第2話(モチベーション低下とMP最大値上昇術)
2話(モチベーション低下とMP最大値上昇術)
1
ナイトコールド傾向……。
暗闇と雪が舞う空……。
冒険者ギルド(サヴィリク)。
「まさか、ナイトコールドの期間中にね、旅立つ方がいらっしゃるとはね……」
「うん、そうだね。世界広しといっても、俺たちだけだろうね」
「くふっ。まあ、サヴィリクさんのことですから、何か、事情がね、おありなんでしょう」
「まあ、そうだね。少なくとも、無策ということはね、ないから、そこはね、安心してくれて、構わないよ」
「承知いたしました。……。あれっ⁉ そういえば、レシィーナさんはね、どうしたの⁉」
「ああ、彼女とはね、現地集合なの。色々、準備もあるしね」
「ああ、そうでしたか……。あのね、ご理解をなさっていると思いますが、防寒対策はね、しっかり、なさってくださいね。すごく暗いだけでなく、すごく寒いですから」
「うん、すごく当然のことだね。準備万端でね、発【た】つから、心配しないで」
「まあ、あなたほどの方でしたら、すごくお節介なのかもしれませんね。でもね、夜というのは、すごく危険なモンスターがね、徘徊【はいかい】していると思いますので、特に、森や洞窟の近くにはね、行かないでくださいね」
「うん、ご忠告ね、ありがとう。すごく肝に銘じておくよ。でもね、俺……いやぁ、俺たちにとって、すごくおっかないのはね、モンスターより、ある意味ね、冒険者の方々だよ」
「ええ、すごく意味深ですね?」
「あのね、俺はね、知性がある者こそ、すごく異憚【いたん】な存在だとね、思っているの」
「サヴィリクさん……」
「自身より、優れている者を妬【ねた】み……劣っている者を見下す……すごく愚かな生き物だよ。神から、授かった知性をね、活かせない……唯一、知性がある生き物のはずなのに……。俺はね、それがね、すごく許せないんだよ!」
「ああぁぁー……(ポカンッ)」
「あっ、ごめんね。すごく熱くなってたね」
「いえ、あなたのおっしゃっていることはね、強【あなが】ち、間違っていないですよ。すごく無駄遣いしている方が、すごく多いのもね、事実でしょうから。私もね、すごく身に染みました。十人十色といっても、悪魔に傾くのはね、すごくダメですからね」
「お気遣い、ありがとね」
……。
「それに、ナイトコールド傾向はね、悪いことばかりじゃないよ。少なくとも、寒さに弱いモンスターはね、すごく動きが鈍感になるので、レシィーナさんにとってはね、すごく最適な環境だと思うの」
「なるほど……そのような、見解もありますね」
「それでは、お世話になりました」
「はい、こちらこそ、ありがとうございました。あなた方のご武運をね、心より祈っています」
「まあ、拠点地探しも、兼ねてだからね。アヴァロンもね、候補のひとつだよ」
「うふふっ。確かに、そうですね。また、お世話になるかもしれないですね」
「そうだね……。機会があったら、その時は、よろしくお願いするよ」
「ええ、こちらこそ」
サヴィリク、受付嬢さんに、旅立ちのあいさつを済ませ、レシィーナの待っている合流地点に向かう……。
「やあ、レシィーナさん? 準備はね、できたかい?」
「うん、サヴィリクの言っていた物はね、全て、揃えてきたよ」
「うん、それじゃあ、出発するよ」
「オオオオオオォォォォォォー……!」
(やっぱり、彼女の持ち味……だよね)
サヴィリクとレシィーナ、アヴァロンの街を発【た】つ……。
2
ディライスレート街道。
「ねぇねぇ、サヴィリクさん⁉ ホントに、歩いて行くの?」
「うん、そうだよ」
「でもね、大陸横断だよ。おそらく、何日かかるのかね、見当がつかないよ」
「まあ、そうだよね。ひとまず、基礎体力100をね、目指すよ」
「ああ、なるほど……さすがはね、サヴィリクさん、すごく効率のいい発想だね」
「でしょ?」
「あのね、半分はね、冗談なんだけど……(ジトー)」
「うん、俺だって、半分はね、冗談だよ」
「「…………。クスクス……」」
サヴィリクとレシィーナ、ディライスレート街道を西に進む……。
ヒュウウゥゥー……。
「うっ⁉ でもね、やっぱり、すごく寒いね」
「あっ⁉ 防寒着はね、あるんでしょ⁉ 雪だって、すごく降ってきているから、対策は万全にね」
