第15話 篝火に鉄を

 次の日、俺はその街のギルドの人々にめっちゃ感謝されていた


「ッ!ありがとうございます!……貴方様のおかげでこの街にさらなる安全が訪れます!……」


「お、おう……ちょっとやりすぎたかと思ったんだけど、そこは……?」


 すると老練な剣士が歩いてきて


「気にしなくて大丈夫ですよ!いやぁ実は彼らが魔物だということは皆承知していたんです」


 知ってたんかい!ならなんで……あ、そうか


「はい、お察しの通り彼らは剣聖道を名乗っていました。その名前を継いでいるものたちを攻撃したら、最悪の場合世界を救ってくださったもの達に泥を塗るような結果になってしまいますので……」


 ある意味、俺が来たことで奴らが剣聖道のものでは無い、という証明になったわけか


「……じゃあ本当の剣聖道は……もう」


 俺は剣聖道が廃れてしまった可能性に肩を落としかけるが


「それは大丈夫です、この街の民たちは皆、の使い手ですから」


 ?それはどういう……


「実は市長たるギガという男があの魔族たちと結託していたのです……それも5年前から……いくら冒険者があれは危険だ、魔物だと騒いだところで……市長の手によりもみ消されてきました……そこで我ら冒険者たちは皆がそれぞれ剣聖道の技のとなることを決めました」


「つまりはこの街の人々、それら全てが剣聖道そのもの……なるほどな」


 確かに剣聖道の技はたくさん存在する。これはカガリから教えられた時に俺が驚いて飛び上がるぐらいにな

 それを街全体で共有して、ひとつの財産としてそれぞれが所持していると……なるほど、すごいな


「カガリ様はかつて寒波により獲物すら狩ることもままならなかった我らに、生きるための剣の心得を教えてくださったのです……あの日以来、我らは皆心の中にを秘めて生きています……その心の焔は耐えることはありません」


 俺はその話を聞いたあと、街を一望できる場所で眺める


「……カガリの奴、カッコつけやがって……ま、あいつは人に愛されるのが得意だったからな」


 それは紛れもない賞賛。心からの彼に対する言葉だ


 ◇◇



 宿に戻ろうとしたところ、アルバスとアーテルが何やらいくつもの武器を携えていたので俺はびっくりした


「?!……なにそれ」


「あ、グリム様!これは剣聖道から譲り受けた剣とかです!それと街のギルド直属の武具屋さんから引っ張ってきたんです」


「?何すんの……?」


「それは」「勿論」


 ◇◇◇



「武器進化?!……え?どういうわけ?!」


 まずは俺が目の前で見た光景から話さべきだろう。

 二人が持ってきた剣とか槍を食べ始めたのだ。

 食べると言っても正確にはと言うべきかもしれないが、その際の恍惚な表情は妙にエロスを醸し出していた


「……ふふ、ご馳走様でした♪」


「いい味でしたァ……!」


 あっという間に山のように積み重なっていた武具が消えて……直後に二人の見た目が変化し出す


「…………眩しっ…………」


「見てください!この姿!」


「いいでしょう、でしょう?」


 そこには髪型から、服装まで全てが変化した二人がいた


 アーテルの方は和風な見た目に、刀を何十本も背中に格納している様子で


 アルバスの方は、薙刀を担ぎ……鎧のようなものの中に和服を仕込んであった


「……この姿は剣聖道の本質を吸収したものですぅ……つまりは、刀モードです」


「アタシは逆に薙刀モードね、ふふんいいでしょ」


 それはもう。2人は先程までとは異なり立ち振る舞いすら変化しているのだから……なんと言うか驚いた。以外の言葉が出てこない


「今の私は『アーテル/刀』……今の私なら貴方様の一番の刀となりえますぅ」


「今のアタシってば『アルバス/薙刀』ね!……これならグリム様に新しい武器体験をあげれるのよ!」


「え?……でも武器なら武具屋さんで買ったもの全てを食べる必要って」


 二人はさも当たり前のように


「?貴方様が使う剣は私だけで良いんですよぉ?……それ以外の剣を持たせる訳ないじゃないですかぁ」


「そうね、アタシ以外の槍系のものを貴方様に手渡すわけ無いもの!」


『要は二人とも嫉妬しとるんじゃよ、他の武器にのぉ……独占欲っとでも言うべき感情じゃな……ま、妾も持っておるがのぉ……くくく』


「……その武器を食べて武器が変化するのって全てに適応されるんですか……?」


「当然」「当たり前ですぅ」


 ……そっかあ。


 確かに俺は今の戦い方にマンネリを感じてはいた。其れの解消という点では非常にいいのかもしれない

 そう俺は思いながらも


 ……だとしても全部食べるのは色んな意味で、重いんだよなぁ……とため息をかみ潰した


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