014:前提が変われば全てが変わる


 満桜たちとの入れ違いで、商人との話し合いを終わらせた配信系探索者が帰って来た。

 

「真木川さーん、調整終わりましたー」

「間に合ったか。そういえば配信していると言ったが、名前を聞いていなかったな」

「忘れてました。板谷です。そこそこな配信者だと思ってくださいー」


 見晴らしのいい監視塔で配信系探索者、板谷と真木川は通信を満遍なく通らせるための中央指揮所CCPを立てていく。


 どの方向に敵が攻めて来ても、対応可能な配置にさせた。あとは状況によってその場の判断力に任せるしかできない。

 せめてもの手段として、即時移動できるように全体の指揮を担う必要があった。仮に、その場に祖父がいたら落第点を貰い、こっぴどく叱られるだろうと真木川は子供の頃を思い出した。


 粗方準備は整い、通信の感度チェックも完了。やる事が無くなった板谷は、満桜の武器について疑問を口にする。


「真木川さん、なんで銃っていうのは無くなったのですかね? たくさん攻撃出来るなら便利なはずですよね?」

「ふむ……。そういえば板谷ぐらいの歳になると世代が違っているのか……」

「なに言っているのですか? 真木川さんも若いじゃないですか。あなたは22で、私は17ですよ? 大して変わらないです」

「まぁ、そうだが。俺は変わった家族構成だったからな」


 はぁっ、とため息を吐いた真木川。おっさん扱いされなくてよかったと安堵していた。

 そして、若者に銃の廃れた理由を分かりやすく解説する。


「話を戻すが、廃れた理由は色々とある。一番の問題は『前提とするものドクトリン』が変わったからだな」


「ドクトリンですか?」 

「神々が求めていたものは知っているか?」

「そりゃあ、強い人ですけど……」

「銃を使う戦闘というものは、最低数十人から数百以上の人と組み、中規模から大規模で戦うのを想定としたものだ」

「あー、納得です。神様が求めるのは『一騎当千の強者』ですもんね」

「あぁ、そうだ。あとは人よりも強いモンスター相手には、あまり効果的じゃなかったのも大きな要因だな」

 

 神々は地球上の人類に、とある条約を取り付けた。


 ――資源などの必要なものは与えるから争いを辞めろ。そして強き者を作れ。


 その条約によって世界が求める力は、「個より全から圧倒的な個」へと変わっていったのだ。世界を守るためならば大きな事件性に関しても、使徒が直接治安を維持しするほどである。


「……あれ? じゃあなんで、モンスターに効かない銃を使っているのです?」

「試し撃ちをしたが、満桜の作る武器にはモンスターにも有効打があった。おそらくは満桜独自のスキルに影響しているだろう」

「なるほど……。噂の副次効果ってやつですね」 

 

 火力不足となった銃を底上げするスキルが満桜にはあった。

 それは【装備品効果増大】。


 どうやらこのスキルは自分のみ上昇する効果だと思いきや、武器に付与するバフスキルであった。満桜が銃、弾薬に必要な魔力を込めて発動するだけで、誰もが一定した火力が出せたのだ。


 満桜は壊れやすいリスクがある、とは言っていた。だがそこは、どれぐらい使えば壊れるのかを把握するだけで解決する問題だった。


「報告によると弾倉二つ使えばガタが来る。なら予備の武器を回しながら使い、補修スキルで再利用すれば、かなりの耐久度を確保することが可能だ」

「スキルのデメリットを他のスキルで穴埋め。強力なスキルを持つ探索者では頭の痛い問題でしたが、まさか生産職に方法があったとは思わなかったです」

「認識の違いによる弊害だな。他にも組み合わせがあるかもしれない」

「上手くはまればトッププロに成れますかね?」

「あれはスキルだけの問題じゃないだろうよ」

「そこは行けるっていう流れですよー」


 今回の異常事態に思うことはあるが、強くなれる秘訣は得た。

 真木川はこのヒントで、今まで試さなかった技術が活かせると知った。だが、今は目の前にある問題を解決することが先決だと考え直し、先を集中させる。


 そこへ、満桜に追従していた副隊長から連絡がきた。

 

『真木川さん、少しいいですか?』

『どうした?』

『お嬢様方からの提案なのですが――……』 

『――それは……面白い提案だ。なら満桜に必要なを教えておこう。いま行っている仕掛けが終わり次第、南側で配置しろと伝えろ。そこが安定して火力が出せる。ついでに必要な素材も渡す』

『了解。それでは』

 

 真木川は通信機を切った。


「どうしたんですか? にやけていますよ?」

「ああ、どうやら俺の直感は正しいのだと気付いてな」

「はぁ……」

 

 やはり自分の感は信じるべきだと確信した真木川は、丘の向こう側――群勢の影を発見する。

 

「来たか。距離からして、およそ半刻で交戦だな」

「数は……数えたくないですね! 深層のゴーレムもいますよ」

「なに、安心しろ。手はある」

「でも、それを子供に任せるのはさすがに……」

「いけるいける。俺がそう感じたんだ」

「また直感ですか?」 

「直感もあるが、あいつの目を見て行けると思ったのもある。――さて、もう完成したのか」

 

 満桜の面白い提案によって、より相手に打撃を与えるための秘策を編み出していた。最初は馬鹿げた案だと思っていたが、少し考えてみると面白い戦術に変わっていった。


 真木川が見上げたのは、新しく建造した要塞に相応しくない建物。縦長に設計になっており、歪で巨大な塔の形をした円柱であった。

 

「始めるぞ!」


 全ての通信機を起動させ、大規模戦闘が始まった。



 **

 じっくりと更新していきます。

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心優しき超火力特化ピーキー探索者~大量生産しまくって大量消費で薙ぎ払え!~ 山埜 摩耶 @alpsmonburan

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