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ねぇ、ダーリン。

もう眠ったかな? どんな夢を見ているかな。


今日はバレンタインのことを思い出したよ。

寝る前に少しだけ話したね。


17歳、不器用で料理もできない私が、「みんなに渡してるものだから」って口実で渡したバレンタインのお菓子。あくまで「みんなに渡してるもの」だから、特別であってはいけないの。


貴方みんなが喜びそうな袋を選んで、そして貴方にだけ1番出来のいい物を渡そうと思った。


その日、学校のみんなに配ってる最中は気が気じゃなかったよ。間違って貴方宛のものを渡してしまってないか。

小さなハートのマークがついた紺色の袋、みんなに渡すからって口実だけど…少しでも意識して欲しかったの。

小学生の頃あんなに小さかった私が、冴えなかっま私が、ちゃんと女の子になったんだって、わかってほしかったの。


午後20時半すぎ、塾終わり。

貴方に渡す為に急いで靴を履いてると、おしゃべり好きの塾長が話しかけてくる。

「最近どう?」とかそんな質問に対して、「すみません!急いでて!」って叫んで飛び出た。


向かった先はもちろん貴方の家。

途中の一通りの少ない道で、スカートを2回折りから3回折りにしたんだ。

だって女の子だもん。意識して欲しかったの。

色仕掛けするつもりはなかったけど、少しでもドキっとしてほしかったよ。


そしたら貴方ったら、「足が寒そう」「あまり見ないようにします」って、私の顔も見てくれなかったでしょ?

寂しかったんだから。媚びてると思われたくなかった私は渡してすぐ帰ったよね。


帰り道に聞いてた曲は「最後の恋煩い」

まさにその通りだったよ。

最後の恋煩いだよ、貴方が。

いや、ダーリン。


あの頃は貴方だけどね、今はダーリン。


4回目のバレンタインはさ、どう過ごす?

表情に出ないダーリンは喜んでるのかどうかわからないけどさ、今年はちょっと張り切ろうかな。


だいすきだよダーリン。

あなたの最初から最後まで全てが欲しい。

愛してるよ。

おやすみなさい。

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ねぇ、ダーリン ミマル @mimaru0408

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