「うん、了解……」
……。
「ねぇ、サヴィリクさん? ホント、すごく足枷【あしかせ】になっちゃうから、私はね、妥協するよ」
「うんうん……。下位魔法の修得より、MP最大値の上昇をね、優先して欲しいの」
「ええ、どうして⁉」
「すごく頼りになる時がね、必ず訪れるからだよ」
「ヤダ!」
「えっ⁉ レシィーナさん……」
「だって、サヴィリクさん、すごく抽象的なんだもん。私にだって、すごくプライドがね、あるんだよ。すごく弱いなりにもね」
「うん……そうだね。パーティーとして、すごく信頼関係は、大切だもんね。うん、了解したよ。あのね、見下す連中はね、ボスより、厄介な存在なの。したがって、その際、極大魔法の使用をね、許可するよ」
「えっ⁉ でもね、そんなことしたら……」
「構わないよ。人の皮を被った悪魔なんてね、八つ裂きにしてやればいいんだよ(真顔)」
「サ、サヴィリクさん……す、すごくおっかないよ(苦笑)」
「あのね、冗談じゃなくて、俺はね、すごく本気【ほんき】だよ。躊躇【ちゅうちょ】しているとやられるからね。この言葉をね、心に刻んで欲しいの」
「ゴクッ(呑)」
「君の考えはね、足を掬【すく】われるからね。《正当防衛》だから、遠慮なく、始末するんだよ」
「う、うん……命がね、差し迫っていたら、すごく自己防衛が、大切ということだね」
「ひとまず、約束したからね」
……。
「うーん……確かに、拠点地探しは、すごく重要だよね。活動場所がね、確保できたら、すごくリラックスだってできるしね」
「まあ、第一条件の達成が、必須条件だけどね」
「えへへ、そうだね。MP……だよね?」
「ちなみに、予【あらかじ】め、伝えておくよ。拠点地候補としてはね、人を人として見守ってくれる街が、すごく理想的だからね」
「うん、言うまでもないよね」
(どうやら、境遇はね、違っても、どこか、通じるところが、あるみたいだね)
3
十七時……(スタンダードでいう、昼時間……)。
サヴィリクとレシィーナ、防寒性の高いテントを張り、一旦、休憩をする……。
……そして、休憩のタイミングで。
「おっ、おぉほおっほおおーうぅ! やっほおおぉぉうぅ!」
「ふふっ。レシィーナさん、すごくご機嫌だね」
「うん、だってね、外で、お食事なんだもん。テンション……すごく上がっちゃうよね」
「まあ、俺だって、初体験だもんね」
「ええ、それじゃあ、サヴィリクさんは、どこかにね、拠点を設けていたんだ?」
「…………。そうだね。しばらく、すごくお世話になったよ」
「ねぇ、その間【ま】はね、何なの? すごく薄気味悪いんだけど……」
レシィーナ、サヴィリクを[じいいぃぃー]と見つめる……。
「うん、俺にだって、すごく事情がね、あったの。うん、そうだよ。住むにはね、すごく向かない街だったの。以上!」
「自分でね、纏【まと】めないでよ。まあ、すごく長い人生……すごく色々あるよね」
「あれぇ……⁉」
「えっと、これはね、サヴィリクさんのプライバシーにも、すごく関与することなので、私からはね、聞かないでおくよ」
「ああぁぁ……」
「でもね、すごく困っているのなら、相談してよね。私……パートナーとしてね、すごく力になるので」
「あ……(ポカンッ)」
「ねぇ、サヴィリクさん⁉ 私の話、聞いてるの⁉」
「はあぁ! う、うん……聞いてるよ! すごく気遣ってくれて、ありがとね」
「どうしたの⁉ まさか、具合でもね、悪いの⁉」
「い、いやぁ……そうじゃなくて……ふふっ、何だか、すごく意外だと思ってね」
「ああぁぁー⁉ サヴィリクさん、ひどおおぉぉい⁉ 私のこと、すごく浅はかな考えしかできない女の子だと、思っていたでしょ⁉」
「ごめん、ごめん! 謝るからさ。それに、俺はね、すごく褒めてるんだよ」
「ホ、ホントに……(ジトー……)」
「うん、だから、そんな顔をね、しないで欲しいな……」
「えへへ♥ ごめんね♥ すごく遊んじゃった……サヴィリクさん、何だかんだいって、すごく真面目なんだもん。少しでも、リラックスできていたら、嬉しいな……」
「ふふっ。やっぱり、すごく意外だね」
「もおおぉぉうぅ! サヴィリクさん、いい加減にしなよ!」
レシィーナ、[ぷううー]と、顔を膨らませる……!
