記憶喪失の主人公が挑むのは『パンドラ・ゲーム』という勝てば願う希望が得られ、負ければ勝者の希望を叶える義務が課せられる、自身を掛け金に己が希望を手にする夢のゲーム。サイバーパンク漂う世界が抱える秘密と謎。数々の不運に苛まれる主人公がゲームの果てに手にする希望とは。
独特な設定の見せ方と説明の塩梅がほどよく、読み進めていくうちに段々と物語の世界観と世界の常識を理解できる構造が、主人公の記憶喪失という状況とリンクするようで高い没入感があります。
そこへ登場する固有用語のカッコよさと各キャラクターの奇抜さ、コミカルでテンポの良いセリフ回しが合わさることで、SF的な舞台設定が作り出すふわりとした高揚感に振り回されつつも、物語の難解さに流されることなく読み進めることができました。
特に主人公のパートナー的な存在であるツキウサギの人物描写や大人らしさと子どもらしさを持つ、二面性のある性格など。登場時のインパクトや存在自体が物語の根幹に関わっていそうなミステリアスさ、描写を追っていると自然に姿を想像してしまうような華やかさ。どこをとっても非常に惹きつけられるキャラクターです。
独自のルールで展開されるゲームパートの緊張感と日常パートのコミカルさ。サイバーパンクというワクワクする世界を舞台にして描かれる、希望を叶えるための物語を是非、お楽しみください!
素晴らしい作品をありがとうございました。