第5話 (深淵ダンジョンは、真の冒険者を待っている)
5話(深淵ダンジョンは、真の冒険者を待っている)
1
……二十四時。
サヴィリク達を乗せた馬車、大陸北西部にある街、ナイバースを目指して移動中……。
「へえぇー……そうなんだ⁉ ローラさんって、ナイバースのご出身なんだね」
「はあぁい……ご存じのように、すごく遠征をしてしまったのはね、事実なの」
「ふふふっ、すごくお転婆【てんば】さんなんだね」
「ふふっ……そうだね」
『レシィーナさん……君がね、言うの。でも、相変わらず、すごく社交的だよね』
ぐううぅぅ……。
「ああっ⁉ ヤダ……すごく恥ずかしい……(照)」
「あら、お二方は、夕食をね、済ませていないの?」
「えへへ。うん、実はね、まだ……なんだ」
「だったら、すごく丁度【ちょうど】いいよね? 私がね、すごくオススメなお店をね、紹介するよ」
「ええ、ローラさん⁉ それはね、すごく悪いよ!」
「えへへ♥ いぃただきまああぁぁす(涎【よだれ】)」
「コラッ、コラッ! レシィーナさん……少しはね、遠慮というものをね、身につけなさい!」
「ぷううぅぅ……(膨)」
「なあに、その顔は……」
「いいえ、サヴィリクさん……すごく堅物【かたぶつ】だなぁと思ってね。これだから、モテないんだよ」
「はっ⁉ 今、それとこれはね、別問題でしょ⁉」
「もおおぉぉ……すごくムキになっている時点でね、図星でしょ⁉」
「むむむぅ……はああぁぁ……すごく調子が狂うぅ……」
「えへへ、それはね、どうも♥」
「褒めてないよ!」
『クスクス……』
「「ええ……」」
「ヤ、ヤダ! ご、ごめんね。サヴィリクさんとレシィーナさん、すごく息がぴったりで、すごく羨【うらや】ましいなぁと思ってね」
「うん、うん……そうでしょう、そうでしょう」
と、自信ありげな表情をしている、レシィーナ……。
「どうして、レシィーナさんがね、威張【いば】るのかなぁ……」
「うふふっ。でも、すごく危ないところをね、助けてくれたのはね、すごく事実だし、私がね、今夜はね、奢【おご】るよ」
「いやぁ、そこまで、しなくても……」
「やっほおおぉぉうぅ、ご馳走【ちそう】にね、なりまああぁぁす!」
「だから、少しはね、自重をしなよ……って、まあ、今夜くらい、いいっかぁ! レシィーナさん、すごく頑張っていたしね」
「えへへ、ありがとう、サヴィリクさん♥」
(やっぱり、すごく羨【うらや】ましいなぁ……。うふふっ、すごく模範【もはん】にしないとね)
2
ロベリア大陸北西部に位置する街、ナイバースに到着……。
そして、時間は、二十五時と、夕食時である……。
「ひゃああぁほおおぉぉうぅ……着いた、着いた!」
と、レシィーナ、ジャンプをしながら、馬車から、降りる!
