物語は、『総合調整局』という法では裁けない悪を裁く組織に所属する宮本と志水が、事件を解決していくという流れで進みます。
度胸と愛嬌と豪運の宮本と、冷静に状況を読んで的確に指示を出す上司の志水。
神谷は、俳優でありながら特殊な事情で組織と協力関係にあり、その圧倒的な演技力で事件解決を助けます。
読んでいただけるとわかるのですが、役割としてのキャラクターではなく、彼らが"生きている"と感じられるのです。
登場人物それぞれの過去や心の傷が、単なる設定ではなく、「彼らが今ここにいる理由」として自然に物語の中に息づいています。
そして、「彼らがなぜ今を生きているのか」という核心に関わってくる。
人が罪を犯し、それを裁くという行為の中に、正義と悪だけでは割り切れないものが存在します。
彼らは単なる正義の執行者ではなく、もっと曖昧で、もっと人間らしい葛藤を抱えた者たちです。
この三人の関係は、最初は「上司と部下」「外部の協力者」といった単純なものに見えます。
しかし、物語が進むにつれ、それぞれの関係性が絡み合い、影響を及ぼしながら変化していきます。
この物語を読んでいると、彼らの"これまで生きてきた時間"と、"いま生きている時間"、そして"これから生きていく時間"が、確かに存在していると感じられるのです。
この小説のもうひとつの魅力は、文章の在り方です。
重厚な描写や長々とした説明はありません。むしろ、軽やかで、すっと読めてしまう文章。
そのなにげないの言葉の中に、キャラクターの微細な変化や、息遣い、目線の動きまでが織り込まれています。
まるで、ただ彼らがそこに生きて動いているのを、さっと写し取ったようです。
ただのフィクションではなく、そこに生きている人間たちがいる。
そう思わせてくれる小説です。
ぜひ、多くの人に読んでほしいです。
唐突に始まるアクションがかっこいい……! 書き出しの掴みが完璧です。
人物の登場の仕方などから、ドラマや映画的な印象を受けました。
ユーモアセンスも洋画のようで、時折ある言葉選びや言い回しが笑みを誘います。
読んでいて、作者様の抜群のセンスに加え、相当な文章力の高さを感じました。
会話文が特に上手いです。一切の違和感も台詞感もなく、キャラクターが喋っています。
謎を追わせる展開も素晴らしく、宮本の疑問や分からないことがそのまま読者に回ってきます。宮本以上に考えているかもしれません。これはつまり、どういうことなんだろう……となったまま、序章と一章序盤があっという間に過ぎ去りました。
かと思えば、その先で待ち受ける展開は、またも読み手の感情を揺さぶります。
主要登場人物三人が通して魅力的で、まるで現実に生きているかのように感じられました。