疑似的体験ができるほど、技量溢れる情景描写になっている。

とにかく『巧い』と感じた作品だ。

物語は失恋の多き一人の日本人女性の視点で始まる。台湾という異国の地で海を眺めながら物思いに耽る女性だったが、一人の青年と出会い———。これ以降の内容は、是非自分の目で作品を見て欲しい。見る者によって、感じ方が百八十度異なるのではないだろうか(勿論、良い意味で)。

しかも、この作品が『ノンフィクション』だというのがまた良い。ノンフィクションは、主観的な大部分の中にどれだけ客観的な要素を詰め込めるかが鍵になってくると私は思っているので、それを考慮するとこの作品は素晴らしい出来だろう。

タイトルにも書いたが、この作品の情景描写はまるでミステリ作家のように詳しく、それでいて分かりやすい描写で、私個人の意見ではあるがとても読みやすいと感じた。
適切な文章量とそれに伴った説明が良い塩梅で、作品の良さを十二分に引き出している。もう自分が台湾に行ってこんな体験をしたのでないか、と錯覚するくらい、秀逸的な技巧が込められていた。

———長くなったが、兎に角、一度目を通すことをお薦めする。創作意欲を刺激してくれる素晴らしい作品だ。