100%剣士と0%魔法使いの大陸放浪記

いってんnoアイ

第1話 わたし、正真正銘の魔法使いです

  STORY 1



 「あああああぁぁぁぁぁ―⁉ どうして、こうなったあああぁぁぁー⁉」

 「てへっ! 私たち、ロベリア大陸最強の火力魔力コンビだね。よろしくね!」

 「あははぁ……ある意味、そうだね。そう、事の発端は……」


 冒険者ギルド……。

「はあっ⁉ バランス50%……何ですか、それ⁉」

 「あははぁ……えっと、ですね……。どちらも、匹敵する方がいなくて、はあぁい……」

 「はい、じゃないですよ! これだと、俺がね、お荷物の面倒を見るということですか⁉」

 「ヤダな! サヴィリクさん……私ね、すごく強い魔法が使えるんだよ。最高のものを見せてあげるから、覚悟してよね。えへっ」

 「あのね、それはね、認めるよ。でもね、レシィーナさん……どこの世界にね、極大魔法のみの魔法使いがね、いるんだよ⁉」

 「どこって……ここにいるよ」

 「褒めてないよ! えっと、そうだ⁉ 単独行動はね、ダメなんですか⁉」

 「はい、原則、パーティーを組むのがね、活動条件ですので」

 「うっ⁉ すごくありえない……コンビになりそうだね(苦笑)」

 「うんうん、すごく楽しみだね」


 果たして……この先……どうなるのか……。



   1話(わたし、正真正銘の魔法使いです)



           1

 ロベリア大陸北東部……アヴァロンの街……。

 街を駆け足気味に移動中……。

 「ねぇねぇ、まだね、出発しないの?」

 「うんっ⁉ すごく唐突な物言いだね」

 「だって、他の冒険者の方々はね、旅立っちゃったよ」

 「うーん……そうだね。でもね、彼らは彼ら、俺たちは俺たち、だよ。同化する必要はね、ないでしょ」

 「ふふふっ。……そうだね」

『やっぱり、私たち、すごく似た者同士なんだね』

 「うん、何かね、言った⁉」

 「うんうん……。イエエェェイ! さあ、私たちのスタイルでね、いっくっううぅぅよ!」

 「やっぱり、すごく幸先がさ、不安だよ」


 道具屋(アイテム屋)。


 「はい、いらっしゃい!」

 「あのね、店主さん、早速でね、すごく悪いんだけど、ポーション(回復アイテム)一ダースね、構わないかな?」

 「ええっ⁉ 一ダース……うん、それはね、構わないけど……ちょ、ちょっと待っててくれよ!」

 店主、店の裏へ……。

 「…………(瞑想中)。一ダースでね、足りるかな?」

 「ねぇねぇ、サヴィリクさん⁉ そんなにね、必要ないでしょ⁉ 第一、ケール(この世界の通貨【お金】)だってね、すごく限りがあるんだよ」

 「大丈夫だよ。ケールなら、蓄【たくわ】えているから。レシィーナさんはね、ご自身の心配だけをしてな」

 「えへへ。サヴィリクさん、すごく優しいよね」

 「そ、そっか……(照)」

 「うん、私はね、魔法使いだよ。回復魔法だって、詠唱できるんだよ」

 「そうだろうね。でもね、攻撃と同じでね、極大魔法なんでしょ?」

 「あ、ああぁぁー……そういうことだったんだね。ご心配なく。回復魔法はね、サヴィリクさんがね、想像をしているような魔法だよ」

 「ええ、ホント⁉」

 「ふ、ふううぅぅん! どう、私のこと、すごく見直したでしょ⁉」

 「あははぁ……そうだね」

(どうして、すごく偉そうなの?)