「ごめんね。君とはね、すごく素敵な関係をね、築【きず】けそうだよ」
「えへへ♥ サヴィリクさん、ありがとう♥」
『やっぱり、すごく俯瞰的【ふかんてき】にね、ものごとを捉【とら】えているよね』
「うんっ⁉ サヴィリクさん、どうしたの⁉ すごく嬉しそうだね」
「ふふっ。少しいいことがあってね。すごく嬉しかったの」
「うん、すごくポジティブだね。うんうん、それはね、すごく結構なことだよ」
サヴィリクとレシィーナ、食事を摂【と】りながら、お互いの人となりを知っていく……。
……そして。
話は、本題に入っていく……。
「さあ、モンスターを倒してね、経験をね、積んでいくよ」
「うん、そうだね。でもね、すごく姑息【こそく】じゃない?」
「うん、どうして⁉」
「だって、ハンディキャップを背負っているモンスターをね、相手にする訳でしょ⁉ なんというか、とても正攻法とは、思えないよね」
「あのね、半人前の君がね、発する言葉とはね、思えないよ」
「えっ⁉ だって……」
「だってじゃないの。そういうのはね、経験を積んでから、言って欲しいよね」
「うーん……あまり、納得できないけど、サヴィリクさんはね、すごく経験豊富だし……うん、そうだね。口答えして、ごめんね。サヴィリクさんの意見にね、従【したが】うよ」
「ねぇ、レシィーナさん⁉」
「ええ、何⁉」
「あのね、ひとつ、聞いてもいいかな?」
「うん、いいよ」
「ねぇ、奇襲って、知ってる⁉」
「うん、それくらいはね、知ってるよ。ゲリラ作戦でしょ⁉」
(そっか……言葉については、聞いているんだね)
「あのね、すごく基本的なことをね、伝えておくよ」
「ええ、何々⁉」
「戦闘というのはね、騙し合いだよ。如何【いか】にして、先手を打つことができるのか、それによって、すごく優位性がね、決まるんだよ。バカ正直にね、戦ってもね、誰も、責任は取ってくれないよ。無論、自己責任だからね」
「う、うん……そうなんだ……」
(やっぱり、心なしか、納得していない様子だね。彼女の育った環境はね、すごく詭弁【きべん】な世界かもしれないね。うん、よく生きていてくれたね)
サヴィリク、一瞬、心なしか、寂し気な目をする……。
「ねぇ、サヴィリクさん⁉ 戦闘の基本をね、私にね、教えてくれない? サヴィリクさんの足枷【あしかせ】にね、なりたくないから」
「うん、元よりそのつもりだよ」
(ひとつね、見つけたよ。君はね、決して、人のことを否定しないよね。すごく立派だよ)
4
「ほら、これをね、使って!」
「ええ、これって、攻撃アイテムだよね?」
「うん、そうだよ。少なくとも、現状の君はね、下位魔法が使えないからね。精一杯ね、アイテムにね、頼りなよ。アイテムというのは、そのためのものだからね」
「うん、了解!」
……そして。
「えいっ!」
ボカアアァァン!
「ふんっ!」
バアアアァァァン!
「はいっ!」
ドオオオォォォン!
