貞操逆転の世界に転生したのでビッチを目指すこととする
一般異常性癖者
ビッチのための下準備編
第1話 ビッチの卵と貞操逆転世界
性癖と言う言葉を、現代に生きていれば何度も耳にするだろう。それは性に対する嗜好。個性と言ってもいいだろう。
ライトなもので言うとピクトフィリア、所謂実写のコンテンツに性的興奮を覚えるものや、足フェチなどの身体の一部分に対してのフェチが挙げられる。
そしてハードなものと言えばネクロフィリア、つまり死体嗜好や食べられフェチ、所謂カニバリズムと言われる人食性癖の反対に位置するものまである。
話は変わるが、俺は転生した。こいつは何を言っているんだと思われそうだが、それでも俺は転生したのだ。美少年というオマケ付きで。
事の発端は…なんだっけ? まぁ、忘れたからどうでもいいが兎に角俺は一度死んでしまった。そして気が付くとこの世界に転生していたのだ。
俺が今いる世界は貞操逆転ものと言われるような世界である。男女の貞操観念が逆転し、女は性に奔放で男はお淑やかになった。俺が嗜んでいた小説では男女比が変わっているものもあったが、この世界は無事1:1のようだ。
そして男は女を嫌っている確率が高い。この為女の約半分は
そこで俺は思いついた。この案が出てきたとき、俺は自分の事を間違いなく天才だと思った。――『前の世界の性癖を男女逆転にしてやってみたらモテるんじゃね?』
そう、俺はビッチを目指すことがあの幼き日に確定したのだ。
「凪斗くん、今日のご飯はカレーよ」
そう呼ぶのは俺の母、晴香である。母はまだ35で、見た目はとても若々しく見え、20代だと言われても全く疑わないレベルだ。俺こと
性に目覚め、自己を確立した後にこそ本当のシチュエーションができるものだ。幼い頃から唆してやるシチュエーションなど、洗脳に近いではないか。――あれ、それもありだな。
話は逸れたがつまり前世に置き換えると高校の舞台でビッチに豹変する女子高生。
…いい! ものすごぉくいい! 俺が夢見るビッチ像に確実に近づいている!
「私も手伝ったんだ兄さん、だから食べてくれると嬉しいな…!」
今喋っているのは俺の妹、小雪だ。小雪は俺の一個下の15歳である。小雪は所謂王子様系というやつで、同級生の女の子にかなりモテているらしい。
「うん、小雪と母さんが作ったカレーは美味しくいただくね。いつもありがと」
「天使よ!!! 凪斗くんは神が遣わした天使よ!!!!」
いつも母さんは大袈裟だ。だからよくこうして俺たちを笑わせてくれる。
「んん…おはよう…」
夕飯時に起きてくる存在など一人しかいない。姉の時雨だ。姉は世間一般でオタクと言われる人種。大学2年生でもうすでに単位を取り終えてしまったらしいのでずっと自堕落な生活を送っている。
「姉さん、ちゃんと朝に起きないとダメだよ?」
「ごめんね凪斗、ダメなお姉ちゃんで…」
姉は少々ネガティブ寄りの思考をしていて、たまに反応に困ってしまう時がある。
その後は皆で夕食を食べ終え、何事もなく1日が過ぎた。そして少し月日が経ったある日、俺はついに高校生になった。
俺が進学したのは偏差値78の超エリート校、
まぁ、ここを選んだ理由は家が近いからなんだけど…それはオフレコでお願いしますね。
なんてラノベ主人公みたいな語りをしてると、登校する時間がぎりぎりになっていることに気が付いた。俺は慌てて家を出る。
「怜ー! ごめんね、ちょっと制服を着るのに手間取っちゃって」
「全然大丈夫よ。…っ凪斗!? なんて恰好してるの!?」
この子は俺の幼馴染、氷室怜だ。怜はクール系美人というやつで、いつも冷静なのだが…。
「え? …ああ、ちょっと急いでたからね。でも怜の前だけだし、良いでしょ?」
「良くないに決まってるでしょう。貴方、馬鹿なんですか?」
あんたバカァ? と言われ、ちょっと落ち込んでいると続けて怜はこう言った。