「ううぅぅん……そうだね。だったら、一ダースもいらないかな?」

 「あっ⁉ でもね、回復魔法はね、二回だけなので、そのあたりはね、考慮していただけると、すごく嬉しいかなぁ……」

 「うん、MP値の問題でしょ。無論、計算にはね、すごく入ってるよ」

 「えへへ。え、えっとね、ポーションではなく、タウリンを買った方がね、いいかと……」

 「ええ、どうして⁉ どうして、このタイミングでね、タウリンなの⁉」

 「あのね、MP値の問題じゃなくて、私のHPからね、サヴィリクさんにね、使用するの」

 「は……はあぁ……」

 「あ、あれれ……わ、私、おかしなことをね、おっしゃっちゃったかな……?」

 「ごめんね。よく意味がね、分かんなかったの。もう一度ね、説明をしてもらえないかな?」

 「うん、その方が、すごくよさそうだね」


 レシィーナ、サヴィリクに、改めて、説明をする……。

 すると……。


「えっとね、特徴はね、分かったかな?」

 「ああ、すごくよく分かったよ。回復魔法じゃないということがね」

 「ええ、回復魔法じゃないの⁉」

 「あのね、自覚はね、なかったの。それはね、回復じゃなくて、排出でしょ⁉」

 「ええ、そうなの⁉ 私はね、すごく重宝する魔法かと……」

 「もちろん、ないよりはね、すごくマシでしょ? はああぁぁ……吸引されるモンスターの気持ちだよ。本来は、妨害魔法だからね」

 「でもね、回復することにはね、違いないでしょ?」

 「う、うぅん……そうだね。タウリンの意味がね、すごくよく理解できたよ。ひとまず、その魔法はね、原則一回のみの使用だよ」

 「ええ、使っていいの⁉」

 「ええ、ダメだと思ってたの?」

 「うん、サヴィリクさんの反応から、お察しするに、使用禁止かなぁと思ってね」

 「あのね、一度なら、大丈夫なんでしょ?」

 「うん、そうだね。活動はね、できると思うから、問題はないよね」

 「まあ、そういうことだよ。でもね、基本的な回復魔法はね、修得してもらうよ。俺だけじゃなく、君だって、すごく不便だろうからね」

 「そ、そうかな……」

 「自身にね、使えないんだから、すごく理不尽でしょ?」

 「まあ、そこはね、私も、否定できないよね」


 ……そして。

 「はい、お待たせ! ポーション一ダースだよ!」

 「うわぁ、改めて、見ると、すごく多いよね!」

 「まあ、一ダースだからね(苦笑)。あのね、店主さん、追加はね、構わないかな?」

 「ええっ⁉」

 「ぷうー(膨)」

 「ハイポーション一ダースをね、お願いします!」

 「う、うん、了解……すごく用意周到だね」

 「サヴィリクさん、私のこと、バカにしすぎでしょ⁉」

 「あのさ、これでも、足りないくらいだよ」

 「もおおぉぉぉー!」


 そして、ポーション一ダースに加えて、ハイポーション一ダースを購入!



           2

 サヴィリク、街を駆け足で移動中……。

 「さあ、さあ、次はね、武具屋だね」

 「ねぇ、サヴィリクさん⁉ もう少し、ゆっくり、歩いてよ」

 「ええ、まさか、スタミナ切れということはないよね?」

 「え、えへへ。そのまさか、なんだよね」

 「どうして、照れてるの⁉」

 「はあぁ……これはね、街を出発する前にね、基礎体力が必要かな?」

(うん、何だろう? この、すごく不思議な違和感……)

 『ねぇ……サヴィリクさん⁉』

 (……ダメだ……よく分からない……)

 「ねぇねぇ、サヴィリクさん⁉」

 「ええ、レシィーナさん、何⁉」

 「どうしたの? 先ほどから、何度もね、声を掛けてるのに、すごく無反応なんだもん」

 「ああ、ごめんね。少し、考えごとをね、していてね。えっと、俺にさ、何か、言いたいことがあったんだよね?」

 「う、うん……そうなの。あのね、私はね、魔法使いなので、すごくハードなトレーニングはね、勘弁してよね」

 「ああ、心配しなくても、大丈夫だよ。言ったでしょ? 基礎体力を身につけるだけだって、すごく軽い有酸素運動だよ。職種関係なく、スタミナ不足はね、すごく戦闘に影響するからね」

