第4話 (極大魔法に秘めた想い)

   4話(極大魔法に秘めた想い)



           1

 ……十七時。

 「あのね、これはね、とある魔法使いのね、お話だよ」

 「ちょっと待って!」

 「うんっ⁉ サヴィリクさん、どうしたの⁉ 私……すごくまずいことでもね、言ったかな?」

 「え、えっとね、そうじゃなくて……ストーリー風にしなくても、構わないよ。君のことだって、分かっているからね」

 「うーん……そうだね。でもね、それだと、すごく整合性【せいごうせい】が取れないよね」

 「あははぁ……そこはさ、すごく拘【こだわ】るんだね」

 「まあぁ、いっかぁ! そこはね、あまり、重要なところじゃないしね」

 (すごく切り替えが早い……[真顔])

 「うん、それでは、改めまして……」

 「ゴクッ(呑)」


 レシィーナ、すごく絞り出すように、自身の過去を、サヴィリクに語り始める……。


 「あのね、ものごとというのはね、初めがね、すごく肝心【かんじん】と言いますが……」

 「すごく辛辣【しんらつ】だね」

 「すごく悲しいことに、私自ら、その言葉の意味をね、すごく痛感することにね、なってしまいました……」

 (うーん……[曇])

 「あははぁ……それにしても、私も、すごくバカだよね。結果なんて、その場ではね、絶対にね、分からないのに、すごく無謀【むぼう】な発言をね、しちゃったんだからね」

 (レシィーナさん……それはね、俺だって、分かんないよ。それに、その理屈だと……)

 「そうだね……。落ち零れなんていうのは、私自身がね、一番、知ってたんだよ。したがって、どうして、あのような、発言をね、しちゃったのかなぁ……。うん、正直、今はね、すごく後悔にね、駆られているの」

 (旅立つ前なんて、誰だってね、そのようなものでしょ)

 「うーん……すごくとんでもない爆弾発言だったよね。《故郷に錦を飾る》と言ってしまったの」

 (ええ……それってさ、すごく普通のことじゃないの)

 「一度、発【はっ】した言葉はね、すごくインパクトが強くてね、拭【ぬぐ】いたくても、拭【ぬぐ】えないものでしょう。そう、私はね、自ら……すごく高いハードルをね、作ってしまった……。成功しないと、故郷にはね、戻れない……収穫ゼロでね、帰る訳にね、いかなかった……。ホント、すごく愚かな魔法使いだよね」

 (……[曇]。色々、突っ込みどころがね、満載なんだけど……。ひとまず、今はね、黙っておくことにね、するよ。でもね、どうして、そんなにね、マイナス思考なの)



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 「そして、私はね、街のみんなにね、見送られて、旅立って行きました。すごく一流の魔法使いにね、なるため……牽【ひ】いてはね、故郷の安全を確実なものとするために……ね」

 (うーん……すごく素晴らしいことなんだけどな……)

 「二日後、私はね、とある街にね、到着しました。うん、予【あらかじ】め、エントリーをしていたので、加入そのものはね、すごく容易【たやす】いことだったよ」

 (うんうん……すごく用意周到だね。俺としてはね、すごくプラス評価をしたいところだよ)

 「うーん……えっとね、どこから、話そうかなぁ……。すごく想定外なことだらけだからね」

 「ねぇ、レシィーナさん? 予【あらかじ】め、伝えておくよ」

 「ふえっ⁉」

 「あのね、すごく辛いのなら、無理をしてね、話さなくても、結構だよ。正直、今の君はね、すごく成長をしている段階だしね。俺としても、すごく弊害【へいがい】があると困るんだよね。したがって、無理にね、話すことはね、ないよ。何より、君にとって、すごく辛いことだとね、思うから。すごく無理強【むりじ】いはね、したくないの」

 「ふふっ。サヴィリクさん、お気遣い、ありがとね。でもね、大丈夫だよ。すごく覚悟はね、できているから。私の人となりをね、知ってもらうためにも、できる限りはね、話さなきゃ」