「はああぁぁ……すごく疲れた……」
(あははぁ、すごく好対照な二人だね……)
「うううぅぅぅん……夜から、すごく賑【にぎ】わっているね」
「まあ、今はね、ナイトコールド傾向だからね。心のどこかで、楽しめる時に楽しんでおかなきゃいけないというのがね、あるのかもしれないね」
「うん、そうだね。でもね、さすがはね、大陸北西部を代表する都市だよね」
「まあ、移民者も、すごく受け入れているからね」
「なるほど……すごく活気に満ちていて、悪くないと思うよ」
「まあ、その分、検問はね、すごく厳しいんだけどね。無法者を取り締まらなきゃいけないので……」
「ああぁぁ……それ相応の問題が、噴出してくるよね」
「ねぇねぇ、そんなことより、早くね、食事にしようよ! 私ね、すごくお腹が空いているの!」
「ああ、それもそうだね。うん、案内するよ」
「はああぁぁいぃ!」
「うん、うん……今夜はね、無礼講【ぶれいこう】!」
と、サヴィリク、自身に言い聞かせる……。
―(ウイーン)[扉の開く音]。
「はい、いらっしゃいませ……って、何だ……ローラちゃんかい⁉」
「えへへ、ブレートさん⁉ こんばんは」
「どうしたの⁉ 確か、魔物使いの訓練にね、行ってたんじゃなかったの⁉」
「うん、そうだったんだけどね。すごくトラブルだらけでね……引き返して来たの……」
「まあ、理由はね、聞かないでおくよ」
「うん、ありがとう。すごく助かるよ」
「あれっ⁉ こちらのお二方は……」
「ああっ、そうだ……ねぇねぇ、紹介をするね。こちらのお二人はね、私の命の恩人なの」
「うん、恩人……どういうことなの⁉」
『ねぇねぇ、サヴィリクさん⁉ どうして、黙っているの⁉ すごく失礼じゃない⁉』
『いやぁいやぁ、レシィーナさん……その反対だよ。ご紹介されるまで、黙っているのがね、すごく礼儀というものだよ』
『ええ、そういうものなの⁉』
『まあ、俺の持論だけどね』
『あははぁ、根拠はないんだね』
ローラ、店主のブレートに、サヴィリクとレシィーナを紹介する……。
「ああ、そうだったのかい⁉ いやあぁ、ローラちゃんの危ないところをね、助けてもらってね、ホントに、ありがとね」
「いえいえ、とんでもございません。冒険者としての責務ですので、あまり、お気になさらずに」
「はああぁぁいぃ。すごくボーナスはね、求めていないですよ」
「コラッ⁉ 君はね、どこまで、楽天家なの⁉」
「はぁはぁはぁはぁ……すごくおもしろいお嬢さんだね。うん、すごく気に入ったよ! 今夜はね、無料サービスだよ。鱈腹【たらふく】ね、食べてくれな!」
「はあぁい! ありがとうございます! いただきます!」
『ローラさん……ごめんね』
『いえ、そんなことないよ。それより、私はね、すごく感謝しているの』
『ええ、どうして⁉』
『うふっ。奢【おご】る必要がね、なくなったので……』
『あ、ああぁぁ……』
『ねっ、レシィーナさんにね、すごく感謝をしなきゃいけないでしょ?』
『うん、すごく逆転の発想だね。すごくクレイジーだけど……』
『うふっ、そうだね』
……そして。
サヴィリク達、お席に、ご案内をされて……。
「さあ、さあ、何をね、ご注文しようかな?」
「まあ、束の間の休息だね。ああ、ローラさんもね、ご注文しなよ」
「えっ、私も……」
「うん、ここはね、食べなきゃ、すごくもったいないよ」
「ああぁぁ……うぅん、それもそうだね。それじゃあ、お言葉にね、甘えて……」
この後、サヴィリク達は、当店、ご自慢の料理を堪能した……。
サヴィリクは、お酒を嗜【たしな】み、日頃の疲れがあったのか……すごく派手に酔い潰れた……。
なお、レシィーナとローラは……。
「ヒック(酔)。俺のお酒がさ、呑めないっていうの……(酔)」
「うわあぁ……サヴィリクさん、すごくグロッキーだね」
「まあ、まあ……おそらく、すごく疲れていたのでしょ⁉ ここはね、しばらく、夢心地にね、してあげようよ」
「うん、確かに、私のためにね、すごくプランを立ててくれていたからね」
「うーん……でもね、ホントに、レシィーナさんってね、すごく苦労していたの。私には、とてもそのようにはね、見えなかったんだけど……」
「うん、こんなこと、初対面の人にね、申し上げるのは、すごく気が引けるんだけど、ローラさんはね、現在の私しか見ていないでしょ⁉ すごく恥ずかしい話……基礎体力がね、80以下だったの」
「ええ、そうなの⁉」
「うん、最近になって、ようやく、人並みにね、到達したの」
「ねぇ、最近ということはね、そんなに、昔じゃないよね?」
「うん、十日くらい……だね」
