引力への応援コメント
好き と思う人に会って糸が繋がる
嫌い と思う人に会って糸が繋がる
繋がってしまった縁の糸が
無重力空間で私を繋ぎ止める
糸が千切れて弾き飛ばされた人を見た
糸に引かれて割かれた人を見た
危険なものは必要なもの
嫌いだからと
糸を切って
私の身体がぐるぐる回る
嫌いな人に目が合って
糸が繋がって
私の身体は止まって
その人をしっかりと見た
どの糸が重要で
どの糸が不要か
三つの物体の引力を計算する
「三体問題」すら計算できない宇宙で
数多の糸を選り分けるのは
私にはお手上げ
私はここにいる
糸に繋がれ ここにいる
作者からの返信
村乃枯草さん
素敵な詩コメントをありがとうございます。
とても抽象的な内容だと思うのですが、動画のように情景が目に浮かぶ不思議な詩だと思いました。私も絶妙な縁のバランスによって存在しているのかもしれないと思うと、「ここにいる」ことの重みが普段とは全く異なるように観測される気がします。
縁に関わる詩を書くとき、糸で繋がることのみならず「止まる」という状況自体もキーになる詩を私はあまり見たことがなかったので、すごく新鮮で楽しい体験でした。
(自由律俳句)への応援コメント
チョムスキーという米国の言語学者は
「言語内臓説」という学説を生んだ。
「内蔵」じゃないよ 「内臓」だよ
赤子から子どもが話し始めるまでに
学習できる情報は
どう見積もっても言語学習に足りない
心臓や胃が自然と育つように
脳内に自然と育つ言語中枢
つまり言語の内臓が在ると主張したんだ
そして
現代では主張が概ね是認されている
例えば
聴覚障害の児童のみ集めた孤児院で
子ども達は独自に手話を作った
そんなものを見れば
人間には言語の内臓があるって
認めざるを得ないよね
器である言語を作る内臓があるなら
それに入れる感性を作る内臓がないと思う?
きっとあるよ
感性の出所は論理的に考えても分からないから
きっとどこかが作ってる
それが暖かいって
あなたの言葉を聞けてよかった
【解説】
これは詩と呼ぶのはおこがましい散文です。
言語学者・チョムスキーの学説が日本で「言語内臓説」と訳され、提唱された後にとある孤児院で事件が発生したところまで、現実に起きたことです。ですから、これは事実を羅列しただけです。
僕が作ったのは、まあ、オチだけです。
作者からの返信
村乃枯草さん
素敵な詩コメントと解説をありがとうございます。
「言語内臓説」というのは初めて聞きましたが、大変面白い説ですね。単に「内蔵」されているのではなく「内臓」だからこそ指数関数的に発達するというのはとても面白い視点だと思いました。丁寧にご説明くださりありがとうございます。村乃さんの詩の中で感性を暖かいものとして受け止めておられるように、私も言語を内臓から生まれた生物として感じてみようと思いました。
コンパスへの応援コメント
はじめまして!
言葉ひとつひとつの美しさが、その連なりが、あまりにも心地よくて何度も噛みしめるように読ませて頂きました…。読み終えて、ふぅ、と息を吐いてしまうくらいに瞳さんの書かれる文章に感服しました。
語彙力がなくて、今の自分が抱いている気持ちをうまく言葉に出来なくて凄くもどかしいのですが、とにかくほんとに感動しました。素敵な作品を読ませて下さりほんとにありがとうございます…!
作者からの返信
深海かやさん
はじめまして!
なんと嬉しいお言葉でしょう…すごく丁寧にお読みいただいたようで、作者冥利に尽きます。めちゃくちゃ嬉しいです( ;∀;)
とんでもありません…!率直な感想をそのままお伝えいただけるくらい、ありのままのお心で読み込んでくださったことに心から感謝いたします。こちらこそ本当にありがとうございます!
祈りへの応援コメント
より良い未来を祈るのは
自分はより良い未来を得て当然と思ってる?
