消えた老婆とその後のこと③

「あら、ミケちゃんの」


 手をあわせる侍の背中に声をかけるのは三味線の娘。


「ハチはどうです? 大きくなりましたか?」


 声に弾かれるように立ち上がった若侍は、コホンと咳払いして、娘と並んで地蔵を磨き出す。

 笑い合い、ときおり触れる手と手に、互いにほんのりと染まる頬。

 いつしか『猫地蔵』とも『恋地蔵』とも呼ばれ出した赤いよだれ掛けの地蔵菩薩は、二人を見守るように静かに微笑んでいた。


ー了ー

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猫、貸します 東 里胡 @azumarico

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