足りない色を憶うとき

野上奏多は充実した毎日を送っている…そう思っていた。朝から夜まで仕事に全てを注ぎ込み自分の時間は食事をしている時と寝ている時だけで、まるで仕事をするためだけに生きている。不運な事が重なり、右足を怪我してしまう。その怪我をきっかけに奏多の生活が大きく変化していった。仕事の小さなミスから始まり、だんだんと人間関係や奏多自身の家庭環境にも問題が発生する。痛みに耐えながら仕事をしているせいか、怪我の具合も良くならない。さまざまの変化に心も体も崩れていく…真っ白だった心の中の画用紙はいつの間にか真っ黒に塗りつぶされるような感覚に襲われる。そんな中、一人の整形外科医の磯部先生と出会う。奏多は自分の心の画用紙に、どの色を使ってどんなものを描くのか。
奏多の自分自身の気持ちの変化や、受け入れ方などを様々な経…続きを読む