と、多種多様なモンスターに、奇襲を仕掛けて、倒していく……。
……しばらく。
「うん……ふむふむ、なるほどね」
サヴィリク、レシィーナのステータスを確認中……。
「サヴィリクさん……どうかなぁ?」
「うん、すごく幸先のいいスタートだよ」
「ほおぉー……」
レシィーナ、胸をなでおろす……。
「ねぇ、レシィーナさん⁉ 戦闘をね、続けるよ」
「うん、まだまだ、経験が足りないよね。私もね、すごく自負【じふ】しているよ」
「でもね、対象のモンスターをね、限定させてもらうよ」
「ええ、どうして⁉ 経験値の得られないモンスターがね、いたの⁉」
「うんうん、そういうことじゃないの。忘れているかもしれないから、改めて、伝えておくね。第一目標はね、MP最大値の上昇だよ。極大魔法がね、発動できる数値までのね」
「うん、そうだね。でもね、それがね、どうして、モンスターの選別にね、繋【つな】がるの?」
「うん、すごくいい質問だね。すごく単刀直入にね、言うよ。討伐【とうばつ】するモンスターによって、得られるステータスがね、違うの」
「それって、つまり……経験値とはね、別枠【べつわく】ということ?」
「まあ、そういうことになるよね。君がね、思っているより、すごく複雑なの」
「ホントだね。闇雲に倒しても、すごくベネフィットが少ないよね」
「そうだね……。それじゃあ、状況をね、把握【はあく】したところでね、討伐【とうばつ】対象のモンスターをね、教えておくよ」
「うん、よろしくお願いします」
と、レシィーナ、頭を下げながら……。
それから、特定のモンスターに、対象を絞【しぼ】り、前述の方法で、倒していく……。
―そして。
「…………(凝視)」
サヴィリク、再度、レシィーナのステータスを確認中……。
「ねぇ、サヴィリクさん⁉ 如何【いかが】かな?」
「うん、すごくいい感じだね。ほら、見てごらんよ。MP値がね、上昇しているでしょ⁉」
「ホ、ホントだ! すごくクレイジーだけど、サヴィリクさんのおっしゃった通りだね」
「さあ、すごく光明【こうみょう】が見えてきたね」
「うん、そうだね。サヴィリクさんのおかげだよ。ありがとね」
「ふふっ。それはね、どうも……」
(うん、すごく劣悪な環境でね、育ったはずなのに、笑顔を絶やさないで、生き抜いてくれた、彼女にね、すごく感服【かんぷく】のひとことをね、送らせてもらうよ。まあぁ……俺の想像でしかないんだけどね)
5
二十一時……。
サヴィリクとレシィーナ、ディライスレート街道から、外れて、南西方面に移動……。
「ねぇねぇ、サヴィリクさん⁉ 街道から、外れちゃってね、大丈夫なの⁉ すごく凶暴なモンスターとね、遭遇【そうぐう】しない⁉」
「ふふっ。心配はね、ご無用だよ。この近くにね、湖がね、あるの」
「へえぇー……そうなんだ」
「あのね、湖にはね、モンスターは、寄り付きにくいの。湖そのものがね、ある種のウォーターハザードだからね」
「あっ⁉ もしかして、湖に落っこちちゃうと、水系のモンスターにね、為【な】す術【すべ】なく、やられちゃうとか……えへへ、まさか……ね」
「ああー……」
「うん、サヴィリクさん、どうしたの⁉ 私ね、すごく余計なことを言っちゃった……」
「い、いやぁ、とんでもない! レシィーナさんのね、おっしゃる通りなの」
「ええー……ホントなの⁉」
「うん、実はね、その通りなの」
「ええっと……発言、してみるものだね」
「うん、すごくお見事だったよ。でもね、時と場所はね、考えて発言してね。言葉はね、すごく凶器にだって、なり得るものだからね」
「えへへ、はああぁぁい♥」
ビユユユュュュゥゥウウゥゥー!
雪の降り方が、すごく激しくなり、地吹雪を伴った吹雪状態に……!
