電子の海で、不運(ハードラック)と円舞曲(ワルツ)を

 サイバーパンクや仮想現実には魔法やファンタジーとは違い科学技術の行き着く先の世界観である。
 そこにはしっかりとした理屈があり、曖昧さを晒せばたちまちSFとしての質が下がってしまう。とはいえ、長ったらしく説明を入れれば読者は読む気を無くしてしまうだろう。読む側は設定を知りたいのではなく、その世界における主人公やヒロインの行動や心の機微に注目しているからだ。
 その点、記憶喪失という状態は読者と主人公が同じ目線でものを見ることが出来るため世界観を説明させやすく、文章としても説明を分散させていたため、読んでいて飽きが来なかった。

 ゲームタイトルや、アビリティの名称が洒落ていてとても良かった。