第3話 虎妖怪:三毛蔵……おまえは、なんてかわいいんだ!
「グゴォォォゴゴゴゴ!」
三毛蔵を食った虎妖怪は、五行山を揺さぶるほど大きくなり、力を増した妖怪となっていた。
「こ、こいつぅ! 美味く清らか(?)な三毛蔵坊主を食って、パワーアップしていやがる!」
なんども五行山を揺さぶられ、流石に気分を害する悟空がいた。
地響きが鳴り響き、五行山の岩がゴロゴロと少しづつつ崩れ落ちていく。
そんな中、ちょこまかと五行山に帰って来る小さな影、三毛蔵法師の姿が見えた。
その姿に悟空は度肝を抜かれる。
「生きてる!? よ、妖怪だぁあああああ!!!!」
死んだ人間が歩いてくるのを見て仰天する悟空。
「妖怪ではありません。三毛蔵です。生きてますよ、ほらほらほらほら!」
足を袈裟から出して、振りまくり、生存をアッピールする三毛蔵。
「ええい、妖怪法師! 何でもいい! さっさとこの札を剥がせ!」
「分かりました!」
ぺろりと三毛蔵が札を剥がすと、五行山が木っ端みじんにはじけ飛んだ。
「おい、そこの虎妖怪! さっきは良くもやってくれたな!」
如意棒を取り出し、虎妖怪に飛び掛かろうとする。
「いけません! 悟空!」
悟空を羽交い絞めにする三毛蔵法師。
ちょっとした力で殺してしまうのに怖くなり、悟空は力を弱める。
自身のあり余った力で、悟空はまたあの山の下敷きになるのは勘弁だった。
「なんだよ、邪魔するんじゃねえ!」
敵が大きな拳を振るって、二人にパンチする。
三毛蔵を抱えて筋斗雲を呼んで飛び乗る悟空。2、3回転、筋斗雲が翻り、敵の攻撃を避ける。
「非殺生です。戒律違反ですよ!」
はぁ~~~~?と大きな声を出す悟空。それはそうである。
「非殺生ぅ~~~~!? そんなこと言ってると、また食われちまうぞ!」
筋斗雲に三蔵を乗せ、旋回して如意棒を大きくして敵を討とうとする。
「たぁあああああああああああ!」
敵の虎妖怪、悟空が真正面から突っ込んでくるのを受け止めるように立ちはだかる。しかし、何が突然筋斗雲から落ちた。
「あぁあああああああああああ!」
なんと、三毛蔵法師が飛び降りたのである。叫ぶ悟空。
すかさず、下で待つ巨大な虎妖怪。
「猫を好きになれー!!」
三毛蔵法師、勢いつけて錫杖で虎妖怪の頭を打つ。
そのまま鼻の上にトスンと落ち、ぽいっと口の中に放り込まれた。
「み、三毛蔵……! 自分から喰われやがったぞ!?」
仰天する悟空。
人が自ら喰われるのを見て大ショックを受ける。
「猫を食ってしまったぁあ~~~~!!」
と突然、虎妖怪がしゃべりだし、おんおん泣きだしたではないか……!
舌をぺろりと出して、三毛蔵法師を取り出す。
三毛蔵法師はひょいひょい降りてきて、虎妖怪を撫でた。
「三毛蔵……おまえは、なんてかわいいんだ!」
「よいのです。よいのです。貴方も可愛いものを食らうのは辛いでしょう」
おいおい泣く虎妖怪に拍子抜けた悟空は、しゅるると筋斗雲で虎妖怪の前に降り立った。
三毛蔵法師は振り返って、柔らかにほほ笑んで悟空に説明した。
「この錫杖と袈裟は観恩猫様から授かった特別な品。錫杖で打てば猫を好きになってしまうのです。あなたも殺さなくて良かったですね? 悟空」
「はぁ……?」
意味不明な突然の解説に、目を点にし驚きを隠せない悟空。
ここにいる三毛蔵は妖怪かもしれない。もう一回、確認のために殺した方が良いかもと思う、まだまだ妖怪な悟空であった。
すぐ死ぬ三毛蔵ちゃん 春野 一輝 @harukazu
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