サヴィリクとレシィーナ、湖のそばに、防寒性の高いテントを張る……。
「ええっと……すごく結果論だけど、湖を目指したのはね、正解だったよね」
「うん、そうだね。この天候だと、活動できないからね」
「もしかして、それもね、予想をしていたの?」
「ええっ⁉ う、うん……そうだよ」
「ヤダ! やっぱり、サヴィリクさん、すごく素晴らしいよね」
「そうでしょう、そうでしょう」
「うん、私も、見習わなきゃね」
(はあぁー……この場の雰囲気といったら、それまでだけど、背伸びをしてね、どうするの。せめて……勘【かん】とでも、言っておけばね、よかった……)
……一時間後。
ビユユユュュュゥゥウウゥゥー! ボオオオォォォン!
激しく降り続く雪……。
「うーん……落ち着いてくれないね」
「そうだね……。でもね、今のうちにね、休憩しておきなよ。できることなら、今日中にね、第一目標は、達成しておきたいからね」
「うん、そうだね(微笑)」
「ねぇ、レシィーナさん⁉ 極大魔法の使用をね、すごく喜んでいるでしょ?」
「うん……少しね」
「ふふっ」
「ああ、でもね、ホントにね、少しだけだよ(慌)。……。ご、ごめんね。すごく不謹慎【ふきんしん】だったよね」
「うふっ。謝ることなんてないでしょ。念願の攻撃魔法なんだから、喜ぶのはね、すごく自然の摂理【せつり】でしょ。したがって、素直にね、自信の感情にね、身を委【ゆだ】ねなよ」
「はああぁぁい♥」
(ふふっ。外見【がいけん】だけで、判断をしちゃいけないよね)
しばらく、サヴィリクとレシィーナ、交代制をとって、休養をすることに……。
6
二十五時……。
雪の降り方が、弱まり……。
「さあ、再始動だね」
「えへっ♥ アイ・アイ・サー!」
サヴィリクとレシィーナ、再始動……。
MP値の上昇の仕上げに入っていく……。
タッタッタッタッ……。
サヴィリク、対象のモンスターを、自ら、囮【おとり】となって、惹【ひ】きつける……。
「ゴクリッ(呑)」
レシィーナ、ある地点で、スタンバイ中……。
作戦開始前……。
「ええっ⁉ サヴィリクさん、本気【ほんき】なの⁉」
「あのね、俺はね、いつだって、本気【ほんき】だよ。そのようにね、言ったはずなんだけどね。忘れちゃった⁉」
「も、もちろん、覚えてるよ。でもね、いくらなんでも、モンスターを挑発するような行為はね、あまり感心しないなぁ……」
「どうやら、すごく語弊があるみたいだね」
「ええっ⁉」
「えっとね、これはね、挑発じゃなくて、誘導だよ」
「ゆ、誘導……。だ、だったら、すごくリスキーじゃない? 私たちの利点をね、活かさなきゃ!」
「心配しなくても、すごく利点はね、活かしてるよ。事実、すごく遅いしね」
「う、うーん……」
「どこか、心残りな顔をしているね。いいかい⁉ 攻撃アイテムにだって、すごく限りがあるの。それに、単独で倒していると、すごく浪費だって、しちゃうでしょ? まあ、すごく分かりやすく言うと、一発でね、仕留めたいんだよね」
「あっ⁉」
「ふふっ。ようやく、気がついたかい⁉」
「う、うん……遅ればせながら……ね(苦笑)」
「うん、申し訳なく、思わなくてもいいよ。すごく重要なのは、気がついたということだからね。気づけない人だってね、いるんだよ」
「あははぁ……私……すごく褒められてるんだよね」
「コラッ、コラッ、疑問に思わないの」
「うん、そうだね。でもね、改めてね、ありがとう」
「ふふっ。それはね、どういたしまして」
「ああ、それでも、無理だけはね、しないでね」
「ふふっ、了解。そこはね、すごく弁【わきま】えているよ」
タッタッタッタッ!
「ああ、来た⁉」
レシィーナ、手榴弾(攻撃アイテム)をスタンバイ!
……。
サヴィリク、右手を大きく上げて、グーサイン!
「うん、合図だね!」
レシィーナ、信管を抜く!
サヴィリク、レシィーナが信管を抜くタイミングで、スライディングをして、レシィーナの後ろへ……。
そして、
「そおおおぉぉぉれええぇぇっ!」
レシィーナ、モンスターの群れに向かって、手榴弾を投げる……。
ボッ……ボオオオオォォォォン……ドオオオオォォォォン!
