第16話 刀の使い道
『刀』。アーテルの見た目が刀になったことで俺は刀の使い方について考えることになってしまった
まずはギルドから簡単な依頼を受けて近くの雪原で刀を試し斬りしてみたのだが
「……なんか違う気がするな……ちょっと待ってな……」
やはり普段使用していたブロードソード型のものとバランスも、重さも何もかも違う
振る度に少しだけバランスの違いを受けて、そのまま手からすっぽ抜けかけることもしばしあった
『ほらーアーテルが刀になってるからこんなにグリム様を苦戦させちゃってるじゃない!……ほら、アタシ使ってみる?』
次に『薙刀』になったアルバスを使ってみた。しかしこちらも普段使っている感覚と全く異なり……上手く扱えなかった
『アレレェ?何がってぇ?』
『黙りなさい?あたしの方がまだ扱えてたわよ』
『なれたら私の方がつかわれますぅ……刀ってのはロマンなんですぅう』
『どっちも煩いぞ?』
だが、しばらく素振りしてみてようやく両方とも慣れてきたようで
右手でアーテル『刀』を左手でアルバス『薙刀』を振り回せるようになった
俺は少しうれしくなって
「よぉし!アーテル、全力で一振してみるから……行くぜぇ?」
俺は刀をゆっくりと閉じる。納刀を閉じる、と言ったのはおそらく癖からだろうか
空気が突然凍りつく。世界から急激に温度が奪われていくような、そんな感覚が俺におしよせる
そしてその寒空の彼方。果てを見た
世界から温度が消える。
「──────『開け』」
閉じたなら開く。それだけだ
空間が凍る。凍ったならば、解凍される
◇◇
その日冒険者たちは奇妙な天気を目撃したという
曰く、半分は晴れているのにもう半分は雪雲が覆っている
まるで何かが切り裂いたかのように雲が裂けて、そこから太陽がゆっくりと顔を出していたと
人々は神が起こした戯れだと思ったそうだ。しかしそれがたった一人の人間が刀で放った初めての全力の一振の結果だとは……誰も思うまい
◇◇
「───────やり過ぎた」
雪原、いや。先程まで雪原だった場所には雪など最早なく
ただ巨大な氷柱が天に向かって立ち上るばかり。
『……さすがグリム様……ここまでの力を出せるなんて……では次はワタクシを!』
「……これ文句とか苦情とか言われないよね?……風情がどうとか……」
『観光地なら言われたかもしれませんが、ここはただの雪原ですよ?文句など……おや?アーテルどうなさいましたか』
『……ハッ?!あまりにも気持ちよすぎて天に登りかけてましたァ……』
恍惚な表情。俺は思わず
「お、おう?……いや幸せそうなら何より」
そういう言葉しか投げかけれなかった。しかし刀か……
『次はアタシを使ってくださいな!』
俺は苦笑いしながら、また今度ね。と言うとアーテルを片手に担ぎ、辺りを見回す
今の一撃でおそらく魔物がこちらに来ると思ったのだが、案外来ないものだな
今回俺たちが受けた依頼は
『ヘヴィマンモスドン』の討伐
こいつは大きな音に引き寄せられて来ると聞かされていたので、俺は試しに大きな音を出してみたのだが
なんとも反応がない。もしや今の音でびっくりして逃げられたのか?
そんな焦りが俺の頬を伝う。
まずいぞ?いきなり失敗とか伝説級冒険者がヘヴィマンモスドンの討伐に失敗とか絶対嫌だぁ!
そんなことを考えていた俺の前に、なにかの気配がとおった
「今のはヘヴィマンモスドン?!……でも何で手負いなんだ?」
そう、ヘヴィマンモスドンには何者かの噛み傷があり
それが原因で既に虫の息だった
俺が疑問を調べようとしたその時
───遠くの方で地鳴りがした。そしてその音はこちらに向かって走ってくる
俺はその反応に見覚えがあった
「なるほど、竜種……まあせっかくだしアルバスの試験運用にちょうどいいか」
俺たちの前に現れたのは『ブリザードドレイク』
小型の竜種。小型ではあるが、それは大体4メートルはある
そいつがなんと三十匹程で襲ってきたのだ。
最早つかみ取りレベルの大群。それを俺は捌く羽目になったのだ
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