「そんなに落ち込まないでください。私はただ貴方に傷ついてほしくないだけなんです」
「ふふ、ありがとね怜」
そう言うと怜の顔は明るくなり、俺に微笑んでくれた。
「怜、同じクラスだといいねー」
「そうですね…」
なんて思いは打ち砕かれ、俺と怜は別々のクラスとなった。
「僕が1組で怜は3組かー…。はは、別々になっちゃったね…」
補足しておくが、俺は対外的にお淑やかに見られているため口に出す際の一人称は僕だ。だがやはり転生しても性格までは変わらず、心の中では俺俺とオレオレ詐欺のように連呼しているのである。
「まぁ仲がいい生徒はクラスを離すってよくある話ですものね…」
「そうだねー」
なんて会話をしながら、俺と怜は教室に向かった。
「じゃあ僕はここだから。また後でね」
「ええ。頑張ってくださいね」
そう言って俺たちは別れ、俺は教室のドアを開けた。
「うっわ、あれ見ろよ。すっげぇ清楚」
「ああいう男ほど堕とすとえろいんだよなー」
「なに言ってんだよお前! ガハハハッ」
この世界の女子と言うのは、これが半分程なのだ。つまり単純計算で全世界の1/4がこういう会話をしているということになる。
「あの女子たちサイテーじゃない?」
「ホントね。あの男の子可哀そうだし僕たちで守ってあげない?」
「そうしよっか」
この世界の男子は団結力が高く、何をするのにも一緒と言うのが一定数いる。まぁそれが犯罪防止になるのならそれでいいと思うよ。
その後、その男子たちと会話したが特に面白い会話はなかった。どこどこのカフェがどうとか、スキンケアがどうとか。正直言ってつまらないものだった。
自分は人に合わせる演技と言うのも人一倍できるようで、完全に清楚を演じきれた。ジョブチェンジするのはいつにしようか、なんて考えていると初登校日は直ぐに終わり、下校した。
「そうだ、裏垢やろう」
唐突になにを言ってるんだと思うかもしれないが、俺の座右の銘は『思い立ったが吉日』なのだ。それに理由もきちんとある。
俺の理想のビッチ像を思い描いた時、何かが足りないと思っていた。決定的な何かが。―――そう、それが裏垢だ。
裏垢はいい。男の子で裏垢を持っているのはごく一部なんてものじゃない。もはや1人いるかどうかといったところだ。つまりある程度の知名度確保は確定。
そこから身バレしてビッチバレするのだ! 普段は清楚な○○くんが…みたいな?
そう思ってから俺の行動は早かった。まず
そして初投稿の写真だ。このインパクトがかなり重要になってくる。まず肌色が出る写真なのは確定だ。つまり裸or際どい服となる。だが俺は際どい服など持ち合わせていない。
…よし、裸だな。それならシャワーを浴びて出てきたところを撮る感じにしよう。うちの脱衣所の壁白色で助かったなぁ…。
その後、俺は無事にシャワーを浴び、乳首を腕と手で隠したギリ下半身が見えない写真を撮った。
「よし、後はこれを…うーん、なんて文字で投稿しようか…。『初投稿です!』なんてのはつまらないし、無言ってのもなぁ…」
そう悩みながらお茶を飲んでいると、俺に一つの案が舞い降りてきた。
「そうだ! 『…もう! 覗かないでって言ったよね!?』よし、これだな」
俺は即座にそう打ち込み投稿した後、眠くなったので横になった。
反応きてると―いい―な――。
▽
四月上旬、新生活や新しい環境が始まる人も多いだろう。そんな中、ある界隈に爆弾が投下された。
『もう! 覗かないでって言ったよね!?』
そんなタイトルとともに添えられた肌色の爆弾。その投稿を目にした女は脳がショートし、自慰行為をする以外の行動がとれなくなった。
そしてほとぼりが冷めると一人、また一人とフォローといいねを押していく。
当の本人である天辻凪斗はそんなことはつゆ知らず、すやすやと寝ている。
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