109 式当日

 会場に前日までに来たすべての招待客が会場に入り準備が整うと、神父に連れられて大広間に入り、絨毯の上を進んで一段高くなった壇上向かう。

 祭壇を挟んで向き合うと神父がまず祈りの言葉を朗々ろうろうと歌い上げ初め、軽くこうべを垂れて聞き入れる。

 神父が豪奢ごうしゃな本を開き、長々と祈りの言葉を歌い上げる様に読み上げると視界の端で俺と契約しているノームがピカピカとまたたいていた。

 ドライアドとシルフは式にはあまり興味が無い様子だったが、何匹かの初級精霊が現れノームと一緒に点滅し初めた。

 視界外がどうなっているのか分からないが回りがざわつき初め、街中では精霊を見る事がほとんど無い事を思い出す。


「大地を育む精霊達に見守られ今日ここに新たな夫婦が誕生しました。皆様拍手で歓迎をお願いします。」


 神父が読んでいた本の内容はよくある世界の成り立ちを説明し、神や精霊への感謝を歌に乗せて読み上げ、最後に新しい夫婦への祝福を願う事でしめられていた。

 神父の音頭による拍手で迎えられ祭壇から観客の方へと向き直り、神父が壇上を降りるのを確認して会場へ向けて挨拶を始める。


「皆様、本日は私達を祝福してくださりありがとうございます。皆様のおかげでこうして婚姻する事が出来ました。遠路遥々えんろはるばる集まって下さった礼として珍しい料理を用意させて頂きましたので是非ぜひお試し下さい。」


「精霊様方が訪れるという幸運にも恵まれ、皆様にもこころよく受け入れていただいた喜びを胸に。貴族の新たな一員として民を正しく導けるよう夫を手助けして行きたいと思います。」


 覚えて来た簡単な挨拶を終わらせて招待客に順番に挨拶をしていく。顔も見た事の無い相手にもかかわらず順番を間違えずに回る必要があり、立ち位置と衣装に入ってるワンポイントの紋章を見て招待客を回っていく。

 王都でのパーティならば招待していない高位の貴族を連れて来て困らせる嫌がらせも極稀ごくまれにあるらしいが、今回は近場のレオゲンとデクオンの領主以外は代理人なうえ人数も多く無いので助かった。

 これが王都でのパーティーだったり上位貴族が開催していれば何十人、何百人の貴族を招待しなければならない事を考えると恐ろしい。


「ショート殿、ヴェロニカおめでとう。」


「おめでとうございます。ヴェロニカとても素敵なドレスね。」


「ありがとうございます。なんとか準備が間に合いました。」


「お父様、お母様ありがとうございます。」


 ベイリアル男爵夫妻との挨拶が終わると男爵から質問が来た。


「ところであの様に多くの精霊が集まるなど見たことも聞いたことも無いぞ。いやまぁろくに精霊を見たことがないのだから当たり前ではあるが素晴らしい光景であった。」


「私は下を向いていたので視界の端に知らない精霊が来ていた事しか分からないのですが何があったのですか?」


「なんだ見ていなかったのか?それはもったいないことをしたな。数十の精霊が壇上に集まりそなたららを祝福する様に光瞬ひかり、またたいておったのだ。実に美しい光景であった。」


 ヴェロニカの方を向き目線で見たか聞いてみるが小さく首を横に振って返して来た。


「あの様に祝福していただいたのだもの貴方達の夫婦生活も安泰ね。さあ他の方達もお話したくて待ち切れない様子ですわ、挨拶回りを頑張っていらっしゃい。」


「ありがとうございます。食事も酒も良い物を取り揃えましたので残りの式もお楽しみください。それでは失礼いたします。」


 ベイリアル男爵夫妻は簡単に挨拶を済ませてくれたがこの後が大変だった。

 酒や料理のレシピを売ってくれだの、興奮気味に先程の光景の素晴らしさを長々と語られたり。精霊と契約させてくれだのと言われてたった十数人の挨拶に2時間もかけることになった。

 王都に屋敷を構えて社交シーズンになれば毎年これを開催し、さらに参加しなければいけないのだ。

 無理と分かっていてもパーティーなど二度と開かないぞと思いつつ、時間が経つごとに増していく憂鬱ゆううつさをこらえてなんとか式を終わらせた。


 精神的に疲れ切った身体を動かし式中に食べられなかった夕食を食べる。チラチラと視線を交わしながらも余り会話も弾まずに食事が進む。

 風呂に入って身を清めれば今度は両家の見届人の監視の中、初夜の儀を行わなくてはいけないのだ。

 人に見られながらなど毎晩の様にしているというのにいざとなると緊張するものだ。


 薄手の寝間着のままベッドに入り、痛みを取るために回復魔法を使い、吐き出した精を見届人に確認してもらうという羞恥プレイが終わると部屋には二人きりとなって今日の事や今後の事を話しながらお互いの身体を触り合う。

 日付はとうに変わり、朝が近くなる頃にようやく二人共に眠りに着いた。


 今後は領地の人口をさらに増やし、牧畜などの産業を行い発展させていけばいずれは子供も生まれて安定するだろう。

 国内だけでもまだまだ行った事の無い場所は多く、北の山脈の向こうや隣国など地図さえ見た事が無い場所も多い。

 だがもう命を失いかねない冒険を続ける事は背負う物が出来てしまった以上続けられないだろう。

 ドライアドとの約束があるから北の山脈を越える道は作るつもりだけど、ワイバーンでも飛び越えられない様な高い山を歩いて越えるのは大変だ。

 何が居るか分からないし向こう側に人が居て交易をする事を考えるとトンネルを開通させた方が安全だと思う。

 ダンジョンの方はレベルが上って余裕そうなら進めばいいだろう。

 RPGロールプレイングゲームのターンが終わりSLGシミュレーションゲームのターンが始まるがどちらも好きなジャンルなので楽しくプレイして生きていけるだろう。





ーーーーーーーーーー

しばらく間が空いてすみませんでした

パーティーの内容が書けなくて詰まり、会話が書けなくて詰まり、次のシナリオに繋がらなくて詰まり。もう諦めて完結させることにしました。

ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。作品をまた出す事がありましたらよろしくお願い致します

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

歩いてるだけでダンジョンを攻略したいニートの散歩 ガラゴス @qrim

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