「……⁉ へえぇ……ホントにね、すごく最近じゃない⁉ すごく頑張ったんだね」
「うん、そうだね。我ながら、すごく驚いているよ。でもね、サヴィリクさんのサポートなしではね、おそらく、不可能だったと思うのね」
「うーん……そうなんだ……。ねぇねぇ、ここだけの話、サヴィリクさんってね、すごく苦労をしてるよね?」
「ええ、ローラさん、すごい! どうして、分かっちゃうの⁉」
「まあ、何となく……だよ。冒険者って、それ相応の任務をね、熟【こな】したとしても、すごく報われないことがね、多いでしょ?」
「うん、それについては、私もね、否定しないよ」
「……そっか……」
「ねぇ、ローラさん⁉ 魔物使いだって、すごくリスキーな職業だと、私はね、思うよ」
「あら、どうして?」
「だって、魔物を手懐【てなず】けるのがね、第一前提でしょ? うん、すごく凶暴なモンスターだって、いるよね? 魔法使いはね、基本、後衛からの攻撃だから、私に言わせると、とてもすごいと思うの」
「あああぁぁぁ……(パクパク)」
「うん、ローラさん……どうしたの⁉」
「う、うん……ホント、私のこと、すごく観察してくれていると思ってね。うん、すごく嬉しかったの」
「ええ、パートナーはね、褒めてくれないの?」
「うん、すごく愚痴【ぐち】ばかりだよ。一言目には、すごく基本がなっていないとか……すごく怯【ひる】みやすいとか……。うん、私だってね、すごく頑張っているんだよ!」
タッタッタッ……(ゆっくり、歩み寄る足音……)。
⦅それはね、肝心な時にね、すごく無頓着【むとんちゃく】だからでしょ⁉⦆
「あっ⁉」
「うううぅぅぅ……(睨)」
「せ、先輩⁉ ヤ、ヤダな……どうしたんですか⁉ た、確か、今日はね、非番ですよね?」
「うん、非番だったよ。でもね、勝手にね、パートナーが、街道にね、行くものだから、緊急出動になってしまってね……」
「せ、先輩……そんなにね、おっかない顔をね、しないでくださいよ。私はね、先輩の足枷【あしかせ】にね、なりたくないから……その一心でね……」
「それで、窮地【きゅうち】になっていたら、元も子もないんだけどね」
「あははぁ……そ、それはね、すごく結果論ですよ(汗)。心意気【こころいき】はね、評価をしてくださいよ(汗)」
「うん、すごく勉強熱心なのはね、評価をしているよ。でもね、報告くらいはね、してくれないかな? すごく台無しになっちゃうんだよね」
「ああぁぁ……でもね、許してくれないですよね?」
「あのね……俺だって、鬼じゃないよ。君の事情くらい、聞いてから、検討をするよ」
「ええ、でもね、前回はね、ダメだって……」
「それはね、君の要望がね、すごく無謀【むぼう】だからでしょ⁉ 取り違えないの!」
「ひいぃ⁉」
「それじゃあ、ひとまず、ギルドにね、報告にいくよ」
「ええ、どうして、私もなんですか⁉」
「緊急クエストがね、出ていたからだよ!」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、先輩……すごく痛いですって!」
「なあに……モンスターの攻撃にね、比べると、すごくカワイイものでしょ⁉」
「す、すごく比較対象がね、おかしいですよ!」
「四の五の言わずにね、行くよ!」
「だから、すごく痛いですって!」
ローラの先輩、ローラの首元から、すごく強引に引っ張っていく……。
「おおっと! これはね、お嬢さん、相棒の危ないところをね、助けていただいて、ホント、ありがとう。近いうち、改めて、お礼をさせてもらうよ」
「は、はぁい……お気遣いね、ありがとうございます」
「痛たたたたたぁ……⁉」
―(ウイーン)[扉の開く音→扉の閉じる音]。
「あっ、あああぁぁぁ……ものすごい迫力だったね」
3
―そして。
レシィーナ、酔い潰れたサヴィリクを、おんぶして……宿屋に、向かう……。
「ねぇ、サヴィリクさん⁉ しっかり、してよ!」
「はああぁぁん! 俺はね、すごく正常だよ(酔)」
「すごく正常な人はね、そのような、発言はね、しないでしょ!」
「アアアァァァ……ヴィグッ!」
「サヴィリクさん……ホント、すごく酒癖が悪いよね。次回から、すごく自重させなきゃ」
宿屋に向かっていった……。
4
―そして、翌朝。
ナイトコールド傾向から、スタンダード状態に……。
―(ウイーン)[窓の開く音]。
「うううぅぅぅん……すごく久しぶりの朝日だね。はああぁぁ……すごく久しぶりの料理……そして、すごく久しぶりのベッド。うん、すごく体調も、ばっちりだね」
と、その時!
トン、トン、トン!
