おばあちゃんち
3.14
おばあちゃんち
「これ、こたつで寝たら風邪引くがよ、」
あったかいおばあちゃんの声、僕は目をこすりながら返事をした。
目の前にはでっかい箱みたいなテレビ。その横には大きな人形が置かれている。僕はあんまり好きじゃないけど。ほかにもふすまっていうとびらには大きな山の絵が描いてあるんだ。おばあちゃんの家は僕の家と違って広くて色んな物があって木のいい匂いがするんだ。
そんなところが僕は大好き。
毎年夏休みとかお正月にお父さんとお母さんでよく来るんだ。でも今年はお父さん仕事が忙しいみたいで遅れて来るみたい。今日はちょうど12月の31日、おおみそかて言うらしいんだ。いつもならお父さんがさっさと僕を寝させようとするんだけど今日は居ない。今年こそ起きたまま年を越してみたいんだ。いつも寝てるからね。
「ほれ、お布団敷いたきはよ寝ぇなぁ」
まさかのこんなところにおばあちゃんという名の伏兵が…!
「いやいやおばあちゃん、今年は絶対寝ないんだよ!」
僕は反発するようにこたつの上にあるみかんをほうばった。
「ねー、ミケ太!」
『みゃあ』
こたつから顔を出した飼い猫のミケ太を優しく撫でた。
〈チックチック…チック…〉
11時50分、もうすぐ。
なんだか喉が渇いたなあ、
「ねぇ、おばちゃん、家の近くにある自販機に行ってきて良いー?」
「こんな夜危ないきいかんよぉ、」
「ねー、お願い…!すぐ近くじゃん、!」
「お母さん起こさんようにそっと行きなよ」
僕は貰った百円玉を握りしめ外へ走っていった。おばあちゃんが住んでるところは凄い自然が豊かで夏は川によく行くんだ。
さっきまで雨でも降っていたのかぴちゃぴちゃと音を立て走る。
「あっ、自販機だ!!…てあれ…?!」
またぽつぽつと雨は降り出した。地面に横たわる僕を横目に空からの水が僕の血を洗い流していく。
僕を轢いたであろうトラックはもう遥か遠くに。
置いていっただろう。
「おばあちゃんと年越したかったのに、、、なんだかまた眠たいや…」
川はまた一層強く流れはじめた。
おばあちゃんち 3.14 @3140905
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