 「うん、やっぱり、サヴィリクさんは、すごく立派だね」

 「それはね、ありがとう。すごく嬉しいよ。でもね、俺だって、レシィーナさんのことをね、すごく褒めたいから、それ相応の戦闘能力はね、身につけてよ」

 「てへっ。アイ・アイ・サー!」

 「まあ、出発はね、ナイトコールドだと、思っているから、しばらく、時間はあるんだよね」

 ※ この世界の特徴について

   

   一年は、六八三日である。

   一日は、三十四時間である。

   

   また、この世界には、気候に大きな特徴がある。

   大きく分けて、3パターンに分類をされている。

  (スタンダード/デイホット/ナイトコールド)

  ⦅スタンダード・特徴として、期間中は、朝→昼→夜のサイクルで進み、気温は快適で過

   ごしやすい⦆

  ⦅デイホット・特徴として、期間中は昼であり、気温は高く暑い⦆

  ⦅ナイトコールド・特徴として、期間中は夜であり、気温は低く寒い⦆

   0時を境に、入れ替わる(継続する場合もある)

   ちなみ、事前にチェックをすることが、可能である。


 なお、本日は、スタンダードである……。



           3

 武具屋&鍛冶屋。

 「おおー、いらっしゃい! まさか、カップルで、パーティーを組んでいるとはなぁ。すごく息がぴったりだろ⁉」

 「カ、カップル……私たちが(照)」

 「どうして、顔をね、赤くしているのかな?」

 「えへっ。照れない、照れない……サヴィリクさん、すごく女性にね、ご縁がなかったんでしょ⁉ だから、念願がね、叶ったということで、すごく嬉しいんだよね」

 「ちょっと待ってよ! 俺たち、会ったばかりでしょ⁉ どうして、俺の生い立ちをさ、語れるんだよ⁉」

 「でもね、ご縁がなかったのはね、ホントのことでしょ⁉」

 「あのね、レシィーナさん、すごく鋭いね。どうして、盗賊や忍者にね、ならなかったの?おそらく、すごく向いてるとね、思うよ」

 「ええ、ホント⁉ 私ね、そんなこと言われたの、生まれて初めてだよ!」

 (一体全体、どのような生活をね、送って来たの)

 「アッハハハハハハァ!」

 「「うん……」」

 「いやあぁ、君たちね、すごく最高だよ。こんなに、笑ったのはさ、すごく久しぶりだよ。よーし、気に入った! 君たち一人ずつに、無ケールでね、錬金【れんきん】してやるよ」

 「ええ、ホント⁉ 店主さん、すごく商売上手だね」

 「い、いやぁ⁉ そ、そんなの、すごく悪いよ!」

 「な、なあに⁉ ケールなら、笑いでね、結構だよ」

 「えへへっ。そ、それじゃあ、お言葉に甘えて……」

 「すごく履き心地が良くて、すごく疲れにくいシューズをね、二足、お願いします(真顔)」

 「って、えええぇぇぇー⁉ ちょ、ちょっと、サヴィリクさん⁉ 正気なの⁉」

 「ああ、俺はね、すごく本気【ほんき】だよ。言ったよね? 基礎体力が、すごく大切だとね」

 「で、でもね、鍛冶屋だよ。ここはね、武器とか、防具でね、いかないと……」

 「無論、レシィーナさんのおっしゃる通りだね」

 「でしょ⁉ だったら……」

 「しかし、今の君はね、それ以前の問題だよ。考えてみなよ。街の中の移動だけで、すごく息が切れてたよね」

 「うぅっ⁉ そ、それは……」

 「どうやら、決まりみたいだね」

 「とほほ……。やっぱり、人間……楽をすることは、できないよね」

 「何だか、知らないけど、すごく色々、あるみたいだな」


 店主さん、二足のシューズを錬金中……。


 「ねぇねぇ、私ね、すごく運動音痴なんだけど……」

 「ああ、その様子だね」

 「したがって、今日のところは……」

 「ダメだよ。早速、今日からね、トレーニングだよ」

 「お、お手柔らかにね……」


 ―そして。

 「はい、お待たせ! 履いてみな!」

 サヴィリクとレシィーナ、シューズを履く!