すごく激しく、炎を伴って、大爆発……!
「はああぁ……はああぁ……はああぁ……」
すると、後ろから……。
パチパチパチパチ……。
「ああっ⁉ サヴィリクさん⁉」
「うん、レシィーナさん、すごくお見事だよ。作戦はね、大成功だよ」
と、サヴィリク、拍手をしながら、レシィーナの元に、歩み寄っていく……。
「もおおぉぉぉー……! サヴィリクさん、私だって、これくらいのことはね、できるよ。プンプン!」
「うん、そうだね。ごめんね。すごく小バカにしているように見えるよね」
「ええ、違うの⁉」
「うん、違うよ。基礎体力がないと、このような手法はね、取れないからね」
「ああっ⁉ そっち……ね!」
「うん、だから、小バカにしている訳じゃないから、それだけはね、誤解しないでね」
「うん……はぁい」
レシィーナ、手榴弾を使用して、複数体のモンスターを撃破!
「や、やった、やった! MPの基準をね、クリアしたよ‼」
「うん、おめでとう。プラン通り、すごく頑張ってくれたね」
「えへへ、ありがとう、サヴィリクさん♥」
「あのね、俺はね、サポートをしたにね、すぎないよ。これはね、君の努力の賜物【たまもの】なの。だから、自身のことをね、労【いた】わってあげな」
「サヴィリクさん……はぁい(笑)」
サヴィリクとレシィーナ、すごく和んだ様子で、達成を喜んでいた……。
7
……二十七時。
サヴィリクとレシィーナ、マップで街の位置を確認中……。
「えっとね、ディライスレート街道を西に進んでね、そこから、北に続く、ヴァイアロ新道があるのね」
「ふむふむ。ホントだ! すごく近くだね」
「うん、街の規模はね、アヴァロンに比べると、すごく小さな街だからね。ひとまず、そこをね、目指そうと思うのね」
「うん、私はね、異論ないよ。まあ、確率的にいっても、すごく良識のある人の比率が、すごく高いと思うので……」
「まあ、人口が多いほど、すごく可能性は高くなるよね」
「さあ、それじゃあ、早速……」
「いや、今日の活動はね、ここまでだよ」
「ええ、どうして、どうして⁉」
「どうしてって……夕食、食べなくてもいいの⁉」
「ああ、そっか! えへへ、すっかり、忘れてたよ♥」
「ふふっ。それに、今日はね、ここでね、休むことにするよ。睡眠はね、すごく基本中の基本だからね」
「うふふ、はああぁぁい♥」
サヴィリクとレシィーナ、少々、豪勢な夕食を嗜【たしな】む……。
お互い、本日の収穫と反省を、振り返りながら……。
……二十九時。
サヴィリクとレシィーナ、明日に備えて、早めに眠ることに……。
「ねぇ、レシィーナさん? まだ、起きてる?」
「うん……起きてるよ」
「眠る前に、明日のことについて、伝えておくね。ひとまず、回復魔法の修得と下位魔法の修得にね、努めて欲しいんだよね」
「ああっ⁉ そ、そうだよね? 下位魔法があれば、あれくらいのモンスター……すごく難【なん】なく、倒せたはずだもんね」
「うん、実践【じっせん】をするとね、すごく分かりやすかったでしょ?」
「えへへ、そうだね。《習うより慣れよ》ということだね」
(うーん……少し違うんだけどね。まあ、いっか!)
