一人目・ビッチの羽化編

第5話 最終決定と一人目

 搾精を終えた日の夜、俺こと天辻凪斗は思考に没頭していた。――リストが完成したのではないか、と。


 一人目、黒髪ロングでクール系幼馴染の氷室怜。怜は昔からの知り合いだし、押せばイケるタイプなのはわかりきっている。

 二人目、赤髪ヤンキー娘の赤尾恋。まだ未知数なところはあるも、恐らくは忠犬気質のある実は優しい子だ。

 三人目、茶髪ポニテで彼氏持ち先輩の篠崎未栗。この人はチョロい。

 四人目、濃い紫髪をハーフアップにした真面目そうな教師の峰山勝子。この世界での結婚適齢期は25歳らしく、それを過ぎている28歳のため相手が俺なら喜んで食いつくだろう。

 五人目、緑髪サイドテールのえっちなお姉さんこと緑麻咲。結婚適齢期が終わりかけの25歳なため、この人も俺に食いついてくると思う。

 そして六、七、八人目は母の晴香、姉の時雨、妹の小雪だ。三人は後回しにして、俺がビッチになる様を見てどんな反応をするかが楽しみだ。


「こんなところか…」


 俺は自室で一人呟く。これから俺はビッチになり、迫りくる痴女たちから自衛もしながら周りの人の性癖を捻じ曲げなければならない。そのためにするプレイは…。


「あ、裏垢更新しないと」


 ふと思い出し、俺は先ほど届いた衣装に着替える。その衣装は所謂チアガールが着る衣装。あ、ちゃんとポンポンも付いてるよ。あれがないとチアじゃないからね!


