皮肉と諦観の狭間、或いは許容可能な虚偽と改善不能な現実

不意に訪れた田舎の描写に
生々しいほどのリアルを感じつつ
何処かおぼろで虚ろな空気感

明確と曖昧の緩急が織りなす短文の集合体は
斬新な情感をもって物語を形作っていきます

この物語の主人公が抱えているものは
提示することができない類のものなのかもしれない

虚無を抱え、それでも自身の中に質量を伴ってあり続けるそれに
彼はいつまで向き合い続けるのだろう

手放したそれは、
果たして彼を解放する導になるのであろうか……

敢えて、楽になろうとは思わない
向き合い続けることだけが
幸せに似せた精神活動の燃料となり続ける

云うなれば
不幸を謳歌する

この言葉に、すべてが込められている