 「うわぁ⁉ ホントだ! すごく軽い……いやぁあほほほおぉー……」

 「コラ、コラ、コラ⁉ どこに、行くの⁉」

 と、サヴィリク、どさくさに紛れて、逃げ出そうとするレシィーナの首元を掴む……。

 「はああぁぁい、もう、逃げません」

 (現状はね、俺がね、しっかりしなきゃ)



           4

 街の北街区にある、訓練場……。

「よーし! 屋内だから、目一杯、トレーニングができるね」

 「あ、あの……私、ダンベルなんて、持てないよ」

 「だから、何度もね、言ってるでしょ⁉ 基礎体力の向上だって……」

 「あ、そうだったよね(苦笑)」

 「うーん……そうだね。ひとまず、ウォーキングから、スタートだよ」

 「ねぇねぇ、サヴィリクさん……いくら、私でも、歩くくらい、できるよ」

 「歩くだけじゃないの。腕と膝を大きく振ってね、歩くんだよ」

 「ええ、何、それ⁉」

 「まあ、実践してみよう」


 サヴィリクとレシィーナ、ウォーキング開始……。

 「はぁぁ……はぁぁ……サヴィリクさん、少しね、休憩しようよ」

 「ええ、まだね、始めたばかりだよ。ねぇ、先ほど、話したこと覚えてる?」

 「ええ、何⁉」

 「俺にも、君のことをね、褒めさせて欲しいとね」

 「うっ⁉ ピカアアーン(輝)」

 「うんっ⁉ 何、今の目⁉」


 サヴィリク、思わず、足を止める……。


 「ねぇねぇ、サヴィリクさん⁉ どうして、休んでるの⁉ すごくファイトだよ!」

 「え、えっと……褒めると伸びるタイプ……いやぁ、少し違うね。まあ、今はね、トレーニングにね、集中だよ」

(うーん……ホントはね、レシィーナさんのいいところあるんだけどね。すごく分析力の高いところ……所謂、人のことを、すごくよく見てるよね。まあ、今はね、その時じゃない。少なくとも、人並みの体力が身についてからだね)


 しばらく、ウォーキングをつづけ……。

 「はあぁー……はあぁー……すごく疲れたああぁぁ……」

 レシィーナ、大の字になって、仰向けになる……。

 「お疲れさま。初日にしてはね、すごく頑張ったよ。そうだ⁉ はい、これ⁉」

 「うん、何、これ⁉」

 「マッサージ店のチケットだよ。おそらく、すごく筋肉痛になると思うから、解散後、行ってきなよ」

 「ええ、ホント、いいの⁉」

 「うん、構わないよ。頑張ってくれたご褒美だよ」

 「わああぁぁー……ありがとう。サヴィリクさん、大好き!」


 そして、本日は、解散……。


 「うーん……そうだね。彼女はね、環境によって、すごく苦労を強いられていた、可能性が、すごく高そうだね。所謂、ムチとムチのような……ね。…………(目を閉じる)。うーん……ナイトコールドまで、十一日、彼女にはね、すごく申し訳ないけど、アメとムチでね、コントロールさせてもらうよ」



           5

 宿屋。

 各々のお部屋……。

 サヴィリク……。

 サヴィリク、あるものと睨めっこ中……。

「うーん……シミュレーションなんて、結局のところ、シミュレーションでしかないからね。状況はね、刻一刻と、変化をするからね。…………(目を閉じる)。……それにしても、まさか、俺がね、誰かのためにね、すごく奔走【ほんそう】をするとはね。あの時、すごく懲【こ】りたというか、すごく現実を見せられたはずなんだけどね。うーん……俺も、すごく物好きだよね。将又【はたまた】、彼女の人柄がね、俺を、そのようにさせているのか……誰かに頼られたい……誰かの力になりたい……まあ、俺の目の黒いうちにね、人並みにはね、持っていきたいよね。少なくとも、彼女の場合、俺のような事態にはね、ならないだろうから」


