イデア

皆が教師が黒板に綴った授業の内容を


迷いなくノートに書き写していく


室内はチョークが黒板を弾く音と


シャーペンの音が無機質に流れる


授業の内容は年間カリキュラムで


あらかた決まっていて大幅に変更されることは


なく既定路線に沿って授業が進む為


間違いが起こる事は少ない


仮に黒板に書いた内容が間違っていても


そこで気づいて修正すればこと足りる


またこの情報化社会ではあらゆる情報を


得る手段を自分たちはいくらでも持っている




だがもし今この世界自体が偽りというのなら


一体それが何をもって偽りだと証明し


その果てにある真なる答えを見つけ出す事が


出来るのだろうか


その問いに答えを出すのはきっとあてのない


旅路になるが


現在進行形で既定路線でない事が起きているのもまた事実である


とかく私は今自身の中に渦巻いている


モヤモヤした気持ちや

あの日旧図書館で見た事実を確かめる為にも

早々に答えを見出さなければならない。


そう決心し、下駄箱に書き置きを残し


初秋に差し込む朝の屋上で


彼女の到着を待った。

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彼方 @hima4200

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