「間違いなさそうですね……?シロウさん!準備はいいですか?」

と、傍らで、白い柔道着に身を包んだシロウにスエが確認した。

「ああ、全日本選手権の決勝戦の畳の上に立つ気分だぜ……!」

と、シロウが黒帯を締め直しながら言った。

「スエさん!わたしの母上からの緊急連絡です!『二股のオギン』ですが、その謂われは、尻尾が二本というだけではなく、二匹の妖狐が合体した、二頭、四尾の姿をしているそうです!」

「つまり、烏天狗に捕らえられたのは、二匹のうちの一匹……?もう一匹、老弧がいるってことですね……?」

「そうです!それと、もうひとつ……。この結界は、とても特殊です!おそらく、その老弧自身が結界になっている……。シロウさまが結界に入るということは、老弧の体内に入るということです……!」

「そうでしょうね……。妖や霊能力者をブロックしているのだから……」

「それで、この結界に入るには、少し隙間を作る必要があります!力ずくで穴を開けると、中に捕らえている女性が危険な目にあうかもしれません!つまり、結界の本体に気づかれないように、侵入する必要があります……!」

「荼枳尼天さまの護符で、穴を開けるつもりですが……、ダメですか……?」

「かなりのスピードが必要ですね……。シロウさんの思念が、素早く、ユミさんのもとへたどり着ければ、いいのですが……。そこで、時間稼ぎをしようと思います。この結界の外側に、数匹の妖狐が見張りをしています!それを利用します!妖狐は、我々の眷属。しかも、四国島外から来ています。土佐のことには、詳しくない!そこで、コンペイに其奴らと接触させます!妖狐たちも老弧もコンペイの話に注目するはずです!その隙に、わたしが、結界に少し隙間を作ります……」


「へえ~、姐さんがた、出雲から来なすったんで……?アッシは、秩父の出でしてね!ある女に憑依して、この土佐に流れてきたんでさぁ……。いや、土佐はいいところだが、狸の野郎が蔓延ってましてね……。狐は肩身が狭いんですよ!ところで、姐さんがた、何か探しものですかい?わざわざ、日本海から太平洋に来なすったのは、深(ふけ)え事情があるんでしょう?アッシがお役に立てるかもしれませんぜ……!」

社の結界の境目にいた、三匹の妖狐に、コンペイは狐の姿になって話しかけている。土佐には、妖狐はいない!と思っていた出雲の狐は、コンペイに興味津々だった。

「コンペイさんとやら、あんた、ミユキっていう、霊媒師の卵の噂を訊いていないかい?いや、それより、狸や烏天狗たちが、集まっている場所とか、知らないかい?」

急に、社殿の空間から、老婆の声がした。

「えっ?姐さんたちのほかに、どなたかいらっしゃるんですかい……?」

「ふふん、あたしたちの大将が、結界を張っているんだよ……!」

と、真ん中の狐が喋った。

「コヨ!余計なことは、喋ったらいけないよ……!」

と、右側の狐が叱るように言った。

「へえ~、結界を張る、っていうか、結界自身になっているんですね……?そりゃあ、テェした妖力でゴザンスね……!きっと名のある大妖さんでしょうねぇ……?」

「ふふふ、あんたも訊いたことがあるはずさ!出雲の『二股のオギン』姐さんだよ!」

と、余計なことをいうな!と言った狐が喋った。

「フウ―」

と、ため息とも、呼吸音とも言えない声がした。

(今だ!)

コノハは、結界の中に、ひとつ穴を見つけ、そこに、念を放った。

「スエ殿!今です!あの社の赤い点に向けて、シロウさまの思念のこもった御幣を飛ばしてください!」

と、檜の枝に潜んでいる、コノハが、スエに言った。

「ワシに任せろ!確実にあの膣口を通して、老弧の子宮へと、御幣を送り込んでくれろうぞ……!」

完全な、赤い顔に長い鼻。金色の眼を輝かせた、大天狗がスエの持っていた御幣を奪い、右手の団扇の風に乗せた。御幣は、光の矢になって、社殿の中の赤い点に吸い込まれて行った。

