騎士団長と魔法師団長
@jjjjjjkkkhj
第1話
「はぁ…未だ事件の犯人が見つからないなんて。騎士団としてあるまじき失態だ」
謁見の間から、国王へ報告して騎士団の執務室へ向かう途中、騎士団長である俺—デイン=トレア=メニックは、ため息をこぼす。
俺が守るべきこの国—レイニア王国は今、貴族や平民問わず、異常現象に襲われていた。
“レイニア王国、人格急変異常”。これは、今まで大人しかった国民が、人が変わったようになるこの国で起きてる異変である。
普段なら、人が変わったぐらいで俺たち騎士団が関わる必要はない。だが、“それ以上のこと”を犯してしまうのだが、起きることが“本当の異常”なのだ。
例えば、妻も子供もいる平民が外出中の貴族のご令嬢を誘拐し許可も同意もなく腰を振るなど、領民からの信頼も厚い貴族の領主が、急に剣を振り回し、自分の領民を虐殺するなど。
そして、もう一つ不可解な点。それは、異常な筋力及び魔質(魔力の質)の向上だ。
「これがいっそ、“魔王復活の予兆”…とか言われたらまだマシなんだがなぁ」
「やめてよ。縁起でもないんだから…本当に復活したらどうすんの?」
「あぁ、クレウリー魔法師団長か。すまない、例の事件でな」
俺の後ろから声をかけてきた人物。
ディア=クレウリー、魔法師団長。本来なら貴族位しかつけない魔法師団長に実力だけで上り詰めた天才だ。
「例の事件ねぇ。人を凶暴化させる魔法…も考えたけど、そもそもの“原罪”が違うから多分違う。人を操る魔法?でも、それは魔族の魔法だし。まさか、本当に?」
「すまない、クレウリー魔法師団長。少し思考を中断してくれると助かる」
「あぁ、ごめんなさい。でも、気になると止まらないから」
「……まぁ、今回が初めてでもないしな」
にしても、原罪が違う…か。
原罪とは、クレウリー嬢曰く、“最初から人に定められた罪”である。
そして、それを視ることができるのが、彼女の“個人魔法”である。
個人魔法とは、その人にしか使えない特別な魔法。それとは別に、その家系に受け継がれる家系魔法というものもあるが、今は関係ないため飛ばしておこう。
「原罪が違うからと言って、行動が縛られるわけではないだろう?だったら凶暴化でもおかしくないのでは?」
「原罪っていうのは、その人に刻まれたいわば本能のようなものなの。例えば、空腹で死にそうなのに、お金を盗もうとする?それよりも、何か食べるものを探すわよね?原罪も一緒なの。原罪にとっては、その罪がいつも足りないもの。いつも、寝ていたい人は、お金を貯めるよりも、寝ることが優先。お金を集めることは二の次なの」
「となると、何しても原罪からそれた行動はしないのか」
「そういうこと。はぁ〜、こんなことなら勇者を召喚してくれなんていってきた国王様に乗っとくべきだったかなぁ」
「勇者召喚?本当にやるつもりか?」
「まさか?冗談よ。冗談」
俺が訝しんで聞くと、クレウリー嬢は手を振りながら否定した。
「そうか。ただ国民が暴れてるおかしくなってるだけなのに、異世界から勇者を呼んだなんて言われて、急に動物や人間を殺してくれなんて言うのは、気が引ける」
「そうね、伝承では、あそこは争いなんかないみたいだし。平和な世界を生きてる子供に、この世界は少し、厳しいわね」
「そうだな。あぁ、クレウリー魔法師団長。ありがとう。今日はいい話を聞けた」
俺に背中を向けて歩き始めたクレウリー嬢に、俺は一言例を述べた。
「そう、騎士団長の役に立ってよかったわ。何かあれば私のところに来て。相談に乗るわ」
「ありがとう。いつも助かる」
「じゃあね。“デイン”」
「あぁ、また」
そういって、俺も、騎士団の執務室へと向かっていく。
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