 レシィーナ……。

 お部屋に入室するなり、ベッドに飛び込む……。

 「うぐうぅー……身体中がね、すごく痛い……。これって、所謂、筋肉痛だよね。我【われ】ながら、私ってね、どれだけ、体力がね、なかったの。でもね、今まで、私がね、出会って来た人とはね、明らかに違う……確かに、筋肉痛みたいな経験はね、生まれて初めてかもしれない……。…………。……うーん……それにしても……基礎体力……七十三……私ってね、どれだけ、運動不足だったの。いや、運動不足というレベルじゃないよね(苦笑)。運動音痴というのはね、私の甘えだよ。うん、きっと、そうだよ! そうに、違いない! そうであって欲しい! でもね、やっぱり、すごく痛あああぁぁぁいぃ!」

 レシィーナ、すごく悲痛な叫びをあげる……⁉


 サヴィリク……。

 「やっぱり、マッサージをしても、ダメだったね。すごく痛そうだね」

 サヴィリク、レシィーナとお隣のお部屋だったため、叫んでいる声が聞こえて来た模様……。

「うーん……この様子だと、明日はね、オフかなぁ……。まあ、すごく軽く歩くくらいなら、できるでしょ。特に、夕方以降にね」


 レシィーナ……。

 「ううぅぅー……一日って、こんなに長かったっけ⁉ ホントにね、三十四時間なの。六十八時間くらいのね、感覚だったんだけど……」


 こうして、[長い一日?]が、終わっていく……。


 そして、翌朝……。



           6

 冒険者ギルド。

 「あれれ……サヴィリクさん、今日はね、お一人なんですか?」

 「うん、少なくとも、午前中……いや、日中はね、休養にね、務めてもらう」

 「確かに、そうですね。彼女にとって、すごくハードな訓練だったでしょうしね」

 「あのね、すごく軽い有酸素運動だよ。まあ、レシィーナさんにとってはね、筋トレレベルかもしれないんだけどね。少なくとも、育った環境が悪かったせいでね」

 「へえぇー……そういうものなんですか?」

 「うん、そうだね。昨日一日だけだから、参考そのものはね、すごく微少【びしょう】だけど、この際だから、俺自身が、すごく感じたことをね、伝えておくよ」

 「は、はい……」

 「あのね、おそらく、彼女……根はね、すごく真面目なんだよ。もしかしたら、境遇というものをね、知らなかっただけかもしれない……無論、これはね、俺の持論なんだけどね。したがって、聞き流してくれてもね、構わないよ」

 「うふふっ」

 「な、何ですか⁉」

 「いえ、これはね、失敬! なんだかんだ言いつつ、彼女のこと、すごく心配なさっているんだなぁと、思いましてね。うん、どうやら、私の目にね、狂いはなかったみたいですね」

 「そんなさ、いいものじゃないよ」

 「えっ⁉」

 「ごほんっ! いやぁ、今のはね、忘れてくれない?」

 「は、はぁい……」

 「うん、すごくシンプルにね、言わせてもらうと、彼女がね、すごく一生懸命だからね。俺のこと、すごく頼【たよ】りにしてくれている……ホントの意味でね」

 「うーん……すごく強調なさいますね」

 「うん、すごく重要なことだからね。すごく頼【たよ】ってくれる者には、俺はね、出し惜しみすることなく、すごく全力でね、サポートをやらせてもらうよ。加えて、彼女の笑顔はね、すごくチャームポイントだ。したがって、笑顔だけはね、守ってあげたいと思っている……彼女自身の最後の砦だからね」

 「なるほど……確かに、すごく大切ですよね。しかし、最後の砦とはね、すごく大げさではないですか⁉」

 「ふふっ! そうかもしれないね。でもね、彼女にはね、俺のようには、ならないで欲しいとね、思っている……うん、人並みでね、いいの」

 「うん、サヴィリクさん、独自の方針がね、あるみたいですね。はい、私はね、すごく結構なことだとね、思いますよ。やっぱり、私の目には、狂いはね、なかったみたいですね」