 「まあ、そうだね。俺たち、パーティー……だもんね。うん……負担にね、ならないレベルでね、お話をするといいよ」

 「うん、ありがとう、サヴィリクさん……」


 レシィーナ、深呼吸をして、一呼吸を置く……。

 ……そして。


 「うん、それじゃあ、要点だけをね、纏【まと】めて、お話をするね」

 「ふふっ。すごく賢明だと思うよ」

 「えへへ♥ ありがとう、サヴィリクさん……♥ あのね、単刀直入に言うと、どんなにね、努力をしても、同じレベルにね、なることはね、できなかった……。無論、全員、私の先をいっている訳だから、すごく当然のことなのかもしれない。私がね、下位魔法を修得したころには、中位魔法を修得している……要約すると、そのような、感じだね。どうやら、私の所属していたパーティーにとって、それはね、すごく頭の痛い話だったみたいだね」

 「うーん……それはね、すごく興味深いね。詳しく、教えてくれない?」

 「うん、お話しするよ。あのね、彼らはね、周りのパーティーに、置いていかれることをね、すごく意識していたの。住民の印象からして、すごく劣等生のように、見える……とね」

 「やっぱり、俺はね、すごく解【げ】せないね」

 「サヴィリクさん……」

 「大体、君のことをね、指名したのは、他ならない彼らだよ。本来、パーティーというのはね、すごく強い責任感があるの。君の話から、察するにね、アドバイスがなかった様子だね」

 「あははぁ……サヴィリクさん、すごく鋭いよね。うん、すごくお荷物扱いだったの」

 「それだけじゃないよ。どうして、競争にね、なっているんだろうね。冒険者とはね、街の平和と民間人の安全確保がね、規約としてあるんだよ。ギルド側にも、すごく大きな欠陥があるよね。放置していたということだからね」

 「うん……やっぱり、そうだよね。少なくとも、私の所属をしていたギルドでは、そのような方針はね、すごく皆無【かいむ】だったかなぁ……」

 (思っていた通り、すごく劣悪な環境だったみたいだね)

「それで、レシィーナさんは、パーティー内じゃあね、どのような扱いを受けていたの? おそらく、俺の予想だと、疫病神扱いをね、受けていたんじゃないかとね、踏んでいるんだけど」

 「……⁉」

 「その表情から、察するに、どうやら、ホントみたいだね」

 「うん、実はね、そうなの。すごく足枷【あしかせ】になっていたみたいだね」

 「はあぁ……そうかい……」

 「うん、えっとね、ひとまず、最低限の役割はね、果たさなきゃいけなかったから、回復役をね、務めることにしたの。まあ、もちろん、回復魔法がね、詠唱できる訳じゃないから、アイテムでね、回復役を務めていたんだけどね」

 「うーん……何というか……すごく健気【けなげ】だね」

 「えへへ♥ 確かに、すごく堅実的だよね。でもね、その任務もまた、長くはね、続かなかったなぁ……」

 「うっ……(曇)」

 「どうやら、歩くポーションだって、すごく揶揄【やゆ】されていたみたいだね。うん、ウワサなんていうのは、すごく瞬【またた】く間【ま】に、広がっちゃうんだなぁ……って」

