第3話 部活と奉仕(健全)

 朝起き、Teitterテイッターを確認するとフォロワーは2万人になっていた。なんだか1日1万人増えていっているのは気のせいかな…?


「あ、今日から部活の勧誘ができるようになるのか」


 そう、今日まで新入生に対する部活の勧誘は禁止されていた。なんでも入学したてで友人が作れていない男を集団で無理やり入部させた事件があり、全国で一定の期間、部活勧誘禁止の校則を設けよという法律が作られた。


「兄さんは何か部活に入る気はあるの?」

「んー…。今のところはないかなぁ。一覧表を見たけど特別惹かれる部はなかったし」

「それがいいよ。体育会系の薄汚い部員や顧問に囲まれたりした日には…兄さんはもう…」


 小雪…? なんだか少し嬉しそうにしてるけど? 小雪さん…?


 俺はその後、怖くなったので逃げるように家を出た。



「君! バレー部に入らないかい?」

「サッカー部に入ってよ!」

「料理部どうですかー?」


 校門をくぐると、こんな声が聞こえてくる。大変だなぁ、なんて他人事のように考えていると、俺も声をかけられた。


「ねぇ、君新入生だよね? バスケ部興味ない?」


 俺に声をかけてきたのは茶髪でポニーテールにしている先輩。大きいから3年生かな…?


「えっと、部活にはあまり興味がなくて…」


 俺が断ろうとしたとき、そいつは現れた―――


「おい未栗! なんで男なんか勧誘してるんだよ!」


 某猫型ロボットが出てくる作品の髪が前に突き出してる人みたいな容姿をした男子。なんだこいつは、と思い少し話を聞いているとどうやらこの男はこの先輩の彼氏らしい。なにがどうなったらコイツと付き合うんだよ。かなりの美人だぞ。


 男の価値様様だな、なんて思いその場を去ろうとした瞬間、俺に電流走る――!


 あれ、これ…NTRチャンスなんじゃね…?


「無理に勧誘しようとしてごめんね、じゃあ――」

「入りたいです!」

「え?」

「僕バスケ部に入ります!」


 先輩は少し呆けた後、急いで入部届を渡してきた。…別に俺は逃げないけどな?


「な、なんで入ってくれる気になったの?」

「んー…秘密ですっ!」


 俺のあざと仕草其の捌・ウインク&口に指当て!! これを喰らった相手は思わずにやけてしまうぞ!!


「そ、そっか…。秘密なら仕方ないよね…!」


 計画通り…!! 先輩はにやけて、俺の雑な濁しを気にもしなかった。かわいいは正義なのだよ。ハッハッハ!!


「部活って今日ありますか?」

「うん! 今日の放課後、体育館に来てね。その時に予定表も配るから」


 そう言われたので、俺は先輩と挨拶した後教室に向かった。



「それじゃあ新入生左から順に自己紹介して!」


 体育館に入ろうとした時、そう言っているのが聞こえた。怜に部活に入ることを伝えに行ったら色々心配されて遅くなっちゃったよ…。


「ごめんなさい! 遅れました!」


 俺がそう言うと、先輩方も新入生も皆呆けている。


「だから言っただろ? 男の子が入部してくれたって!」

「ホントの事だとは思わんだろ…」

「あの…?」


 その後説明してくれたのだが、どうやら皆男の入部を先輩の嘘だと思っていたらしい。男ならさっきの某猫型((以下略))がいると思ったのだが、あれは先輩が彼氏をマネとして入部させたかったからお願いしただけで、当の本人はほとんど仕事もしていないらしい。

