宇宙船リリィヴァレーン号は事故で乗組員がほぼ亡くなり、トラン・スモールマンがただ一人生き残る。
トランは孤独に耐えかね、地球ではタブーとされる「意志を持った人工知能」を作る。
それがリリィである。
リリィは地球への帰還を目指し、さらにある星の植物を採取し、地球のために緑化再生技術も開発する。
これがのちの重要な布石となる。
これは「軌跡」と「奇跡」の物語だ。
トランが種を植え、リリィが花を咲かせた。
タイトルにある「繋いだ軌跡」はそのことを指していると思う。
人は動物に無垢を求めるように、ロボットや人工知能にも無垢を求める。
それは愚かな考えかもしれない。
しかし物語の終盤トランの音声データを聞いたリリィは「言葉を失い、泣き沈む」。
さりげないが、ここは劇中もっとも感動的な場面である。
むかし誰かが
「SFにもっとも近い様式は詩だ」
といっていたが、リリィが泣く場面を読んでそのことを思い出した。
優れたSFで優れた短編です。
ぜひご一読をおすすめします。