 「それで、パーティーからは、どのようにね、言われたの?」

 「うん、いてもいなくても、同じだってね、言われたよ」

 「うーん……冒険者として、すごくありえない発言だね」

 「あははぁ……やっぱり、そうだよね」

 「ねぇ、レシィーナさん? 俺から、いくつか、質問をしてもね、いいかな?」

 「うん、私の話せる範囲なら……可能だと思うよ」

 「うん、だったら、質問をさせてもらうよ。ねぇ、報酬はね、どのような扱いだったの?」

 「あぁ……⁉」

 「まさか、ゼロということは、ないよね?」

 「うん、さすがに、それはね、すごく買い被りすぎだよ」

 「ふふっ。すごく皮肉な言い回しだね」

 「……そうだね。あのね、報酬はね、山分けだったの」

 「うん、すごく珍しく妥当だね」

 「あははぁ……そうだね。でもね、強【あなが】ち、サヴィリクさんの予想はね、すごく的を射ているよ。……私だけ……十分の一だったからね」

 「ああぁぁー……どうして……そうなるのかなぁ……(苛)」

 「サ、サヴィリクさん……ねぇねぇ、どうしたの⁉」

 「協調性なんて、教【おそ】わるまでもなく、子供の頃にね、身につけているはずなのに……どうして、おかしな方向にね、捻【ひね】くれているんだろうね」

 「えっ⁉ あっ、でもね、捻【ひね】くれていること自体はね、それほど、珍しいことじゃないとね、思うんだけど……」

 「ああぁぁ……ごめんね。すごく語弊【ごへい】のある言い回しだったね。えっとね、すごく説明がね、難しいんだけど、通常の捻【ひね】くれ者とはね、全く違うと言いたかったの。通常の捻【ひね】くれはね、妨害なんてしないからね」

 「え、ええっと……すごく難しい……ね」

 「まあ、そうだね。すごく基本的なこと……かなぁ……」

 「ええっと……ある程度はね、身についているということなのかな?」

 「…………(目を閉じる)。ねぇ、歩くポーションだって、言われたんだよね?」

 「うん……そうだね。すごく驚いたけどね」

 「まあ、すごく驚くよね。それで、すごく強引にね、捨てられちゃったの⁉」

 「うーん……サヴィリクさん、すごく鋭すぎだよ……。うん、実はね、そうなの。ある日、私がね、パーティーとの合流地点に向かったら、別の回復役……いやぁ、別のヒーラーがね、いたの」

 「ええっ⁉ 何、それ⁉ ちょっと待って、ウソでしょ⁉」

 「うんうん……ホントだよ。第一声がね、《もう、来なくていい》だったの」

 「ねぇ、それってさ、規定違反じゃない?」

 「うん、おっしゃる通りだね。まあ、すごく無駄だとはね、思ったけど、一応ね、ギルドに抗議したよ」

 「そ、それで、受付の方はね、どのような、対応をね、したの?」

 「うんうん……何もね、してくれなかったの」

 「救済措置は⁉」

 「もちろん、ないよ」

 「ねぇ、それはね、どんな街なの? 訴えてもいいレベルだよ」

 「そうだね……。一応ね、伝えてみたよ。そうしたら、街から、門前払いをね、言い渡されちゃったよ。いやぁ……あははぁ……さすがの私も、すごくショックだったね」

 「な、何なの、それ⁉」

 サヴィリク、思わず、声を荒げてしまう……!

 「あぁ……」

 「ご、ごめんね。すごく信じられなくてね……」

 「でもね、不思議とね、すごく立ち直るのはね、早かったの。うーん……どうしてだろうね?」

 「それはね、君の人柄でしょ? そこはね、すごく誇りなよ!」

 「えへへ♥ そうだね……私の取り柄なんて、それくらいだからね」

 「卑下しないの!」

 「ああ、そうだっ! 極大魔法について、伝えておかなきゃね」

 「ええっ⁉」

 「あのね、私なりにね、すごく考えたんだよ。うん……通常通りの方法だと、絶対、敵【かな】わないからね。そして、導き出した答えがね、他の人と違う方法でね、活動をすること……違う手法をね、用【もち】いらなきゃ変われない……そして、いつまでも、強くなれない……その結果、編み出したのがね、極大魔法だったの」

 「あぁ……(パクパク)」

 「たとえ、MPがね、足りなくても、すごくインパクトだけはね、残せるかなぁと思ってね……うん、すごく淡【あわ】い期待だよ」

 「そ、そんな……すごく壮絶な事情がね、あったんだ……」

 「まあ、悪魔扱いされちゃったから、すごく裏目だったんだけどね」

 「ええ……何、それ⁉ どうして、悪魔扱いにね、なっちゃうの⁉」

 「あぁ……どうやら、破壊神とね、思われちゃったみたい……」

 「すごくありえない……」

 と、サヴィリク、思わず、首を横に振りながら……。

 「回復だって、すごく変則的だけど、修得したんだけどな……」

 「ああっ⁉ それって、例の回復魔法……」

 「うん、そうだね。私のHPをね、送る回復魔法だよ。でもね、ショックなことばかりじゃなかったよ。まあ、悪魔扱いをされたということは、私がね、初めて、上回った証【あかし】だからね。すごく達成感はね、あったよ。もちろん、ホントはね、認めて欲しかったんだけどね(潤)」

