寓話の本能
葦沢かもめ
本文
寓話とは、しとしと降るものです。ざぁざぁでもバシャバシャでもなく、しとしと、しとしと、畦の土に滲み入るように降るのです。
私は旅行鞄を握って旅に出る時に母からそう教えられましたが、納得はしていませんでした。私は私らしい寓話として、ぶるんぶるん降りたいと、小さな時からずうっと考えていました。
ですから、道の向こうから荷車を引いた
だって、この男にしとしと寓話を降らせても、面白くないからです。「
私は、確率論が規定する探索空間から
私はぶるんぶるんと降りました。
するとどうでしょう。
ここが新しい探索空間なのでしょうか。私がそこに立ち止まり続ける限り私は私であり、旅に出ようと思い立って旅行鞄を握った時、私はすでに私ではないのでしょう。
ぶるんぶるんと降る私は、まだ旅行鞄を手放しておりません。
寓話の本能 葦沢かもめ @seagulloid
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