「それじゃあ、お休み」
「うん、お休みなさい」
(……そうだね。彼女のこと、伝えても、すごくいい頃合いだね)
すごく忙しくも、長い一日が、終わっていった……。
8
……十時(ナイトコールド傾向は継続中である)。
「ううぅぅんっ! よく、寝たああぁぁ……」
「ふふっ、レシィーナさん、おはよう」
「えへへ、はい! サヴィリクさん、おはようございます!」
「よく眠れた?」
「うん、もーう、ばっちりだよ!」
「ふふっ。だったら、すごく良かったよ」
グウウウゥゥゥ……。
「ねぇねぇ、早く、朝食にね、しようよ! 私ね、すごくお腹が空いてるの!」
「うん、そうだね。健康管理は、冒険者のすごく基本だからね」
「うん、お腹が空いたら戦【いくさ】はね、できないよ」
「うん、それも、すごく一理あるよね」
サヴィリクとレシィーナ、朝食を食べる……。
……十一時。
「さあ、それじゃあね、出発しよっか⁉」
「うん、そうだね。でもね、ちょっとだけ、待ってね」
「うんっ?」
レシィーナ、湖に向かって……。
『一晩、お世話になりました』
と、お辞儀をしながら……。
『あははぁ……すごく丁寧だね』
『うん、よしっ!』
「サヴィリクさん、お待たせ!」
「ふふっ。やっぱり、すごく大切な人柄だよね」
「うん、どうしたの⁉」
「うんうん、何でもないよ。それじゃあね、出発するよ」
「はあぁい……であります!」
9
サヴィリクとレシィーナ、ディライスレート街道に出て、西に、移動する……。
『ルゥルゥルゥルゥルウゥン!』
(ふふっ。レシィーナさん、すごくご機嫌だね)
すると、目の前から、二人組の冒険者の姿が……。
「あれっ⁉ サヴィリクさんじゃないの?」
「やあ、こんなところでね、会うとは、すごく奇遇だね」
「いやいや、実はね、依頼の途中でね、これから、モンスターの討伐にね、向かうところなの?」
「それはね、お疲れさまです」
「いやあぁ、それを言うなら、お疲れなのは、サヴィリクさんでしょ?」
「ええっ⁉」
「ようやく、出発できたんでしょ⁉ ホントにね、すごく同情するよ」
「えっと、それはね、どういう意味なのかな?」
「だって、お荷物のおかげで、すごく苦労を強【し】いられているそうじゃない?」
「うん、そうそう! パーティーというのはさ、背中を預けられる者じゃなきゃいけないのに、サヴィリクさんの場合、明らかにね、超足枷【あしかせ】でしょ⁉」
レシィーナ、少し顔を埋【うず】めく……。
「…………!」
サヴィリク、拳【こぶし】を握り、堪【た】える……!
『サヴィリクさん、いいの? ホントのことだから……』
「サヴィリクさん、あなたの場合、単独行動の方がね、いいんじゃないの?」
「うん、俺もさ、そう思う。任務がね、熟【こな】せないでしょ⁉」
「フフッ。それはね、すごく余計なお世話というものだよ」
「いやいや、サヴィリクさん、すごく勘違いをしてるよ。俺たちは、あなたのことをね、すごく心配しているんだよ」
「だから、それがね、すごくお節介とね、言っているの(睨)」
「サヴィリクさん、大丈夫⁉ まさか、蝕【むしば】まれちゃったんじゃないの⁉ ほら、早く、解散した方がいいよ」
「ご心配なく。僕はね、すごく正常なので……。あなた方こそ、すごく危険な存在だと思うよ」
「ダメだ! 話にね、ならないよ!」
「サヴィリクさん、俺たちがさ、解放をしてあげるから」
「ほほおぉう⁉ どのように、かなぁ?」
「ふふっ。そんなこと、聞くまでもないでしょ⁉ お荷物の始末だよ」
「うん、そうだね。超毒液を伴っているお荷物みたいだからね」
「…………(震)」
レシィーナ、サヴィリクに対して、すごく申し訳なさそうな顔をしている……。
「ねぇ、戯れ言はね、それくらいにしてもらえないかな?」
「「ええっ⁉」」
「あのね、僕のことをね、貶【けな】すのはね、構わないよ。でもね、彼女のことをね、悪くいうのはね、やめてくれないかな? 彼女だって、すごく不憫【ふびん】なんだよ。誰だって、あなた方とね、同じじゃないの?」
「サヴィリクさん……あなたにはね、すごく失望をしたよ! そんな大陸にとって、何の役にも立たない者をね、庇【かば】うなんて……」
「はっきり言わせてもらうとさ、お荷物以下の存在なんだよね」
『レシィーナさん……発動しな!』
『で、でも……』
『言ったよね⁉ 君のことをね、貶【けな】すような権利はね、誰にもないの? すごく明らかな、人権侵害だよ。そして、人権侵害をする者はね、悪魔そのものなの。大陸にとって、何ひとついいことなんてない! そう、彼らはね、人間じゃない! 人間の皮を被った悪魔だよ』
『ううぅぅ……(揺)』
(こんなのばかりだから、いつまで経っても、平和が訪れないんだよ! モンスターと違って、知性があるのに、こんなどうしようもない悪魔の集団ばかり……すごく辟易【へきえき】するよ!)
