第2話
「もう、こんなの嫌っす!もう魔族の仕業にして終わりにしません?!」
「そんなこというな、スターク。っていうか、そんなことしたら俺らの首飛ぶからやめてくれ」
騎士団の執務室でそんな物騒な方をつぶやくのは、俺の右腕ともよべる、スターク=シェイク副団長だ。
「最近騎士団の仕事で可愛い子とも会えてないですし、遊んでないんすよ?騎士団は俺を殺す気っすか?」
「しらん、この国の中で俺が一番部下を大切にしてる自信はあるが、流石に部下の女好きまでは相談できかねる」
そういって俺は部下から送られてきた、調査報告を確認していく。
「…なんだ、その目と殺気は」
「いえ、好きな人がいても碌に話もできず避けられる俺よりも、日常的に会って、楽しそうに話してる先輩が羨ましいなと…」
「んなッ!?」
俺はスタークの発した一言のせいで机に置いてあった書類を全て落としてしまった。
「あ、落としたっすよ。書類」
「誰のせいだと思ってる…」
「全く、冗談が通じないんだから。そんなんだから、意中の相手となかなか進展しないんすよ。俺みたく柔くなりましょうよ」
「お前は柔らかすぎ。その節操のなさを無くせ。アホ」
「いつつ…、だからってでこぴんする必要あったっすか?」
「王国魔法師団の師団長だぞ?俺らの会話が聞こえてたりしたらどうすんだよ」
「尚更いいじゃないっすか!好きって事を相手に伝えましょうよ!今聞いてるかもしれないんすから!」
「アホか!!なんでわざわざ聞かれてるかもしれない状況で言うんだよ!」
「ヘタレな先輩が悪いっす」
はっきりいうな…俺だって傷つく。
「ってか、先輩って言うな、団長と言えといってるだろ」
「もう、細かいんすから…わかりましたよ。だんちょー」
——一方その頃
「いつまでその調子なんですか…いい加減戻ってきてください」
机に突っ伏した私にこう言う事を言ってくるのは彼女しかいない。
ミリア=エル=ミレクシア団長。
王国魔法師団で最も頼りにしている私の部下。
なんだけど…
「はぁ…師団長が“こんなのだから”いつも魔法師達に哀れな目を向けられるんですよ。もう少ししっかりしてください」
「こんなのってなによ!?普段はしっかりしてるじゃない!魔法師達にはそう思われてるかもしれないけど、国民や騎士にだって凛々しくも可憐な王国最強の魔法師で通ってるんだから!!」
「いつもはいいんですよ。ですが、普段から漏れてます。素が」
そういってミリアはメガネを外して、目頭を押さえる。呆れてる時の癖だ。
「はぁ…それで、今日は何を話したんですか?」
「勇者召喚のこととか、原罪のこととか、後は“例の問題”ね」
「なるほど、まぁ、師団長の個人魔法はよくわかりませんからね。原罪なんて、どうやって見るんですか?そもそも原罪は神が定めた七罪のことですよね?……そんなものを見れるなんて…本当に神に愛された人なんですね」
「いつもいってるけど、目を凝らしたら中に色が見えるのよ。それ以上でもそれ以下でもないわ」
目を凝らす…少し嘘ではあるけど、あながち間違ってはない。
個人魔法…貴族ではない個人に与えられる特別な魔法。これと類似する家系魔法は家族が持つ魔法。どちらも魔法を人類に教えた神とされる魔神•バルドに愛されてる証拠…なんて、聖国は言ってるけど、どうやら。
「私も少し落ち着いてきたから、書類整理始めたましょっか」
「分かりました。それじゃ、半分持ってきますね」
「ありがとう。ミリア」
「これも私の業務ですので」
さて、それじゃ、書類を…
「失礼します!!フレイア子爵が御乱心なされました!鎮圧しようと思ったのですが、騎士にも魔法師にも対処が難しいようで…恐らく例の事件と関係あるかと!!」
整理しようと思ったら、また起きたみたいね。こんなんじゃ、書類整理もできないわ。
ほんとは部下にやらせたいけど、私以外じゃ対処できないのよね。
「分かったわ、今から行く。ミリアは私の代わりにここの守護をお願い。私は騎士団に行ってこの件の要請に行ってから、転移していくわ」
「分かりました。子爵領にいる魔法師達にそう伝えておきます。お気をつけて。クレイリー魔法師団長」
「えぇ、ありがとう」
敬礼するミリアに私は答えて、王城の騎士団の執務室へと向かう。
…行く前に「この調子でずっといれば私も師団長を気にする必要もないのに…」ってことは聞かなかったことにしようと決めた。
騎士団長と魔法師団長 @jjjjjjkkkhj
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