 そして俺は着替えた後、写真を撮り『がんばれがんばれ♡』という文字で投稿した。

<結婚しよ>

<もっと私のオナニー応援して♡>

<潮ぶっかけたい>

<その服ください 別に変なことには使わないけど>


 ちらっと眼に入った反応はこんなものだった。みんな飢えてるねぇ。


 なんて思っていると、俺のスマホに一つのメールが届いた。


『これをバラされたくなかったら明日の放課後中庭に来い』


 そんなメールと共に添付された画像を見てみると、俺の学校での様子が隠し撮りされた写真と裏垢のスクリーンショットだった。


「うーん…なにされるんだろ……うへへ」


 前世に置き換えたら裏垢がバレたJKが中庭に呼ばれるってことだ。それどこの同人誌? って感じだな。


 そんなことは置いておいて、これを送ってきた人物を警戒しないといけない。俺はあくまでビッチになりたいのであって、誰か特定の性処理道具になるつもりはない。

 俺のことを遠くから見て気づくか…? 可能性があるとするなら距離が近い、或いは会話したことのある人物ということになる。


 つまりもしかしたらこのリスト入りした面子の中に犯人はいるかもしれない…。

 怜はそんなことしないタイプだ。そして緑麻さんもこんな回りくどいことしなくても合法的にえっちなことができるから除外。

 そして家族なら学校にいるときの写真は撮れない。なら容疑者は赤尾、篠崎先輩、峰山先生の三人になる。

 この中で可能性が高いのは赤尾と峰山先生だ。その理由としては篠崎先輩がリスクを冒す人じゃないからだ。付き合いはまだ浅いが人を見る目はあると自負している。


 赤尾が俺と距離を詰めたくて変な行動に出たか、峰山先生が結婚を本気で焦ったかの二択かな…。



「うーん…」

「どうしたんですか凪斗、何か悩み事でも?」

「あー…。いや、大したことじゃないんだけどね、今日の放課後は僕一人で帰るよ」

「あら、今日は部活が休みの日じゃなかったかしら?」


 俺が登校する際に怜と話していると、不機嫌そうにそう言われた。


「…もしかして一緒に帰りたかった?」

「っ!? べべべべつにそんなこちょごじゃいましぇんよ!!」


 分かり易いな…。


 その後なんとか機嫌を直してもらい、放課後になると俺は中庭へ向かった。


「さて、誰がいるかな…?」

「き、来たな…!」


 そこには赤い髪を靡かせた赤尾が腕を組んで仁王立ちしていた。


「赤尾さん…? なんでここにいるの?」


 もちろん俺はすっとぼける。


「ふふふ…それはな、俺がお前を脅した張本人だからだ!!」

「なな、なんだってー」


 なんか赤尾が変なスイッチ入ってるけど、本人は楽しそうだしまぁいっか。


「これをバラされたくなかったら俺の言うことは素直に聞くんだな」


 そう言う赤尾の手には俺の裏垢のスクリーンショットが。もちろん無理やり取り返してスクリーンショットを消すことだってできるが、そんなことをしては面白くない。だから俺が取る選択肢は…。


「ふぇぇ…痛いことしないでぇ…ぐすっ……うえっ」


 嘘泣き!!!


「だだだ大丈夫だ!! 確かセックスって男側は痛くないらしいし…」


 ボソッと言ったが聞こえてるぞ、がっつりヤる気じゃねぇか。


「僕に何させる気なの…?」

「何もさせないぞ! 俺が全部やってやるから安心しろ」


 このまま喰われるのも吝かではないが、少し面白味に欠ける。ならばここで俺がこう立ち回れば…。


「…もしかして赤尾さん、僕とえっちなことしたいの?」

「っ!?!? …あ、ああそうだぞ。お前には少し辛い思いをしてもらうことになるけどな」

「なんだ、それじゃあそう言ってよ。じゃあ早速シよっか」


 俺は赤尾の手を引きながらそう蠱惑的に微笑むと、少しにやけた赤尾の顔が目に入った。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 そいつはとても可愛らしい見た目をして、すごくフレンドリーなやつだった――


 俺は赤尾恋。性に飢えるしがない女子高生。そして今は少し前に出会った不思議なやつのことを思い出していた。


「本当にアレと同じ男か?」


 なんて言う俺の視線の先には、クラスの男連中がいる。アイツらはお淑やかで清楚で、みたいに言うがそれとは真逆のねちっこい嫌がらせだったり文句ばっかりだ。


 俺が少しため息をついた後、ポケットから小さくちぎられたメモを取り出した。これは天辻凪斗、俺が少しだけ気になっている奴の連絡先が書かれたメモだ。

 アイツは俺が間接キスで浮かれている間にどっか行っちまったみたいで、このメモ一つ残して行った。


「さすがに連絡する勇気もないし……はぁ…」


 そう言い、メモをしまった後スマホを取り出しTeitterテイッターを開く。そしてたまたまタイムラインに流れてきた一枚の写真を目にする。

 それはほとんど布地がないような下着が濡れて胸にピッチリとくっついたスケベな自撮りだった。


 えっっっっっっっろ。思わず鼻血噴き出すところだった。


「アカウント名は…かーむ、凪か…。いや、まさかな」


 その日はそれで終わったが、それが真実だと知るのはそう遅くなかった。


 俺はとある日、天辻がバスケ部にマネージャーとして入ったと聞いた。やっぱり普通の男とは全然違うな、なんて思っていた。

 そしてその日の夜、かーむのアカウントにまた投稿があった。その写真はチア衣装で誘惑するように踊っているような写真だった。えろい。


「バスケ部、応援…。かーむ…一か八かやるか?」


 もし外れていたら通報されてお先真っ暗。逆に俺の予想が当たっていたなら天辻に言うことを聞かすことができる。えろいことできる…うへへ…。

 よし、やろう!!


「これをバラされたくなかったら明日の放課後中庭に来い、と」


 俺はメールを5回確認した後、送信ボタンを押した。


 上手くいけばえろいことして―――


『恋ちゃん…きもちいいよぉ…』

『もっと欲しがっていいんだぜ?』

『恋ちゃんすきぃ…』

『俺も好きだぜ…ちゅっ』


――こうなるはずだったのに。


「はぁ…はぁ…あまちゅじ……もっと…」

「もう、欲しがりさんだなぁ」

「しゅき…あまちゅじしゅき…」


 あれ?


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