「よし!結界を突き抜けたぞ!あとは、シロウの武道家としての力量に賭けるのみじゃ……!」

「大丈夫!ワシの寺のご本尊、毘沙門天の加護があるキ、結界の中に入れれば、こっちのものよ……!」

鎌鼬の妖が変身した、『縁切り寺』の住職の寛善和尚が、力強く言った。

(荼枳尼天さま!どうか、シロウさんとユミさんをお守りください……)


「ここは、何処だ?暗くて、ジメジメしていて、柔らかいぞ……?」

太夫の作った、新しい御幣に、シロウは毘沙門天の護符とともに思念を送り込んだ。シロウの本体は、神社の外れにピラミッド型の麻のテントを張り、その中で趺坐(ふざ)して両手で印を結んでいる。テントの周りには、結界が張られ、須弥山山頂に住む『帝釈天』を守護する四天王の護符が東西南北に置かれている。北を守護する『多聞天』は毘沙門天の別名だ。上空には、烏天狗が、警戒をしていた。

老弧の身体で作られた結界の、わずかな隙間、メスの生殖器を通って、御幣は結界の中に入った。シロウの思念が実体化したのは、老弧の子宮内だったのだ。

「毘沙門天の真言『オン・ベイシラ・マンダヤ・ソワカ 』だったな……?頼むぜ!俺をユミさんのもとへ導いてくれよ……!吉祥天さまの護符のもとに……」

シロウは毘沙門天の護符を取り出し、真言を唱え、息をフッ!と吹きかけた。その息に乗って、護符が生命体のように、ゆっくりと暗闇を飛行し始めた。

周りは、暗闇だ。足の裏には、柔らかい弾力性のある地面が感じられた。シロウは、一歩、一歩と、白い護符の飛行する方向に進んで行った。

「オン・マカ・シュリエイ・ソワカ……」

シロウの進む前方の闇の中から、微かな真言が聞こえてくる。吉祥天の真言だ。

「ユミさん!俺だ!シロウだよ!助けに来たぜ……!」

シロウは、闇の中で叫んだ。

「シロウさん!わたしはここよ!縄で縛られていて、動けないけど……、大丈夫よ!吉祥天さまが守ってくれているわ……!」

ユミは、必死で大声をあげているようだが、声は微かで、弱々しかった。

「すぐ行くよ!吉祥天の真言を唱えていてくれ!」

シロウが闇に向けて叫ぶ。返事はなかったが、ふたたび、吉祥天の真言が、闇に響き始めた。

眼の前の護符は、ゆっくりと飛行を続けている。その先は闇だ!焦る気持ちを抑えて、シロウは真言の声と護符に導かれて、前に進んで行った。

(真言の声が、かすれて行く……!体力の限界に来ているんだ……)

シロウが唇を噛み絞めた時、前を飛んでいた護符がパッと燃えるように、光を放った。その光の下に、荒縄で手足を縛られた、全裸の女性が横たわっていたのだ。

「ユミさん……!」

と叫んで、シロウはその身体を両手に抱えた。

「シロウさん……、助けに来てくれたのね……?スエちゃんや太夫さんじゃなく、シロウさん自身が……。うん!わたし、信じていた!きっとシロウさんが来てくれる、って……。裸にされたけど、吉祥天さまの護符だけは、右手の中に握り絞めていたのよ……」


「むむぅ!どうも身体が疼くと思ったら、人間が入り込んでいたのか……?」

毘沙門天の護符の光が届かない闇の一部が渦を巻くように歪んで、そこに、金色の二つの光が灯った。シロウは、ユミを縛っている縄をジャックナイフで切り、着ていた柔道着をユミの肩にかけたところだった。

「人間の分際で、どうやってこの結界に入ったのだ?隙間などないはずだが……?まあいい!ワシの身体の中にいるのだ!ゆっくり料理してやろうぞ……!」

金色の光が、二つの眼になり、護符の光に照らされて、シルバー色の狐の顔が現れた。大きな牙と、赤い舌が光に反射している。

「けっ!やっと本体を現したか……。二股のオギンさんよ!片割れの金狐は、妖力を失くして、ただの『老いぼれ狐』になったぜ!銀狐さんも同じ運命だぜ!土佐の国を甘く見やがった、代償を支払ってもらうってことだよ……!」

