奇妙で愛らしい「神」と「人」の日常が、こんなにも愛おしいなんて!

 炊飯器から飛び出してきた狐耳のポンコツ神様・コンと、平凡な大学生・紳人の奇妙な同居生活。最初はドタバタ劇に思えた物語が、読み進めるうちにじわりと心を包み込むような温かさと深みを持ち始めます。コンの無邪気さに振り回されつつも、彼女の存在が紳人の孤独な日常を癒していく描写がなんとも愛おしい。

 一方で、鳥伊と彼女に寄り添う神様・トコノメの物語が物語全体に切なさを添え、神と人間の関係性の儚さが静かに描かれていきます。「神様って万能ではないんだ」と気づく瞬間、登場人物たちの葛藤がリアルに胸に迫り、人間と神様の絆がどこか現実味を帯びたものとして感じられるのです。

 紳人とコンが共に過ごす奇妙な日常には、何気ない場面にも神々しい温かさが宿っています。炊飯器から始まった奇妙な縁の行方に、読む者はきっと引き込まれることでしょう。その先の物語に秘められた「人間と神様の境界線」、あなたも覗いてみませんか?

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