013:この雰囲気、見たことある……!


 満桜を起点に突撃探索者一行は無事に要塞へと帰還。

 一連の快進撃を見ていた防衛の人は、まるで凱旋を祝うような盛り上げをしていた。

 まだ戦いは終わっていないと言うのに、この気楽さは探索者という性なのか。

 

 怒涛の突撃によってモンスターの数は多少減ったはものの、いまだに戦力差はかけ離れていた。

 むしろ、丘の向こうからぞろぞろとモンスターの増援が見える。

 壁を攻撃してくる敵は粗方片付けたが、探索者たちは気を引き締めて次に備えていた。

 

「真木川さん、おつかれさまです。城壁は何とか維持してますが、もう持たないって嘆いていますけど」


「嘆く暇があったら手を動かせと怒鳴りつけろ。こっちは状況を確認したい」


「でも資源が無いって」


「それは商人に強請れ。全滅したら大損だぞと言え」


「それ怒られるの僕じゃないですかー!?」


 愚痴を言いつつも、配信系探索者は自分でやれる仕事を全うするため、立ち去った。

 留守にしていた間に溜まった仕事を消化し、早く次の対処を決めなければならない。

 大きな問題点を纏めると。護るための壁が壊れそう。大量の敵を倒すリソースが無い。他にも細々としたものはあるが、この二つさえ解消できればまともに戦えるだろう。そして、この二つの問題は、満桜と三由季が担っていた。


「自己紹介が遅れたな。真木川 壊将。緊急時限定だが、ここの指揮を任された探索者だ」


「えーと、富士原満桜です。うろうろしている人は三由季と申します」


「そうか。聞きたいことはあるが、生憎時間が無い。出来ることを教えてくれないか?」


「私が可能なのは、銃と弾薬の提供です。少ない数ですが、今いる探索者の人数を考えると十分に供給できます」


 満桜は自身の能力を発揮できそうなものを提案プレゼンする。


「前々からスキルの副次効果には把握していたが、ここまで可能とは……流石としか言えないな」


「……というと、そこの少女もか?」


「そうです。彼女は自由に壁を生み出すスキルを持っています」


「何というか……」

 

 偶然か、或いは必然なのか。奇跡など信じない真木川は思わず空を見上げた。

 真木川が一番欲しかった、モンスターの軍勢に対抗できる物量の火力が目の前に現れたのだ。


 満桜は話したい内容を言いを終え、周囲をきょろきょろ見渡す三由季に所へ向かう。三由季が重点的に見ているのは、やはり人を護る城壁であった。


「んー、一番来そうな所に側防塔。外も妨害用のギミックを仕掛けたら……行けるか?」

「材料は足りる? 材質が合えばいいけど」

「とりあえず、話し合わないと分からんで」

 

 要塞の補強に必要な素材の量を確認している満桜と三由季を見て、真木川は自衛隊だった祖父に鍛えられた戦術思考を元に、より効率的な作戦を組み立てる。

 

「満桜、三由季、少し待て。協力者を呼ぶ。それからブリーフィングを行うぞ」

「は、はいっ!」


 上機嫌な真木川は「久々に面白くなりそうだ」と小さく呟き、自分の部下を呼びに行く。

 その声を聴いた満桜は何故か身震いする。この予感はどこか体験したような気がするのだが、とりあえず後回しにした。

 

 たった一分でチームメンバー、10人が真木川の元へ集まった。どれもよくあるファンタジー食のある恰好だ。彼らが一斉に整列した途端、空気がひりつく。

 この謎の緊張感を感じ取った三由季は小声で「珍しく強い探索者だね」と言い、満桜は「映画で観た雰囲気だ」と返した。

 

「さて、ブリーフィングを始めるが……満桜、出せる武器は何があるのか教えて欲しい。可能なら弾倉の多い銃が好ましい。それと爆薬はあるか?」


「あっ、えーと……機関銃でなら20あります。爆薬は持っていませんが、希望に沿ったものなら今からでも製造できます」


 真木川の部下10名は、死の商人まがいなやり取りにドン引きする。まさかこんな小さな子供がそれをやるとは思わなかったのだ。

 通常、生産職というものはサブコンテンツ的な立ち位置である。素材を加工してお金を稼いだり、自分の手に合う武器を作ろうとしたりと、やりたいことは多々あるが、基本は迷宮で関わる戦闘とはかけ離れた職業だ。


 それを戦いに利用するなど、普通は考えられない。過去に戦闘職と生産職を上手く戦術に組み込もうと試みた人がいたであろう。しかし、それで活躍している者は未だ存在せず。

 満桜は知らぬ間にその不可能だった試みを実現させたのだが、実は全く自覚していなかった。無自覚系、無双幼女である。


 そう怖ろしいものを軽々しく作るなよという困惑を、真木川は隠して話を続けていく。

 

「……作れるなら、プラスチック爆薬の方がいい。手軽で調整しやすい」


「分かりました。では先に武器、弾薬の方を置きますね」


 そう気軽に言い、満桜は邪魔にならない所でドサッと銃と弾薬が入っているケースを置いた。

 それを部下の一人が中身を取り出して、検査作業をする。


「真木川さん。見たことない形状ですが、俺たちでも扱えます。知っている機関銃よりも軽い」


「そうか……では、武器を銃に切り替え二人一組、他探索者含め5部隊編成で配置しろ。そこら辺の調整は任せる」


「任されました。他の探索者チームと連携して配置を決めます」


「満桜、三由季は俺に追従。それでは各自、行動開始!」


了解りょー!」


 ブリーフィングが終わり、部下たちは各々動き始めた。

 洗礼された動きを見て、満桜と三由季は呆然とする。


「何している? 今から外で罠を仕掛けるぞ」


「わ、わかりました!」

 

 最後に真木川が外に出ようとした時に、満桜は気付いた。

 まるで軍隊みたいじゃんと。 



*続きは少しまって……。頑張ってるけどどうしても質が落ちてしまうので時間を掛けます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る