 サヴィリク、レシィーナの頭に手を置きながら……。

 「認めるよ! 俺がね、認めてあげるよ! 君はね、一人でね、すごく頑張ったよ!」

 「ホ、ホント……(潤)」

 「うん、それにしても、悪魔……ね。それを言うなら、彼らがね、すごく悪魔だよね」

 「ううぅぅ……(潤)」

 「うん、冒険者たちがね、悪魔で、民間人はね、悪魔予備軍……ふふっ。君はね、毒された街からね、脱出できたんだから、すごく安心しなよ。それに、すごく収穫だってあったでしょ?」

 「えぇ……(潤)」

 「悪魔というのはね、他のことをね、顧【かえり】みない……自身の保身だけしか考えていないということがね。それに、悪魔というのはね、《自分と自分のことを尊敬する者がね、すごく大好き》だからね。そもそも、話し合いなんてね、通用しないの。君はね、身をもって、知ることがね、できたはずだよ。それこそ、すごく大きな収穫だよ」

 「サ、サヴィリクさん……(潤)。ううぅぅ……あ、ありがとう(潤)」

 「いいえ、どういたしまして」


 レシィーナ、思わず、泣き崩れてしまう……。

 サヴィリク、しばらく、レシィーナを慰【なぐさ】める……。


(やっぱり、形は違っても、俺たちは、似た境遇を生きて来たんだね)



           3

 ……十九時。

「えへへ、ごめんね♥ 私ね、すごく甘えちゃったよね♥」

 「うんうん……気にしないで。ひとまず、お互いの人となりを、知ることができたからね。うん、すごく前進することがね、できたよ」

 「う、うん……そうだね。……ねぇ、サヴィリクさん……? ……え、ええっとね……私ね、あなたのお役に立てるよね?」

 「聞くまでもないでしょ? そもそも、君の行動にはね、すごく勇気を貰【もら】っているからね。ホント……今さら、だよ」

 「う、うん……でも、やっぱり、最低限、魔法使いの任務はね、果たさなきゃいけないよね」

 「あのね、君が思っているほど、難しいことじゃないとね、思うよ」

 「ええ、どうして⁉」

 「極大魔法をね、覚えているんでしょ?」

 「う、うん……そうだね」

 「それより、難しい魔法なんてあると思う?」

 「ああっ⁉」

 「どうやら、自分自身にね、すごく傀儡【かいらい】されてたみたいだね」

 「そ、そうだね! 私……すごく高度な魔法を修得したんだもんね」

 (まあ、ホントのところ、回復魔法の方が、すごくトリッキーな魔法なんだけどね)

 「さあ、これからね、修得するよ!」

 「ええ、レシィーナさん⁉ すごく疲れたでしょ⁉ 休まなくていいの⁉」

 「サヴィリクさん、何をね、言っているの⁉ 休んでいる暇【ひま】はね、ないよ。大至急、攻撃魔法と回復魔法をね、修得しないと!」

 「レシィーナさん……すごくクレイジーだね(苦笑)」


 (どんなに辛い時でも……私はね、すごく貫【つらぬ】いていることがある。それはね、笑顔。私の笑顔はね、すごく素敵だと言われた……そして、すごく元気が貰【もら】えるとね、言われた……。これからだって、すごく辛いことはね、あると思うの。でもね、私はね、笑顔を絶【た】やさない。それはね、周りがね、認めてくれた、私にとって、初めてのことだから。そして、私はね、生まれて初めて、すごく安心できるパーティーに巡り合うことができた。改めてね、サヴィリクさんにね、恩返しをしていきたいと思っている。そして、すごく時間はね、かかるかもしれないけど、故郷に錦を飾りたいなぁ……)



           4

 ……二十一時。

 「さあ、ひとまず、今回のね、仕上げだよ!」

 「了解!」


 レシィーナ、下位攻撃魔法と回復魔法の修得に勤【いそ】しむべく……。

 条件に合った、モンスターを討伐する……。


「ふんっ! はあぁん!」

 バアアァァン、バアアァァン!