⦅オーイ、レシィーナ、起きているか⁉⦆
『ああっ、サヴィリクさんだ!』
「うん、今ね、起きたところだよ」
⦅そっか⁉ 昨日はさ、運んでくれて、ありがとね⦆
(ふふっ。サヴィリクさんったら、すごくカワイイところがあるじゃない)
……そして。
身支度【みじたく】を済ませて、宿屋の一階に……。
「はあぁ……昨日はね、呑んだ、呑んだ……」
「えへへ♥ ホント、すごく呑んでいたよね。でもね、酔いはね、冷めたの?」
「ああ、俺はね、冷めるのはね、すごく早いんだよ」
「ああ、だから、あれだけ、呑んでいたんだね」
「まあ、そういうことだよ。あの時間はね、すごくフリーだったしね。休める時にね、休んでおかないと」
「だからといって、呑みすぎは、すごくお身体にね、障【さわ】るので、これからは、節度はね、守ってよね」
「ああ、レシィーナさん……思っていたより、すごく厳しいなぁ……」
「はぁい♥ パートナーなので、すごく厳しく指導するよ」
「ああ、了解……」
……その後。
「ええっと、これから、ギルドにね、向かうんだよね?」
「ああ、一応、この街の特徴も兼【か】ねて、確認をしておきたいからね」
「はあぁい! それじゃあ、早速、お仕事だね」
「コラッ⁉ あまり、調子にね、乗らないの!」
「てへっ、ごめんなさい♥」
5
冒険者ギルド/ナイバース支部
「お疲れさまです……って、あれっ⁉」
シーン……。
「ええ、何、これっ⁉ すごく殺風景【さっぷうけい】じゃない⁉」
「うぅん……そうだね。街の華やかさとは、すごく対照的だね」
「はあああぁぁぁ……ふううぅぅ……(暗)」
と、受付台に顔を埋【うず】めている受付嬢……。
『ねぇねぇ、サヴィリクさん、この街ね、色々、まずいんじゃないの?』
『あのね、物騒なことをね、言わないの』
『だ、だって……』
(確かに、すごく奇妙だね。何が、あったんだろう?)
「って、ああぁぁっ⁉」
「な、なにぃ⁉ 突然、大きな声をね、出さないでよ! すごく驚くでしょ⁉」
「あっ、これはね、ごめんなさい。でもね、やっぱりね、すごくおかしいよ」
「うん、どういうこと⁉」
「ほら、あれをね、見てよ!」
「うんっ⁉」
レシィーナ、掲示板に向けて、指をさす……。
サヴィリク、諭【さと】されるように、掲示板を見る……。
「ええっ⁉ ウソでしょ⁉ ひとつだけ……」
「ねっ⁉ これはね、破産しちゃうんじゃないの⁉」
『バ、バカ! 声がね、すごく大きいの!』
『うぅ……』
と、レシィーナ、ボリューム調整を意識する……。
『まあ、依頼内容もね、どちらかと言えば、すごく緊急クエストに近いよね』
『うん、私ね、すごく嫌【や】な予感がね、するの』
『ああ、すごく切羽詰まった状況なのかもしれないね』
『うん、サヴィリクさん、ひとまず……』
『ああ、すごく魂【たましい】がね、抜けているような本人にね……』
サヴィリクとレシィーナ、すごく意気消沈をしている受付嬢の元に……。
「あ、あの、受付嬢さああぁぁん⁉ 生きていますかああぁぁっ⁉」
(って、オイオイ⁉ すごくありえないあいさつだね……)
「…………(俯)」
「ねぇ、サヴィリクさん⁉ ホントに、死んでいるんじゃない⁉」
「ちょ、ちょっと……俺にね、振られても、すごく困るんだけど……(焦)」
「ええ、どうして⁉」
「あのね、レシィーナさんがね、振ったんだから、君がね、何とかしなよ!」
「うんうん……さすがはね、サヴィリクさん。それも、すごく一理あるよね」
「それしかないでしょ⁉」
「うーん……そうだね。それじゃあ、氷水でも、被【かぶ】せて……」
「ええ……氷水……⁉」
レシィーナ、氷の入った水のバケツを用意して……。
そして……。
「ガタガタガタガタ……(震)」
と、明らかに震えている様子の受付嬢さん……。
「こ、これはね、俺がね、やるべきだったかも……」
と、今さら、すごく後悔をしているサヴィリク……。
「さあ、いくよ! いっせーのーせぇ!」
と、レシィーナ、掛け声と共に、氷水バケツを、受付嬢に被【かぶ】せる……!
バアッシャァァアアァァン……カラカラカラアァッ……!
