芹那はそれから自宅の脱衣所を出た
ようやく洗面所から出れた。……長い髪乾かすのって地味に面倒。夜は久樹いないからな……。いや、ずっと一緒にいられてもウザいけど。
――部屋に戻り、スマホのランプの点滅に気付く。
通知……『かもめがスタンプを送信しました』? あ、
『今日はお疲れさまでした。そして、改めて退院おめでとう!』
『かき氷、おいしそうに食べてくれて良かったです!』
『あと、私がプールに沈んじゃったとき、助けようとしてくれたよね。ありがとう!』
『プリントのこともそうだけど、丁字くんの自然な正義感ってすごく素敵だと思います。』
『ふつつか者ですが、これからも仲良くしてくれたら嬉しいです!』
『それと、今日撮らせてもらった写真をアルバムに共有しておきます。』
『長々とごめんね。おやすみなさい!』
――と、最後になんかのキャラクターが寝てるスタンプ。
「……写真とか別にいいんだけど」
自分の姿なんて見たくもないし残したくもない。……今は特に。
――ベッドに寝そべりながら、アルバムを開いてみる。どの写真にも写っているのは、いまだに慣れない自分の姿。
『丁字芹那』は一度死んだ。……そのまま死にたかった。性別変化の『前兆』に身体が耐えられなくて亡くなる人、俺はそれになれなかった。臆病者が命を落とせるまたとないチャンスを俺は棒に振ったんだ。
――憂鬱、その単語がいつも通り浮かんでくる。
「あー、なんで俺生きてんだろ……」
生きてる以上は世界の残酷さを受け入れて、あきらめて、生きてくしかない。
……辛い。苦しい。悲しい。嫌だ。でも希望なんて持ちたくない。光は影を濃くするから。
「はあ……」
現実逃避しよう。数独するか、予習しとくか、ライダーの模写するか――。
「………………」
◆
「お? 通知通知ー……っと、あ!」
芹那からだ! しかも『画像を送信しました』。珍しい、アンド嬉しい。なんの画像だろう? うーん…………荷物になんかオレの持ち物混ざっちゃってたり……? あ、もしかして描いた絵見せてくれたりとか? これは期待が高まります。
「よーし……いざ、オープン…………――――っ!!?」
◆
――着信。案の定、久樹から。
「反応遅かったな」
『おっ……オアッ…………っ……せッ……!』
顔色ぐるぐる変えながら喋ってんだろうなコイツ。
「オマエ、俺に気ぃ使って写真撮ってなかっただろ。おすそ分け」
『っ…………だっ、だかっ…………みずッ……!』
「水着くらいで騒ぐなよドーテー。今日散々見てただろ。ていうかフツーに
自分でも自分と信じられないくらいの水も滴る美少女ショットだけど。
『〜〜〜〜〜ッ、だめ、削除っ……』
「何と戦ってんだよお前は……。消したらまた送るから。来週の朝ちゃんと写真フォルダ見せろよな、約束だから」
『なっ……ちょ、せり――』
――通話終了。
「……暇つぶしにはなったかな」
(自称)親友くんはツンデレTSっ娘を可愛がりたい! らと @meganecat
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