 「ふっ。攻撃アイテムの使用もね、お役御免かな?」

 「えへへ、そうだね♥ でもね、すごく寂しいなぁ……」

 「あのね、寂しがらないの。本来の攻撃アイテムの目的はね、すごく補佐的な役割なんだからね」

 「まあぁ……そうなんだけどね。すごくお世話になったからね。色々、感じるものがあるんだよね」

 「まあ、それはね、否定しないけど……」


 「ええぇぇいぃ! はああぁぁん! よーし!」

 バアアァァン! ガアアァァン! ボオオォォン!


 ……そして。

「はああぁぁ……はああぁぁ……でもね、やっぱり、すごく疲れるよね。すごく肩が張ってきたよ」

 「……そうだね。あれだけ、投げ込む……とね」


 レシィーナ、下位攻撃魔法(ファイアボム)&下位回復魔法(ポール)を修得!


 パチパチパチパチ……!

「おめでとう。第二段階の達成はね、正直、すごく難しいと思っていたよ」

 「むううぅぅ……(膨)。ああぁぁ……サヴィリクさん、すごくひどおおぉぉい!」

 「ヤダ……そんなに、不機嫌そうな顔をね、しないでよ。すごく褒めてるんだよ」

 「てへっ♥ 冗談ですよ、冗談!」

 「はあぁー……」

 「うふっ、すごくお世話になった訳だし、すごく感謝しているんだよ」

 「まあ、それはね、俺も……だよ」

 「ええ、そうなの⁉」

 「うん、改めて、自身の能力についてね、勉強することがね、できたよ」

 「うーん……私にはね、あまり、分かんないかも……」

 「まあ、教【おそ】わりながら、成長したということだよ」

 「ご、ごめんね。やっぱり、分かんない……」

 「ふふ……」

 「だからね、どうして、笑うの⁉」

 「あはは、ごめんね。すごく嬉しくて……」

 「サヴィリクさんだって、すごくクレバーだよね」

 「ふふっ。そうかもしれないね」



           5

 ……二十二時。

 「それじゃあ、出発ということで、いいんだね?」

 「うん、今日中にね、街を目指すよ!」

 「うん、すごく楽しみだね」

 「コラッ、コラッ! あまり、調子にね、乗らないの。まだ、すごく初歩的なんだからね」

 「は、はぁい(照)」


 サヴィリクとレシィーナ、テントを片し、出発……。

 数分後、ディライスレート街道に出る……。


 サヴィリク、大陸のマップを確認しながら……。

 「うん、ここから、北西方面にある、街をね、目指すよ」

 「ねぇねぇ、馬車をね、使わない? 条件をね、達成した訳だし、問題はね、ないでしょ?」

 「まあ……それもそうだね。うん、手配をね、するよ」

 『や、やった……』


 サヴィリク、馬車を手配する……。

 「うん、はい……このあたりですね。ええ……分かりました。それでは、よろしくお願いします」

 ピィ!