「つ、冷たあああぁぁぁぃぃいいぃぃ……‼」
「あちゃぁぁああぁぁ……やっちゃった……」
「あれれ、ヤダ⁉ なああぁぁんだっ⁉ 生きているじゃない⁉」
ギロッ!
「そ、それはね、生きていますよ! 何をね、するのよ⁉」
「ちょっと、𠮟りつけるのはね、すごくお門違いというものだよ。私はね、生死の確認をしたにすぎないんだから! ねっ、サヴィリクさん⁉」
「お、俺にね、振らないで!」
「あのね、少しね、落ち込んでいただけなの! もう少し、やり方というものがね、あるでしょ⁉ ヘェッ、ヘェッ、ヘックション!」
「うん、どうしたの⁉ 受付嬢さん、もしかして、寒いの⁉ 今日はね、スタンダートだよ。ナイトコールドはね、終わったよ」
「そういう問題じゃないの!」
「えへへ♥ でもね、すごく元気そうで、すごく安心したよ。うん、ギルドはね、こうでなきゃ!」
「あっ、あ、ああ……」
と、受付嬢、思わず、拍子抜け……。
「え、ええっと……」
結局、その後、サヴィリクが間に入って、状況を説明することに……。
そして……。
「ま、まあ、そういうことなの。彼女にはね、全く悪気はね、ないの」
「なるほど……ひとまず、理解はね、したよ」
「ふううぅぅ……雰囲気まで、すごく暗くしちゃダメだよ! こんな時こそ、すごくポジティブにいかなきゃね!」
「あははぁ……うん、それもそうだね。ホント、破産しちゃうよね」
「や、やっぱり……すごく由々しき事態みたいだね」
「うん、実はね、そうなの」
受付嬢、サヴィリクとレシィーナに、現状について、説明をする……。
「なるほど、深淵ダンジョン……ね」
「ええっ⁉ 聞いたことあるの⁉」
「うん、直接ね、聞いたわけじゃないよ。ウワサでね、耳にしたの」
「ああ、すごく轟【とどろ】いちゃっている訳だね」
「ねぇねぇ、深淵ダンジョンってね、何なの⁉」
「う、うん……若干一名ね、聞いたことない人がいるみたいだけどね。まあ、状況はね、把握できたよ」
「ええ、ホント⁉」
「うん、すごく遠方の方もね、訪れる訳でしょ。ナイバースがね、すごく人手不足に陥【おちい】るのもね、すごく無理がない話だよ」
「どうやら、説明をするまでもなかったご様子だね」
「まあ、街がね、すごく賑【にぎ】わっているのに、ギルドがね、すごく対照的な状況だから、何か、起きているとはね、予測していたよ」
「なるほど、すごくよく見ているよね」
「でもね、いずれにしても、すごくまずい状況はね、事実でしょ⁉ おそらく、ギルドの状況に遅れて、街全体にもね、浸透するでしょ」
「うん、そうだね。依頼が少ないのがね、物語っているように、直にね、影響が発生するだろうね。おそらく、私たちを含めて、冒険者はね、四人だろうから」
「うん、すごく治安が悪くなるのは、時間の問題だろうね」
「……うん……」
「ひとまず、緊急クエストの内容はね、変更しなよ」
「ええっ⁉ 契約の問題上、それはね、不可能なの。あなた方なら、知っているはずだよ」
「うん……そうだね。それくらい、俺だって、バカじゃないから、理解はね、できているよ」
「金塊の回収……うーん……どうして、そんなにね、拘【こだわ】るのかなぁ……」
「「ええっ⁉」」
「だってね、命あってのケールでしょ⁉ 初めの方はね、ともかく、行方不明者がね、これだけ、続出していているのに、回収に向かうのはね、私にはね、とても理解できないの。まあ、私の価値観なんて、すごく低いから、聞き流してくれてもね、構わないよ」
「モーレッドさん……」
「うーん……レシィーナさん、心配しなくても、俺だって、すごく君の意見にね、同感だよ。そうだね……。こればかりはね、自身の目でね、確かめる必要がありそうだね」
「うん、私もね、そう思う!」
「受付嬢さん⁉ それじゃあ、依頼の申請をね、お願いします」
「はい、かしこまりました。しかし、ご承知の通り、すごく過酷なミッションだと思うので、すごく危ないと感じたら、引き返してくださいね!」
「うん、了解……」
「うん、ひとまず、百聞は一見に如かず……だよね」
サヴィリクとレシィーナ、緊急クエスト《深淵ダンジョンに眠る、金塊の回収》を受諾!