 「えっとね、俺のこと、過大評価しないでよ。そんなに、いいものじゃないって、言ったはずだよ」

 「うふふっ。バランス50%というのもね、すごく事実だったんですけど、数多くある、ひとつにね、過ぎませんよ」

 「ええ、そうなの⁉」

 「うん、バランス50%というのはね、あくまで、戦闘中の話ですから。プライベートにはね、すごく無関係でしょう」

 「確かに、言われてみれば、お荷物になるというのも、戦闘中限定の話といえば、強【あなが】ち、間違いじゃないしね。プライベート……特に、街の中ではね、あまり、関係ないからね」

 「サヴィリクさん、改めて、よろしくお願いしますね」

 「ふふっ……そうだね。これもね、何かのご縁でしょう。乗り掛かった船だし、実践を果たしてね、すごく後悔をさせてもらうことにするよ」


 ―そして。



           7

 「うわああぁぁー……⁉」

 レシィーナ、すごく目を輝かせる……!

 「うぅっ⁉ すごく眩【まぶ】しい……!」

 「ねぇねぇ、サヴィリクさん⁉ こんなにね、食べてもいいの⁉」

 「ああ、食事もね、すごく立派な健康管理だよ。運動・食事・睡眠、以上の三点はね、すごく必要な最低事項だよ」

 「いっただっきまああぁぁすー!」

 レシィーナ、ものすごい勢いで、食べ始める……!

 「うっ⁉ 全く聞いてない……。まあ、しょうがないかぁー……。ほら、気が済むまで、食べな!」


 バクバク……バグバグ……ゴクゴク……ゴクゴク……。


「……そうだね。すごく精が出る、光景というものだ。無論、この食欲はね、運動あってのものだけどね。それだけ、カロリーを消費しているからね」


 その後、夕方……。



           8

 「ええ、今日はね、訓練場じゃないの⁉」

 「うん、今夜はね、軽く身体をほぐすためにね、歩くだけだからね。したがって、普段の歩き方でね、構わないよ」

 「ふむふむ。なるほど……トレーニングも、すごく奥が深いんだね」

 「あははぁ……そうだね」

(ホントに、すごく劣悪な環境だったのかもしれないね)

 「うん、筋肉痛もね、すごく楽になって来たから、それほど、負担じゃないよ」

 「ふふっ。それはね、すごく良かったよ」

(ひとまず、ここまでは、すごく順調だね。うん、時間が許す限り、やれることから、やっていくしかないよね)

 「ねぇねぇ、サヴィリクさん⁉ でもね、少し冷えてきたよ」

 「うん、確かに、少し肌寒いよね。でもね、身体を動かすにはね、これくらいの肌寒さがね、すごくベストなんだよ」

 「もしかして、動いてるうちに、身体がね、温まってくるからかな?」

 「うん、その通りだよ」

 「えへへ。私も、すごく成長をしているよね」

 「うん、そうだね」

(ホントに、すごく大切にね、プランを立てないと)

 サヴィリクとレシィーナ、街の中を、軽く歩く……。

 ……そして。

 「ふうぅー、ホントだ。すごく快適だね」

 「ふふっ、でしょ? 聞くより、実践だよ」

 「確かに、そうだね。私自身でね、すごく実感できるから、すごく説得力があるよね。はーい、それでは、今日も一日、お疲れさまでしたああぁぁ!」

 「ふふっ、こちらこそ。就寝前のストレッチはね、忘れちゃダメだよ」

 「アイ・アイ・サー!」



           9

 そして、ナイトコールドまでのトレーニングを続けていく……。

 ウォーキングを訓練場で……。

 (うん、すごく見違えたよね。近々、ランニングに移行だね)


 運動後のマッサージ……充分な睡眠……身体をほぐすための軽い運動とストレッチ……栄養補給のための飲食……こうして、四日間が過ぎていった……。


 ―そして。

 トレーニングを開始してから、五日目……。

 ピカアアァァン!

