『藤の花の聖女とお付きの少年』

夢月みつき

第1話「聖女と少年」

 ◇登場人物紹介◇


 ラト 10歳

 聖女の側仕えの少年


 聖女エメラ=ファラス 16歳

 藤の花の聖女


 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。



 ぼくは藤の花の聖女、エメラ=ファラス様のお付きをしているラト。お仕えして3年。

 まだ、10歳の子供だけれど、今日も一生懸命ファラス様にお仕えします。

 深緑色の短髪と目の色、青いローブを纏い。今日も、聖女様の湯浴みのお手伝いをする。


【ラト】AIイメージイラスト

https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818023212862050795


 侍女じじょ達がファラス様のお召し物、白いドレスを脱がして、湯浴み用のローブを着せる。

 聖女は、男性に直接、肌を見せてはいけない、と言うのが。この国の掟だ。

 でも、なぜか、ぼくにはこうしてお見せになられている。子供だからかな?

 ぼくも男なのに。



 ファラス様は、藤色のロングヘア―と紫の綺麗な瞳をお持ちだ。

 年はまだ、お若く16歳でいらっしゃる。

 慈愛に満ちた彼女は、この国を聖なる力で支えられている。



 ファラス様が、浸かられる大浴場のお風呂には、藤の花の花びらが浮かべられていてその湯で身を清め、お仕事で消耗された聖女の力を回復されるんだ。

 ぼくは、ファラス様のお背中を洗ったあとに彼女に話しかけられた。

「ラト……湯浴みが終わったら、いつも通りにお勤めに出ますわ。藤色の法衣ほういを用意しておいて」

「はいっ、ファラス様!」


 ぼくが、ファラス様のお召しになる藤の花が描かれた法衣を持ってくると、侍女達が彼女を着替えさせた。


 使用人や神官が一斉にこうべれる。

「いってらっしゃいませ!聖女エメラ=ファラス様」

「行ってまいります」


『藤の花の聖女エメラ=ファラス』AIイメージイラスト

https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818023212862267362


 お付きの護衛の男性、侍女とそしてぼく、ラトを連れてファラス様は、祈りの間が設けられている町のある建物の中に入った。

 ここは、聖女と一部の者のみに許されている秘密の聖域せいいきだ。

 陽の光を取り込んで、きらきら煌めくステンドグラスの大きな窓、祈りの間に置かれている女神像の前にひざまずくと、ファラス様は両手を組んで祈りをささげた。


 すると、彼女の体が紫色に光り輝き、光の藤の花がファラス様の周りに咲き乱れた。

 その光は天窓まで勢いよく伸びて、放たれた光の花は国中に降り注いだ。

 この光の花は、視えない人には光を感じることも出来ない。



 ぼくは、視る力をファラス様に買われて、御傍に置かせていただいている。

 枯れた穀物や植物、水源、病気の人が潤ってゆく。

 人々は、ファラス様を崇め称えている。今日も、聖女様の御力でこの国も人も、栄えている。

 ぼくは、そんなファラス様にずっと、お仕え出来ることを誇りに想って、お慕いしているんだ。




 -終わり-



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 最後までお読みいただきありがとうございました。

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『藤の花の聖女とお付きの少年』 夢月みつき @ca8000k

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