 この世界の男は傲慢なのが半分、お淑やかで排他的なのが半分と言ったところだ。俺は世界の何%に当たるのだろうか…。


「じゃあ僕が頑張ってマネージャーの仕事いっぱいしますね!」

「お、おう! だが無理はするなよ」


 部長さんは不器用だが優しい人に思えた。


「じゃあ自己紹介再開だ! はい、左から順に!」


 そう言って自己紹介が始まる。新入生は皆彼氏募集中と言いこちらをチラチラと見てくる。かわいいかよ。


「僕の名前は天辻凪斗です! 好きなものは牛乳で、趣味は写真を撮ることです! これからマネージャーの仕事頑張ります!」


 当たり障りのない自己紹介だが、男ならこれでもコミュ力がある方に分類される。


「じゃあ篠崎しのさき、マネの仕事教えてやってくれ」

「わかりました部長」


 そう言って近づいてくるのは俺を勧誘した某猫型((以下略))と付き合っている先輩。苗字は篠崎って言うのか…。


「篠崎先輩、よろしくお願いします!」

「先輩呼び…! 私の名前は篠崎未栗みくり!よろしくね、天辻君」


 そんな自己紹介の後、仕事を色々教えてもらった。バスケットシューズを拭くための雑巾を幾つか準備することだったり、モップ掛けや部室の整理。

 俺はちょっと意地悪をしたくなったので、こんなことを聞いてみる。


「篠崎先輩、選手に対するサポートとかってしたほうがいいですかね? 例えばマッサージとか…」

「ままま、マッサージ!? 天辻君が嫌じゃないなら大丈夫だと思うけど、無理はしちゃダメだよ!?」


 篠崎先輩は目を白黒させながらそう言ってくる。やっぱりあの某猫型((以下略))は先輩と物理的な接触はしてないみたいだな。これならイケる。


「じゃあ先輩、レギュラーになっている選手は僕のマッサージを受けれるっていうのはどうでしょう? 練習に対するモチベーションにもなりますし、レギュラーだけなら僕も苦になりませんし!」


 そう言うと、先輩は許可してくれた。これからマッサージのこと色々勉強しないとな…。よし、怜に練習台になってもらおう。


「あ、顧問の先生来たよ! 挨拶しにいかないと」


 篠崎先輩がそう言い、皆が集まっているところに加わる。


「おお、今日から一年への勧誘が解禁されたんだったな。…って男!?」


 どうやら顧問の先生というのは、歴史の担当の峰山先生だった。


「そうか! 天辻がマネージャーになってくれたのか! いやぁ、何かと縁があるなぁ天辻!」


 そう言って峰山先生はジリジリと距離を詰めてくる。


「先生、そこまでにしないとセクハラになりますよ?」

「チッ……確かにそうだな。…ありがとう篠崎」


 峰山先生は物凄く惜しそうに俺との距離を少しだけ空けた。


「あ、そうだ先生。天辻くんが……で…をしてあげたいって言ってるんですけど…大丈夫ですか?」

「ままままマッサージだと!? ……わ、私にもしてくれるなら許可する」


 他のバスケ部員が良くわからないまま困惑していると、篠崎先輩がこう言った。


「これからレギュラーには、マネである天辻君のマッサージ特典が付きます! レギュラーは2週間に1回マッサージを受けれるので天辻君のスケジュールと要相談です!」


 そう言うと、他のバスケ部員は大騒ぎになる。確かに、前の世界で考えたらむさくるしい男しかいない部活にかわいい女の子が入ってきて、しかもレギュラーにはマッサージだもんな…。こうなるのも無理はないか。


「よし、他に連絡事項はあるか? …ないようだな。それじゃあ練習開始!」


 峰山先生がそう言って練習が始まった。



「お疲れ様、天辻君」

「あ、お疲れ様です篠崎先輩」


 練習が終わった後、俺は篠崎先輩に話しかけられた。


「篠崎先輩も他の先輩方も、すごく上手かったです!」

「あはは、ありがと」


 実際、篠崎先輩は他の先輩方よりも頭一つ抜けて上手かった。マジでどうして美人で運動神経良くて礼儀正しい先輩がなんで某猫型((以下略))と付き合ってるんだよ…。


「…天辻君はさ、女の人に対してどう思ってる?」

「…うーん…。人によるとしか言えないですね…。犯罪を犯す人はいけないと思いますし、逆に真っ当に生きてる人は凄く偉いと思います」


 そんなこと一ミリも思ってません。かわいければオッケーだと思ってます。


「……やっぱり、天辻君は優しい人だね」

「僕は普通ですよ」


 外面がプラスでも心の中がマイナスなのでプラマイゼロになるんだなぁこれが。


「普通ならマネージャーなんてやらないよ。ちゃんとマネージャーやる男の子なんて、そのスポーツが大好きな人だけ。でも天辻君はバスケ大好きって訳じゃないでしょ? だから凄いの」


 心の中でマイナスなこと思ってるのが罪悪感を感じる…。いや、俺は生粋のむっつりスケベ、心の中には常にスケベを!!! 俺は絶対に負けないぞ!!

 ていうか先輩あの某猫型((以下略))の事で悩んでるっぽいな。まぁあれと比べたら今の俺は超優良物件だもんなぁ…。フッ…全く、男の娘は辛いぜ…。


「あ、の…。そんなに褒められると…恥ずかしい……です…」


 喰らえ! 俺の上目遣い+赤面コンボ!! これを喰らった相手は俺に恋をする!


「ッ!! ごっごめんね…恥ずかしかったよね…あはは」


 篠崎先輩も赤面している。こうかはばつぐんだ! ってやつだな。


 その後、少し話して今日は帰ることになった。帰ったらマッサージについて色々調べないとなぁ…。


「あ、今日の裏垢どうしよ」


 本日の裏垢、俺が何も考えていなかったため無し。

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