何もない
本当に何もない
それを知ったのは 何かの計らい
その何かに祈る
作者からの返信
村乃枯草さん
素敵な詩コメントをありがとうございます。
「良い未来を得て当然と思ってる?」
この「?」だけでいくつもの詩が生まれそうな、すごく壮大なテーマのように感じました。
「未来を得る」ということは「今を変える」意味を孕み、そしてその時点で何かしらの「今(という良さ)の否定」があり、結果的に今を得ることが叶わないゆえに未来を得ることも叶わないような、とても重たく苦しいテーマを突きつけられた感じがして、どんどん思考の内側へ潜っていくような感覚になりました。
だからこそ次の否定の言葉が生き、この詩の中で僅かに輝く「何か」ですらも抽象的に描かれることが、詩としてのバランスを素晴らしいものにしていると感じました。
何かへの祈りが今への祈りに、そして明日や未来への祈りへと収束するような、そんな祈りを込めて読ませていただきました。今日も素敵な詩をありがとうございます。
追記
改めて読ませていただき、
「何もない」「本当に何もない」
という二重の否定のすぐ下に「それを知った」という「何か」がすでにあり、そのあっけなさに改めて打ちひしがれました。読むほどに気付きをいただけるような素敵な詩ですね。
ひずみへの応援コメント
他人を抱くのは楽なのに
自分を抱くのは楽じゃない
他人に言うのは楽なのに
自分に言うのは楽じゃない
楽じゃない自分を抱く行為から
楽じゃない自分への言葉を紡いで
その言葉が他人に届く
楽じゃないのは
みんな同じだから
みんな知ってるから
作者からの返信
村乃枯草さん
素敵な詩コメントをありがとうございます。
他人と自分の対比から自分を見つめ、そして他人への繋がりという鮮やかな広がりが美しいですね。わかりやすい個としての繋がりではなく、より深い部分から「みんな」という視点につながっていく表現に、作品のぬくもりを覚えました。私も「自分」という難しさに、この詩のように真摯に向き合いたいものです。
(短歌)への応援コメント
それは植物
「死んでいく」にバツをつけ
「枯れていく」にマルをつける国語教師
違う
目の前のそれは 僕らの分身
作者からの返信
村乃枯草さん
素敵な詩コメントをありがとうございます。
最後の行に唸りました。「違う」という言葉がそれ単体で置かれる強さと、それに負けないような強い「僕らの分身」という言葉で多くを語らず終わらせるバランス感覚が圧倒的だと思います。村乃さんの詩に向き合う熱量が溢れ出るような、素晴らしい作品に浸らせていただきました。
サポートについて
返信機能が見つけられず、どこでお礼をお伝えしたらいいのかわからなかったため、不躾で恐縮ですがこちらに書かせていただきます。
この度はありがとうございます。村乃さんにこのような機会をいただけるという事実がただただ嬉しく、そして背筋が伸びる思いです。応援のひとつの形として、大切に受け取らせていただきますね。これからも変わらずお付き合いいただければ幸いです。
コンパスへの応援コメント
これに対しては詩でなく体験談を記します。
高校で文芸部に所属して、毎年部誌の名前を変える伝統がありましたが、2,3年先輩(正確な数字を忘れました)が『別解集』という名前をつけていました。高校生が自分のやり方を集めた存在にこれほどいい名前は母校可愛さながら他に知りません。その名をつけた先輩に羨望して見返せないままです。
作者からの返信
村乃枯草さん
コメントありがとうございます。
『別解集』とはなんと鮮烈なネーミングでしょうか。そしてそれを高校生ながらにつけた村乃さんの先輩は凄まじい方なのではないかとお察しします。そのような方とのお付き合いがあったからこそ、村乃さんのお言葉はいつも磨き上げられておられるのかもしれないと思うと、私もまた、そんなお二人の関係が羨ましいです。
願いへの応援コメント
スターを待っている人がいる
ファンを引き連れ歩くスターに
踏まれる人がいる
後ろを歩くと
倒れている人に気づいて
いや
見たのか見なかったのか自分でも分からなくて
作者からの返信
村乃枯草さん
素敵な詩コメント(今勝手に作った言葉です)をありがとうございます。
スターとそれを取り巻く混沌とした状況に、スターの身勝手なまでの眩しさを想像しました。
後ろを歩くという表現や、他にもたくさんの人がいて倒れている人まで見えるのは、そんなスターの眩しさの中でも暗闇を見続ける胆力がある人だけが描くことのできる要素だと思います。だからこそ「見たのか見なかったのか自分でも分からない」という一行がこの詩の中でありありと生きるではないかと感じました。
宝石の日々への応援コメント
砂利の上に座り込む
周囲は暗く
何の石だか
よく見えないよ
それは夢想だろう
宝石の上に座っていた人の話
暗かったから分からなかった
そう言ったという
石に血がにじむ
私は夢追い人だろうか
きっと
捨てる資格もなく その日を待つ身だろう
作者からの返信
村乃枯草さん
素敵な詩コメントをありがとうございます。
確かに暗ければたとえ宝石の上に座っていても気付かないのかもしれませんね。
「捨てる資格」という言葉にかなりたくさんの解釈を委ねられるような気がして、非常に想像が掻き立てられる詩だと思いました。私自身夢追い人ですので、村乃さんの作品の世界で立ち止まらせていただくような、じんわりと浸るような感覚になりました。
この度はこちらの詩集にたくさんの素敵な詩コメントをくださり、本当にありがとうございました。期間中は拙い感想ばかりで大変申し訳ございませんでした。こちらでお詫びさせていただきます。村乃さんは毎回とても丁寧に作品を読んでくださり、そしてテーマの中で村乃さん自身の作品に触れさせていただくことがとても楽しく、また、同時にたくさんの学びをいただきました。この度はこのような貴重な機会をくださり、本当にありがとうございました。これからの村乃さんの創作の時間がより楽しく幸せなものになることを心よりお祈りしております。