第17話 変人

「お、おい!あれヤバくね……?」

「あ〜ありゃ死んだな、まあさっきの音に引き寄せられたんだろうなぁ」

「まあ祈っといてあげましょ?……えーっと……アレ?〜何だっけ、祈りの言葉……」


「…………アレだろ?確か……」


 二人がそんなふうに会話をしていた時、先程見ていた位置から轟音が鳴り響いた


「?!な、何?なんの音!」

「わからん!だが伏せろ!」

「な、何だありゃ?!」


 と、何かがこちらに向かって飛んでくる。先程の男の判断は非常に正しかったようだ

 だが飛んできたそれを見て冒険者達は唖然とした


「……マジかよ……『ブリザードドレイク』?!」


 三人が驚くのも無理は無い。普通『ブリザードドレイク』を倒すにはかなりの強さの冒険者が束になってやっとのレベルなのだが


 そんな『ブリザードドレイク』が次々とこちらに投げ飛ばされてくる。

 そんな非現実的な光景にはさすがに誰だって驚く他なかった


 そしてしばらくの後、轟音がなりやんだそこには一人の男が突っ立っていたのだから……


「……マジかよ……」

「ヤベェって……」

「凄っ……」


 語彙力など先程のドレイク達と共にどこかに飛んでいってしまったようだ


 男はゆっくりと手に持っていたそれを丁寧に仕舞うと、近くに倒れていたマンモスドンを確認し……その後ため息を吐いて立ち去ろうとする


「ね、ねぇ!アンタ凄いね!」

「あ、ちょ、バカ!勝手に飛び出して!」

「お、おい魔族かもしれないんだぞ?!」


「えーっと、1人ずつ喋ってくれるかな?……ごめんね、俺あんまり会話得意じゃなくて」


 その男は身なりこそ一般的な服装だったのだが。明らかに手に持っているその槍と剣だけが異彩を放っていた

 見た目は二十歳ほど?その目には光がなかった。

 その目でこちらを見下ろされた途端、世界が崩れさるような奇妙な感覚と……圧倒的な敵意を武器から感じて思わず下がる


「あ〜ごめんね、ちょっと……コラ!アーテル威嚇しないの!」


 え?なんかこの人突然武器に話しかけ始めたんだけど……?


 三人は急にこいつがヤバいやつなのでは無いか?と心配になり、あわててその場から離れようとするが


「えー?なんで逃げるのさ〜ちょっと話ぐらい聞いてよー……」


 そう言って追いかけてくるのだ。最早色々とやばい気がする

 関わっちゃダメな奴だこいつ


 三人の心は一気にひとつになる。即ち


「ここであんたを潰す!『ファイアボルト』!!」


「お、おう!怖ぇけど……『スレッジハンマー』!!」


「え、えっと……『ライトニングランス』!!」


 各々が放った魔法やスキル


 それらをまるで片手であしらいながらそいつは近づいて来る

 最早恐怖で足がすくむ。先程倒された『ブリザードドレイク』のように私達をも何かしてくるのではないか

 そう思うと体が強ばって足が縺れ、私は逃げ遅れてしまう


「キュレル!く、クソ!キュレル……すまん!」


「ちょ、カピーサラ!あんた見捨てないでよ!」


「わ、悪ぃ!ごめんな!」


 あっという間に逃げてゆく仲間だったヤツら。そして近づいてくるヤバいやつ


 そしてゆっくりと手を差し伸べられて……


「あの……?俺そんなに怖いんですか……?」


 めっちゃ悲しそうな顔をしている男が悲しい目をしてこちらを覗き込む

 そこには敵意などは一切無かった




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長年連れ添った【剣】と【槍】がヒロイン面(激重感情)で俺に迫ってくる件〜〜〜〜異世界転移したけど、チートも特殊能力も無かった代わりに武器にだけは愛された男、無双する 皆月菜月 @Cataman

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