同時に、ダルアナ深淵マップが、渡される……。
―(ウイーン)[扉の開く音]。
「神様……どうかお願いします。あの二人にね、ご加護を!」
「パルマディアさん⁉ 心配しなくても、彼らなら、戻ってくるよ」
「⁉」
ローラとクラーオウ(ローラの先輩)、パルマディアの元に……。
「ああっ⁉ ローラさんにね、クラーオウさん……」
「えへへ、ごめんね。陰から、聞かせてもらっちゃった……」
「ああっ⁉ そうだったんだね……」
「ねっ、クラーオウ先輩⁉」
「うん、さすがに、氷水はね、すごく驚いちゃったけどね」
「そうですね。でもね、すごくレシィーナさんらしかったよね」
「あのね、そこはね、納得しないでよ。ホント、すごく冷たかったんだから」
「まあ、まあ、これもさ、何かのご縁ということで、すごくいいんじゃないのかな?」
「うん、すごく貴重な経験をね、したでしょ」
「うーん……二度とね、経験したくない……」
「ふふっ。……。あっ、でもね、先輩⁉」
「うん、藪から棒にね、どうしたの⁉」
「サヴィリクさん達、ホントにね、帰ってくるかな? まさか、同じような、末路をね……」
「ローラちゃん、今はね、信じるしかないよ」
「うん、そうですね」
「うん、私もね、クラーオウさんの意見にね、すごく賛成だよ」
6
宿屋(サヴィリク/レシィーナ)。
「それじゃあ、明日に備えてね、眠ることにしよう」
「うん、そうだね。お休みなさい」
「ああ、お休み」
―((ウイーン))[扉の開く音→扉の閉まる音]。
サヴィリクとレシィーナ、各々のお部屋に……。
7
―そして、翌朝。
サヴィリクとレシィーナ、ナイバースの北ゲートから、オールライデン街道に……。
オールライデン街道を移動中……。
「ええっと、街道をね、西に進んだ……突き当たりみたいだね」
「うん、深淵……ね。確かに、如何【いか】にも、すごく金塊が眠っているという響きだね」
「ダルアナ深淵……大陸唯一のすごく大きな海溝だね」
「レシィーナさん……海じゃないんだから、海溝とはね、言わないでしょ⁉」
「えへへ♥ すごく鋭いご指摘、ありがとね♥」
「はははぁ……やっぱり、君はね、すごく目のつけどころがね、素晴らしいよ」
「ヤ、ヤダ……先輩⁉ そんなにね、褒めないでよ(ぽぉぉ)」
「ねぇ、黙らないで⁉ すごく恥ずかしくなっちゃうから……」
少しずつ、打ち解けていく、二人……。
そのような雰囲気が、すごく垣間見【かいまみ】えていた……。
サヴィリクとレシィーナ、移動をしながら、ダルアナ深淵マップを確認中……。
「ねぇ、思っていたより、すごく壮大なんだけど……」
「うん、そうだね。俺も、すごく壮大だとね、思っていたところだよ。どうやら、大きく分けて、三つの層にね、分かれているみたいだね」
「うん、上層から、仕掛けの間……落石の間……閃光の間……そして、最深部……だよね?」
「うん、これはね、一日で帰られる距離じゃないよね」
「そもそも、すごく妙なことがね、すごく多いんだけど……」
「ええっ⁉ そうなの⁉」
「うん、そもそも、最深部にね、辿り着いた者がいたとして、どのようにね、金塊の在【あ】り処【か】をね、昔の方は、ご報告したんだろうね」
「ねぇ、それはね、考えないようにね、しようよ」
「ええ、どうしてなの⁉」
「うん、すごくスケールがね、大きな問題だし……加えて、すごく夢がね、なくなっちゃうでしょ⁉」
「あははぁ……確かに、そうだね。さすがはね、サヴィリクさん……すごく素敵なことを言うよね」
『ううぅぅん……すごく微妙な褒められ方……だね。喜んでね、いいものなのだろうか……』
8
「「あああぁぁぁ……(パクパク……)」」
サヴィリクとレシィーナ、目の前に広がる、すごく巨大な深淵に、思わず、言葉を失う……。
「あははぁ……何というか、すごく神秘的な光景だね」
「うん、すごくしっくりくる……すごく適切な表現だね」
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