かげぼうし

船越麻央

ある晴れた日に

「ママー、こわいよう! おいかけてくるっ!」


 男の子はお母さんに助けを求めていました。


「どこまでもついてくる! こわいよう!」


 男の子は地面にうつる自分の影から逃げまわっていました。


「だいじょうぶよ」


 お母さんは男の子に優しく言いました。


「その子とジャンケンしてごらん」


「ジャンケンポン、ジャンケンポン」


 男の子はお母さんに言われた通りに影とジャンケンをしました。


「ジャンケンポン、あいこでしょっ、ジャンケンポン、あいこでしょっ」


 男の子と影とのジャンケンは、いつまでたっても勝負がつきません。


 ところが……不思議なことが起きました。


 男の子がグーを出すと、影がパーを出し、


 男の子がチョキを出すと、影がグーを出し、

 

 男の子がパーを出すと、影がチョキを出し、


 とうとう男の子は泣き出してしまいました。


 そして男の子の影は、地面の上をどこかに走り去って行きました。


 男の子もいつの間にか消えていました。


 あるよく晴れた日の公園での出来事です……。




 

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かげぼうし 船越麻央 @funakoshimao

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