 「ねぇねぇ、どうなの⁉」

 「うん、問題ないよ。一時間くらいでね、来てくれるよ」

 「ええぇぇー……一時間も、待たなきゃいけないの」

 「あのね、贅沢【ぜいたく】をね、言わないの。歩くと、三時間以上はね、かかるんだよ」

 「あぁっ⁉ それはまた、すごく遠いよね……」

 「でもね、出発した距離よりはね、すごく短いよ」

 「サヴィリクさん……その発想はね、やめようよ。余計にね、疲れちゃうよ」

 「ふふっ、そうだね。それじゃあ、少し休憩をね、しながら、待っ……」

『⁉』

 「うんっ⁉ サヴィリクさん……どうしたの⁉」

 「ねぇ、誰かね、倒れてない⁉」

 「ええ、こんな街道沿いで……」


 サヴィリク、街道の先にいる、人影に注目……。

 レシィーナ、サヴィリクに、諭されるように……。


「た、確かに……何か、いるね⁉」

 「ねっ、いるでしょ⁉」

 サヴィリクとレシィーナ、モンスターの可能性も加味【かみ】しつつ、警戒をしながら、歩み寄っていく……。

 すると……。


 「「ええっ⁉」」

 「きゃあぁ⁉ モ、モンスター⁉」

 「むっ(怒)。モンスター扱いとは、すごく失礼な人だね」

 「まあ、まあ、レシィーナさん……。君、大丈夫かい⁉」


 サヴィリク、足を挫【くじ】いてしまって、動けない女性に手を差し伸べる……。

 「は、はい……これはね、ありがとうございます……うぐっ⁉」

 「ああっ⁉ サヴィリクさん、ダメだよ! 応急措置をね、しなきゃ!」

 「ええっ⁉」


 サヴィリク、レシィーナに諭されるように、街道沿いの近くにある木の下に……。

「うわぁ⁉ ホントだ! すごくひどいケガだったんだね」

 「いっ、痛っ⁉」

 「うん、ひとまず、回復魔法で、治療をするね。ポール!」

 レシィーナ、早速、修得をした、回復魔法(ポール)を発動……。

 ケガが、次第に、塞がっていく……。

 (それにしても、レシィーナさん……やっぱり、すごくよく見てるよね。それに、先ほど、修得した回復魔法を詠唱するとは、すごく器用だよね)

 「はい、治療ね、完了だよ!」

 「うふっ。ありがとう。おかげでね、すごく助かったよ」

 「いえいえ、私はね、ヒーラーですから! すごく当然のことをね、したまでだよ!」

 「ああ、そうなんだ……」

 「しかし、それにしても、感心しないね。民間人がね、護衛を頼まないで、街道を移動するとはね……」

 「ああっ⁉ ええっと……私ね、冒険者だよ」

 「「ええっ⁉」」

 「やっぱり、魔物使いはね、私服だから、すごく判別が難しいよね」

 「あ、ああぁぁ……これはね、失礼!」

 「サヴィリクさんだけじゃないよ! 私だって、すごく同じこと、考えていたもん!」

 「うふふっ、申し遅れました。私はね、冒険者ギルド、ナイバース支部にね、所属しているローラ・エルバンというね、魔物使いです。以後お見知りおきを」

 「これはね、ご丁寧に。俺はね、剣士をやっている、サヴィリク・アルウェイという者だよ」

 「同じく、魔法使いを担当している、レシィーナ・モーレッドだよ」

 ローラ、サヴィリクとレシィーナに、握手をしながら、あいさつを交わす……。

 「ええっ⁉ レシィーナ・モーレッド……」

 「……⁉ あれれ、ローラさん、どうしたの⁉ 私たち、初対面だよね?」

 「うーん……」

 と、サヴィリク、眼力を強める……。

 「ご、ごめんなさい! 私ね、すごくとんでもない勘違いをね、していました‼」

 と、ローラ、突然、平謝り……‼

 「ええっ⁉ ローラさん、どうしたの⁉ どうして、突然ね、謝るの⁉」

 『なるほど……そういうことだね』

 「あのね、私ね、ウワサだけでね、すごく失礼なことを……」

 「ええ、ウワサ……」

 「やっぱり、そうだったんだね」

 「あっ、はい……どうやら、サヴィリクさんは、すごくお察しがね、よろしいみたいだね」

 「うん、まあね……。すごく勘だったんだけどね。それで、どのような、ウワサをね、耳にしたのかな?」

 「うん、あの……嫌味【いやみ】じゃないので、そこだけはね、理解してね」

 「うん、大丈夫だよ。ある意味、君もね、すごく被害者でしょ」

 「ええ、何々……何がね、どうなってるの⁉」

 「ふううぅぅー……(深呼吸)。あのね、レシィーナさんのこと、《歩くポーション》《歩くお荷物街道》《単独行動ウエイトトレーニング》とね、聞いたの」

 「「ああぁぁ……⁉」」

 「やっぱり……ね」

 と、サヴィリク、顔を手で被せながら……。

 「…………」

 と、一方のレシィーナは、深く俯【うつむ】き……。

 「あ、あの……わ、私……」

 「大丈夫だよ。それより……問題は、こっちだね」

 「…………(唸)」

 「レ、レシィーナさん……予【あらかじ】め、伝えておくけど、絶対ね、ダメだよ!」


 すると、レシィーナ、俯【うつむ】きながら……。

 『ねぇ、サヴィリクさん? 私のこと、すごく買い被りすぎだよ』

 (ああぁぁ……また、すごく皮肉な言い回しだね)