 「うぅっ⁉ す、すごく暑い……」

 「そうだね。どうやら、これから、三日間はね、デイホットみたいだね」

 「ええ、ウソでしょ⁉ ダメだよ、日射病にね、なっちゃうよ!」

 「あのね、ここはね、訓練場だから、暑さはね、関係ないでしょ⁉」

 「えへへ。サヴィリクさんは、ごまかせないよね」

 「ふふっ。…………(目を閉じる)。さあ、今日からはね、ランニングだよ」

 「うーん……歩くのと違って、走るのはね……私、あまり、自身ないな……」

 「大丈夫だよ。ウォーキングの延長線だからね。君の基礎体力はね、確実に人並みにね、近づいているよ」

 「ええ、ホント⁉ そ、それじゃあ、頑張らなきゃいけないよね」

 レシィーナ、軽く走り始める……。

 (うーん……やっぱり、褒めて伸びるタイプなのかなぁ……。うーん……ダメだね。相変わらず、掴【つか】みどころがね、全く分からないね)

 「ねぇ、サヴィリクさん⁉ 早く、早く⁉」

 「ああ、そうだね。ペース配分はね、怠【おこた】っちゃいけないよ」

 「はい、はぁい! それはね、すごく分かってるよ!」

 サヴィリク、レシィーナに遅れて、ランニングを開始する……。

 「ねぇねぇ、レシィーナさん⁉ もう少しね、スローダウンをして……」

 「ええ、ランニングじゃないの⁉」

 「あのね、すごく口を酸っぱくしていっているけど、基礎体力の向上がね、今回の目的だからね。中距離を走るような感じでね、行【おこな】ってもらわなきゃ達成できなくなっちゃうの」

 「え、えっと……それって、ダンベルと同じ感覚なのかなぁ?」

 「……そうだね。やっている内容はね、すごく別物だけど、筋トレに、すごく近いよね。実際ね、すごく疲れるでしょ?」

 「う、うーん……そうだね。確かに、すごく脹脛【ふくらはぎ】がね、張っているかも……」

 「身体はね、すごく正直なんだよ。したがって、ペースダウンをするよ」

 「うん、了解……だよ」

 (これはね、すごくまずいよね。彼女……知らないことがね、多すぎる[焦])


 軽くランニングを行【おこな】うスタイルに変更……。


 ―そして。

 「お、お疲れさまでしたああぁぁー!」

 「うん、どうやら、すごくスタミナも、ついてきているみたいだね。あまり、息も上がってないみたいだしね」

 「えへへ。これもね、サヴィリクさんのおかげだよ。すごく献身的【けんしんてき】にね、私のことを支えてくれているしね」

 「ふふっ、ありがとう」

(うん、すごく普通のことなんだけどね。もちろん、すごく十人十色ではあるんだけど、見たところ、彼女にとってはね、すごく特別みたいだね)

 と、サヴィリク、少し困惑をした表情を浮かべていた……。

「さあ、今夜もね、マッサージにね、行って来なよ」

 「うん、すごくトレーニングを行【おこな】う上で、すごく基本的なことなんだよね」

 「うん、そうだね」


 ……解散。



           ⒑

 宿屋(お部屋)。

 レシィーナ……。

 「うん、これで、いいんだよね。私らしく、できてるよね。…………」

 [意外な一面?]、レシィーナ、すごく静かである……。


 ―そして。

 五日間に渡って、継続的なトレーニングを決行……。

 レシィーナの体力は、日に日に、向上している様子が、サヴィリクの目からも、はっきりと、見て取ることができた……。


 トレーニングを開始してから、十日後……。

 気候は、スタンダードである……。



           ⒒

 冒険者ギルド/検査室

「ドキッドキッドキッ……」

 「うん、レシィーナさん、そんなにね、身構えないで」

 「う、うん……そうなんだけどね。やっぱり、すごく不安が拭【ぬぐ】えなくて……」

 「当然だよね。でもね、それだけ、訓練にね、打ち込んでいた証拠だよ。心情の変化はね、すごく正直なんだよ。身体と同じでね」

 「努力の賜物【たまもの】と解釈して、いいんだよね?」

 「うん、結構だよ。それに、ひとつだけね、忠告をしておくよ。少なくとも、低下してることはね、すごくありないから、自信をもってね、臨【のぞ】みなよ」

 「うん、分かった……」

 「ひとまず、深呼吸をしてね……それから、だね」

 「うん、了解……。すううぅぅー……はああぁぁー……。よーし、いくよ!」

 「ふふっ(微笑)」


 レシィーナ、基礎体力のチェックをする装置に、手を伸ばす……。


 ⦅それでは、測定を開始します。しばらく、動かないでください⦆


 プルルルルルウウゥゥー……!

