第13話
カーン,カーン,カンッ
ガラガラガラッ・・・
岩壁が崩れ,青色鉱石が剥がれ落ちる。
バツは転がっている青色鉱石を片手で拾い上げると,「ふぅっ」と一息ついた。
「これで4個目。・・・このペースを維持していけば,夕食までには何とか間にあうかな。怪しまれないように頑張らないと。」
「誰に怪しまれないように頑張るんだ?」
「どわぁッ!!?」
不意に後ろから声を掛けられ驚くバツ。後ろを振り向いて目を丸くする。
「・・・マル,どうして。」
「はぁー。・・・どうしてもこうしてもねぇだろ。」
カーンッ
マルは,バツの隣に来てつるはしを振るい始める。
「・・・スペクタから聞いたよ。まったく余計な気ぃ使いやがって。」
「・・・そっか。ごめんね,嘘ついて騙しちゃって・・・。」
カーン,カーン
「謝る必要はねぇよ。どうせあの嘘は,俺がストレスで気絶したって聞いたんで,余計なストレスを感じないで休んでほしいって思ったからついたんだろ?」
「・・・うん。気絶するほどのストレスが無意識のうちに溜まってたってことは,少なからず僕の責任もあるなって思ったから,マルにはゆっくり休んでほしかったんだ。」
「お前なぁ─」
カーンッ
ガラガラガラッ
岩壁が崩れる。
マルはつるはしの頭部を地面に付ける。
「・・・俺にとっちゃぁ,お前一人にきつい思いをさせちまう方がストレスなんだ。次からは一人で勝手にきめんじゃねぇぞ。」
「・・・ごめんね,マル。」
「だから謝るなって。・・・そういうときは,『ありがとう』だろ?」
今しがた崩れた岩壁の方に向き直り,そう言うマル。バツはその言葉に一瞬目を丸くした後,フッと軽く笑った。
「そうだね。・・・ありがとう,マル。」
「おう。・・・そんじゃ,一緒に掘ろうぜ!」
「うん,そうだね・・・!」
二人は同時につるはしを振り上げる。そして,
カーン
マルだけが振り下ろした。
「あれっ?」
「ごめんマル。今まで休憩なしでつるはし振るってて,流石に腕が限界だからちょっと休むね。」
「あっ,おうそうか。なんかごめんな。」
「いや,こちらこそ。変な感じにしちゃってごめん。」
つるはしを担いだバツは,すぐに向かい側の岩壁へと向かい,ドサッと座り込んだ。
「・・・。」
うん,切り替えよう。
カーン,カーン・・・
マルは再びつるはしを振るい始める。
(・・・あっ,そういえば,赤い鉱石)
「なぁバツ,ちょっと聞きたいことあるんだけど良いか?」
マルはふいに赤い鉱石のことを思い出し,バツに尋ねる。
「ん?なに?」
「いや,昨日気絶した時の話なんだけどよぉ。」
「うん。」
「あのとき,赤い鉱石を握ったまま気を失ったと思うんだけど,あの赤い鉱石はやっぱスペクタ達に回収されちまったのか?」
掘り進めながら,そんなことを聞くマル。
バツは,そんなマルの質問に首をかしげる。
「赤い鉱石?気絶するときに握ってたの?」
「ああ。今まで見たことのない鉱石だったからバツに見せようと思ってな。・・・その反応だと,分からない感じか?」
「うん。僕がマルの元に駆けつけた時は何も握ってなかったと思うよ。周りにも赤い鉱石らしきものはなかったと思う。・・・ただあのときは僕自身,マルが倒れててものすごく焦ってたから,見落としちゃってる可能性もなくはないかな。」
(見落とし,かぁ。)
カーン・・・
「・・・バツは,俺が倒れた時すぐに駆けつけてくれたのか?」
「うん。流石に異常事態だったからね。駆けつけて,何度かマルの名前を呼んで,意識がないってわかってすぐにスペクタさんを呼びにいった。」
「そうか。」
(それなら見落としてても不思議じゃないな。ってことは,知ってるとしたらサンカク達か。夕食の時にでも聞いてみるかな。)
「わかった。ありがとな,教えてくれて。」
「うん。一応後で僕の方からスペクタさん達やシカク達にも聞いてみようか?」
「いや,流石に俺が聞くからそこんところは気にしなくていいよ。」
「そっか,分かった。」
「あっ,それと今日の夜なんだけどさ。多分お前のこと起こしちゃうと思うから先に謝っとくわ。」
「へっ?なんで?」
「それはその時のお楽しみさ。」
「えー,なんか怖いなぁ。何か良からぬこと企んでるわけじゃないよねぇ?」
「良からぬことって・・・。」
(まぁ,良からぬことではあるのか。)
マルは心の中で「フッ」笑う。
「とりあえず,そういう腹積もりでいてくれたら助かるって話さ。」
「・・・へーい,よくわからないけど,わかったよ。」
カーン,カーン,カーン・・・
我,帰還せんとす。 トリニク @tori29daisuki
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