 『すごく冷静になってね、考えてみなよ。人の皮を被った悪魔の戯れ言だよ。随時【ずいじ】、反応をしていたら、私だって、悪魔にね、蝕【むしば】まれちゃうよ』

 「う、うん……そうだね。レシィーナさんのおっしゃる通りだね(早口)」

 『勝手にね、言わせておけばいいよ』


 ……そして。

 「ふふふっ(笑)」

 「「ああっ⁉」」

 「サヴィリクさん……お気遣い、ありがとね」

 「あぁ……うん、それはね、どうも」

 「ローラさん?」

 「あっ、はいっ⁉」

 「ローラさんこそ、すごく辛いご報告、ありがとね」

 「う、うん……すごく寛大【かんだい】な言葉、感謝します!」


 サヴィリク、レシィーナの反応に、すごく驚いている様子だった……。


 「ねぇ、ローラさんだっけ……。どうして、単独でね、行動をしていたの?」

 「そうだね……。お話をしなきゃいけないよね。えっとね、先ほど、お伝えした通り、私はね、魔物使いなの。したがって、訓練をね、していたの」

 「ああっ⁉ ローラさん……だから、街道沿いにね、待機してたんだね」

 「それで、ケガをしていたら、世話がないよね」

 「ううぅぅ……すごく面目【めんもく】ない……」

 「それに、どうして、単独行動なの⁉ すごく解【げ】せないよね」

 「うん、これはね、私のエゴだね。先輩の負担にね、なりたくなくて……」

 「うん、事情はね、すごく理解したよ。でもね、ケガをしちゃったら、すごく本末転倒でしょ」

 「ああぁぁ……そうだね。違う意味……でね」

 と、苦笑いを浮かべながら、どこか、自分のことのように受け止めている様子のレシィーナ……。

 「はい……反省します」

 「ふふっ。……おっと! どうやら、お客様のご来場みたいだね」

 「「ええっ⁉」」


 大量のモンスターが、襲来(ハチの集団!)……!

 「くぅっ⁉ このようなタイミングで……(苦笑)」

 「どうして……ああっ⁉ サヴィリクさん⁉ まさか、毒の臭【にお】いにね、誘われたんじゃ……」

 「はっ、ど、毒⁉」

 「ローラさん、具合はね、悪くない?」

 「う、うん……すごく正常だけど……」

 「うん、幸い、まだ、毒は回っていないみたいだね。サヴィリクさん、モンスターの討伐をね、お願いします。私はね、彼女の解毒にあたるので」

 「ああ、何だか、よく分かんないけど、こっちはね、任せな!」

 「うん、サヴィリクさん、ありがとう。さあ、ローラさん、こっちへ来て!」

 「うん、ごめんね。色々と……ね」

 「気にしないで。これはね、ヒーラーの任務なんだから」


 レシィーナ、ローラをモンスターの群れから、遠ざけて、解毒の治療にあたる……。


 「やれやれ……まさか、彼女から、指示をされる時が来るとはね……。すごく嬉しいような、すごく悲しいような……おっと、すごく嬉しいの、一択に決まってるよね。うーん……すごく成長著【いちじる】しいよね」


 ―そして、サヴィリク。

「さあ、かかって来な!」

 サヴィリク、《リミッター解除》……。

 火力が高まる……。

 そして、大剣で……。


 「おりゃあぁ、おりゃあぁ、おりゃあぁ! うぅぉぉぉおおおぉぉぉ……」

 サヴィリク、襲い掛かるモンスターを、次々と、蹂躙【じゅうりん】する……。


 一方、ローラを解毒中のレシィーナ……。

 ふと、サヴィリクの戦闘を見つめ……。


 (す、すごい……。これがね、サヴィリクさんの本来の強さ……。うん、すごく心強いよね)

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