 測定中……。


 「じいいぃぃー……」

 レシィーナ、計測中の装置に釘付け……。


 (レシィーナさん……すごく真剣だね)


 プルルルルルウウゥゥー……ぴぃかあああぁぁぁん!


 ⦅お待たせいたしました。測定が完了いたしましたので、ご報告いたします⦆


 「「うんっ⁉」」

 サヴィリクとレシィーナ、数値を凝視する……。


 「や、やった! すごく数値がね、上昇してる!」

 「うん、ホントだね。正直ね、十日足らずでね、ここまで、向上するとはね、すごく驚きだよ」

 「ああー……でもね、少し平均値に足りないよね」

 「まあ、足りないといっても、日常生活でね、充分カバーができる範囲だよ」

 「そ、そうなの……」

 「うん、ひとまず、おめでとう」

 「えへへ、サヴィリクさん、ありがとう」

 「ふふっ。頑張ったのはね、君なんだから、自分自身をね、褒めてあげな。努力はね、ウソをつかないからね」

 「うん、ホントに、ありがとね」

 (でもね、すごく課題も、鮮明になったよね。すごく普通のことを、すごく特別と思う感覚……所謂、すごく異常事態だね)


 基礎体力の測定チェックが終了……。

 レシィーナの基礎体力は、73から96に上昇をした……。

 なお、基礎体力の平均値は、100である。



           ⒓

 街の外……(街道から、少し外れた草原……)。

 「えっ⁉ 最終チェック……」

 「うん、明日、街を発【た】つからね。ひとまず、君の極大魔法の魔力をね、お手並み拝見させてもらうよ」

 「え、えっとね、サヴィリクさん、実はね……」

 「ほらっ、敵からね、目を逸【そ】らさないの⁉」

 「えっ⁉ ああっ⁉」

 モンスター四体が、現れる……。

「ねぇ、サヴィリクさん⁉ あのね、私ね……」

 「心配いらないよ。人気【ひとけ】のない、すごく安全な場所を選んでいるからね。さあ、思う存分、暴れてくれてね、構わないよ」

 「だ、だから、私の話をね、聞いてよ‼」

 「ええっ⁉ レシィーナさん、どうしたの⁉ まさか、モンスターとね、戦った経験がね、ないとか……」

 「MPがね、足りないの‼」

 「うん、なるほど……って、ええ⁉ えっと、それはね、つまり……」

 「うん、そうなの! すごく残念なお飾りなの‼」

 「開き直ってる場合じゃないでしょ⁉」


 モンスター達、飛び掛かる……。

 「ひゃあああぁぁぁー……⁉」

 「ああ、しょうがないなぁ……。君はね、後ろにね、下がってな!」


 サヴィリク、剣(大剣)を取り出し、攻撃を仕掛ける……。

 結局、モンスター達は、俺が、退治することになった……。


 ……そして。

「うーん……(目を閉じている)」

 「あ、あの……サヴィリクさん、ごめんなさい」

 「いやあ、レシィーナさんはね、悪くないよ。聞かなかった、俺のミスだよ」

 「で、でも……」

 「気負わないで! 君のいいところはね、笑顔なんだから」

 「ええ、何⁉」

 「いやぁ、何でもない! ひとまず、段階的にね、取り組んでいくよ」

 「う、うん……そうだね」

 「それじゃあ、明日の朝、街を発【た】つからね。今日はね、これで、解散だよ」

 「う、うん……了解。お疲れさま……でした」

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