「何?キンが敗れた……?では、おまえがシロウという男か?ミユキに繋がる人間と訊いていたが……?まったく、妖力も霊能力も持ち合わせては、いないではないか……?ただの人間が作った護符を持っているだけのようだが……?」

ギンが不審気に顔を傾けた。そして、急に顔だけが闇から飛び出し、シロウの肩口に噛みつこうとしたのだ。

シロウは、ユミの身体を抱いたまま、大きく、左に飛んで、攻撃をかわした。

毘沙門天の護符を取り出し、真言を唱える。攻撃用ではなく、ユミの身体を守るための護符だ。

「婆さんが言った、自身の身体の中では、妖力が使えない!ってね……。攻撃力は、噛みつくだけのようだな……?勝負は見えたぜ!『ノウマク・サンマンダバザラダン・カン』!不動明王の炎と神剣を喰らえ……!」

シロウの右手から、炎の矢が老弧の顔に向かって放たれた。

「ウ、ギャー!不動明王だけじゃない!荼

枳尼天のパワーが……」

ギンの叫び声がして、闇が消えた。同時に、ユミの前から、シロウの姿も消えてしまった。

「シロウさぁ~ん……!」


「それで?ギンという老弧の片割れは、どうなったガゾネ……?いや、それより、ユミちゃん!あんた、病院に行かンと、何でここへ来たガゾネ……?しかも、その格好は?スエのセーラー服ヤイカ……!」

薫的神社の傍らの庵の祈祷場に、帰ってきた一同に対して、太夫が疑問をいくつも投げかけた。

疲労困憊のはずのユミは意外と元気で、シロウは、ぐったりとしている。

「わたしは大丈夫です!裸だったので、スエちゃんの衣装を借りたのです。このセーラー服には、特殊なパワーが溢れているんですね……?」

と、ユミがセーラー服の上着の裾を両手で引っ張りながら、言った。サイズが合っていないから、お腹の肌が丸見えになる。

「それだけじゃないでしょう?シロウさんに抱きしめられて、濃厚なキッスをしたおかげですよね……?周りの妖たちも呆れて、退散しましたよ!」

「ス、スエちゃん……!」

「おやおや、探偵さんのパワーをあんたが吸い取ったようヤねぇ……。ほら、探偵さん!ご苦労様やった……、アテの顔を見てごらん……」

ぐったりとして、声も出せないシロウがその言葉に自分の顔を太夫に向けた。太夫が印を結び、シロウの顔にフッ!と息を吹きかけた。

「な、何だ?婆さんの投げキッスかよ!気持ち悪いぜ……!」

「あら!シロウさん、いつもの口調が出ましたね……」

「本当!タクシーの中では、全く口が効けなかったのに……」

「ああ、身体が楽になった……。婆さん!あんたのパワーは、あの大妖の老弧より強いのかよ!まあ、あの御幣の複雑な効用を見たら、超能力者としか思えないが……。俺の思念を閉じ込め、結界の中で具現化させて、尚且つ、不動明王と荼枳尼天のパワーを溜めていたんだからな……。敗れた銀狐が結界を解いて、退散する瞬間に、最後っ屁のように、攻撃してきたんだよ!俺のパワーを吸い取るつもりだったようだ!」

「それで、ギンはどうなったガゾネ?」

「結界を解いたから、大天狗たちに投網を打たれて、捕らえられて、妖力を吸い取られて、ただの年老いた銀狐になっちまったよ!俺は空中からそれを眺めて、思念を本体に戻した……。それから先は……、よく覚えていないが……」

「あら?シロウさん、そのあと、柔道着の上着だけを纏ったユミさんを抱きしめて、キッスシーンを演じたことを覚えていないんですか……?」

「スエ!それからは、本能のなせることよね!探偵さんの深層部分が、脳に命じて、身体が勝手に動いた……。武道家の性(さが)かもしれん、ねぇ……」

「これで、はっきりしましたね!シロウさんは、ユミさんを自分の命より、アイシテイル!ってことが……」

「認めるよ!ユミさん!俺と結婚してくれ!」

「はい!よろしくお願いいたします……」

「やれやれ……、これで、何組のカップルをまとめたガやろう?ウチは、『お祓い』が商売で、『仲人(なこうど)』や『結婚相談所』や、ないガやケンド……」

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太夫おばあさんの不思議噺 @AKIRA54

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