協力者、友達を増やす。

翌日。


「こんにちは、折原優奈さん?」

「へっ、ひゃあ!」


肩までの黒髪を盛大に揺らして、同学年の少女は体をのけ反らせる。

一方稲荷は営業スマイル。


「誰……。ど、どなたですか……?」

「同い年。天童稲荷」

「い、稲荷さん!?はわ、あの時の……」

「あの時?」


ここはあえて、何も覚えていないふりを。


「……。いえ、なんでもないです。失礼しました……!ところで、何か、ご用です?」








どうして、あの時の、藍に『依頼』したという人物がわかったか。


昨日帰りに、たまたま藍を見かけた。

稲荷はささっと人混みを避けて、のんびり歩いている藍の肩に手を置く。


「えっ!」

「よっ」


驚いて振り向く藍に、稲荷は肩から手を離し、その手を挙げてこたえた。


「天童さんですか。どうされました?うまくいきました?」

「うん。でも、もう一つ聞いて欲しいことがあって」

「はい?」

「この前の女の子……依頼主とかいう子の名前教えてくれない?」

「それは……朝の、わたくしのお願いの頼みですか」

「いや、そこで聞いて欲しいことが。頼みの数を二つに変えてくれない?友人として」


これは、最初の時点で作戦を立てていなかったけど、まあ後付けでも許されるでしょう、という考えのもと、頼みの数を増やそうとしただけだ。

稲荷のこの態度は藍をイラつかせて正常な判断をさせなくしていた。


「まあ、いいですけど。友達じゃないですし。あなた、人をイラつかせる天才ですか?友達いないでしょう」

「……いるし。LINEの友達10人いるし」

「変な間。それほとんど親族ですよね」

「公式アカウント」

「けっ」


(笑われた……鼻で笑われた……)

公式アカウントは楽しい。謎トレのできる公式アカウントなんかは本当に楽しいのだ。稲荷としては。

あとは、親、有島さん、凖と……まあ、その他諸々と。

藍は稲荷の弱みを知って、密かに笑っている。

稲荷はそれを見て、とにかく。と話を戻す。


「あんたの依頼主の名前は?」

「折原優奈。同学年ですよ」

「そ」


とだけいうと、稲荷はさささっと人混みに消えた。


「……案外普通の学生ですね」


藍は遠い目をしてつぶやいた。








「折原さん。私折原さんの髪型好きで。黒くていいなって」

「……?ありがとうございます……?」


(あれ……?)

稲荷は自然な会話をしようとしたが、ぼっちは普通の会話を知らない。

普通こんなこと急に言ってこないだろ、という優奈の疑念の目を見て、稲荷は自分が案外コミュ障だと知る。

変な空気になり、優奈は見かねて稲荷に話を振った。


「天童さんの目も好きですよ私!緑色の目ってすごい珍しいですよね。日本人では特に」

「どうも。親が外国人ってわけでもないんだけどね。髪の色素も薄いし」

「逆に特別感あっていいじゃないですか!かっこいいです!」

「いやいや、折原さんみたいな綺麗な髪が羨ましい」


(そんなこと微塵も思ってないけど)

生まれついたものは、仕方ない、という稲荷の鉄則。

できれば目立たない色が良かったとは思っているが。


「本当ですか〜?ふふ、実は髪の手入れはしっかりしてるんですよ嬉しいなぁ。嬉しいなぁ」


頬に両手を置いて横に揺れる仕草。

ぶりっ子、というにはちょっと違う気がする。素でやっている気がする。

こういうのがモテるんだな、と稲荷が思ったところで、休み時間の終わりを告げるチャイムが響いた。


「じゃ」

「それでは〜」


と言いながら、稲荷と優奈は自分の教室に戻っていく。

(掴みは順調。ここからどう仕上げるか)

稲荷が狙うは自白。

仲良くなって聞き出す作戦。

優奈の性格上なんとかなる気がするが、作戦はそれしかなかった。

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天才は人知れず目を伏せる。 いなずま。 @rakki-7

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