『いいかい⁉ 躊躇【ちゅうちょ】しているとね、殺されるよ。君はね、どうしたいの?』
『そ、そんなの、決まっているじゃない! 私はね、生きたい……生きたいよ(涙)』
『だったら、悪魔を駆除してやりな!』
レシィーナ、魔法を唱える……。
レシィーナを中心として、円形状に光を帯び始める……。
「「な、何⁉」」
「この世に生きる、全ての魔力の封印を解除せよ! 私はね、極大魔法を使用者なり! 大陸にとって、害悪でしかない、人道に反する者の存在……悪魔と化した異物を排除する者……それがね、この私の役目である! 今こそ、私に、全ての魔力をね、与【あた】えたまえ!」
「ふふっ、すごく美しい光景だね」
「な、何だよ、これ⁉」
「ねぇ、超やばくない⁉」
頭上に煌【きら】めく、すごく大きな黄金の球体……。
「浄化しなさい! ライトエフェクトダイエッジ!」
レシィーナ、魔法攻撃(ライトエフェクトダイエッジ)を発動!
光属性極大魔法!
黄金の球体が、超強力な重力を伴って、落下……。
「「アアアアアアァァァァァァー⁉」」
……そして。
ブウオオオオォォォォン……!
すごく激しく大地が揺れ、二人を吞み込んでいく……。
範囲内は、すごく眩【まぶ】しくて、見えない(それ以前に、目を開けてられない)
「こ、これがね、極大魔法……すごく僭越【せんえつ】だね(目を閉じている)」
「わ、私のことをね、庇【かば】ってくれた、サヴィリクさんのため、もう、迷わないよ!」
その後、数分間に渡って、極大魔法の攻撃は続いた……。
―そして。
「ねぇねぇ、サヴィリクさん⁉ 大丈夫なの⁉ すごく巨大なクレーターなんだけど……」
「まあ、心配いらないでしょ⁉ 極大魔法そのものはね、存在しているからね。幸い、ここはね、草原でしょ⁉ 住民にね、危害はないから、ひとまず、安心しなよ」
「もしかして、私の存在価値をね、教えるために……」
「まあ、数多くあるうちのひとつと、考えてくれてね、結構だよ」
「そ、そっか……うん、私ね、すごく役に立ったんだ……」
「二体の悪魔討伐、ご苦労さま」
⒑
「ええっと……サヴィリクさん、ごめんね。私ね、すごく疲れちゃった……」
レシィーナ、その場に座り込む……。
「しょうがないよ。あれほどの魔力をね、使用したんだから、身体に対しての負担はね、すごくあったはずだよ」
「そ、そうだよね……。基礎体力と、すごく反比例の関係だもんね。はあぁ……はあぁ……」
「ふふっ。それじゃあ、これからの方針についてね、発表をしておくよ。ひとまず、極大魔法はね、自己防衛のためだからね」
「うん……すごく大きな武器……だよね」
「闇雲な使用はね、控【ひか】えること」
「そ、そうだね。すごく負担が大きいもんね」
「無論、それもね、ひとつだけど、一番の理由はね。病【や】みつきになるおそれがね、あること。悪魔と化すひとつの原因なの。言うまでもなく、すごく敬遠されちゃうからね」
「それだけはね、絶対にヤダ!」
「まあ、君ならね、大丈夫だよ。すごく自分自身を、持っているからね。独裁者や支配者のような悪魔にはね、絶対にならないよ」
「うふふっ。サヴィリクさん……ありがとう」
レシィーナ、力尽きて、眠ってしまう……。
「おっと!」
サヴィリク、レシィーナを支える……。
「お休み。レシィーナさん……ゆっくり、休みなよ」
……そして。
サヴィリク、レシィーナを背負って、歩いて行く……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます