第56話 IF下位ダンジョン・1
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・下位ダンジョン15階層転移部屋
必死で止めるトトリアさんをクレイルさんが誠心誠意説得(物理)し、何故かボクも同伴で下位ダンジョン15階層転移部屋まで来てしまった。
必須アイテムであるはずの『偽りの仮面』は2つしか無いので、調査に行けるのはボクとクレイルさんのみとなってしまった。
調査中シャイニスには休暇がてら野外に解放して好きにさせる事にした、シャイニスも久しぶりに自由に走り回れる事を喜び一瞬で地平線へと疾走していった・・・う~んもう少し自由な時間を与えるべきかな。
道中はクレイルさんと他愛も無い雑談や以前お世話になっていた、辺境都市イスラートの近況などを教えて貰った。
隠れたボクの活躍によってイスラートでのモンスターパレードによる被害はほぼ無かったそうだ。
代わりに各国には多少の被害は出たそうだが、国単位で見ると大したことではないらしい。
そんな世間話をしながら進むボク達に余計なちょっかいを掛けてくる命知らずはいなかったようで、あっさりと目的の階層へと辿り着いた。
転移部屋から階層ボスのエリアへと繋がる扉は施錠されていなかったので、他のパーティーが階層ボスに挑んでいない事はそれだけで確認出来る。
すでに15階層のメダルを所持しているボク達は再度階層ボスと戦わずにボスエリアへと入る事が出来る。
再戦する方法もあるが今は不要なので別ルートへ行く方法を探す、まぁ鑑定ですでにやり方は知っているのでさっさと済ませてしまいたいが、クレイルさんがしっかりと記録に残さないと他ギルド職員から怒られるとの事で手順を踏んで検証しているところだ。
「ナイヤさんこれで別階層へのルートが開くのかしら?」
『偽りの仮面』と20階層のメダルを持ってクレイルさんがボクに確認をしてきた。
「はい、それで問題ありません、仮面越しに見える光る彫像にメダルをかざして下さい」
ボクに言われる通りにクレイルさんが彫像へメダルをかざすと、何処かで聞いた聞き覚えのある効果音と共に、彫像とは別方向の壁がスライドして隠し通路が現れた。
・・・この演出は自称聖女の趣味か?・・・キライでは無い演出だ。
「・・・こんな仕掛けがあったなんて今まで気付きもしなかったわ、メグミは何故この事を黙っていたのかしら?」
「・・・クレイルさんは初代カマモトダンジョン伯とお知り合いだったのですか?」
長命種であるハイドワーフの彼女であればもしかしたら、当時の彼等と交友があったのでは無いかと思いダメ元で尋ねてみた。
「・・・メグミは私の恩人であり心の友よ、この衣装も当時がさつだった私にメグミが教えてくれたのよ♡」
ゴスロリ風のドレスアーマーを優雅に回転しながらボクに披露しているクレイルさんは何処か楽しそうだった。
出る所は出ていて、引き締まった身体に纏っているドレスアーマーは非常に美しかった、本人からすると綺麗よりも可愛いと言う感想が欲しかったらしいが、長身でムキムキな肉体美のクレイルさんにはどうしてもその感想は出てこないと思う。
「それと彼女の事は堅苦しい言い方では無く、メグミと呼んで欲しいの、今のカマモト家はメグミの直系では無いから本来そう呼ばれる者はもう・・・・・・」
そう言えばネクラマンサー尾根倉命と一緒に封印されていたのでしたね、変な称号も貰ってしまったけれど・・・生きているって事かな今でも。
「分かりました、メグミさんはどんな方だったのですか? このダンジョンをこんな形にしたのは彼女ですよね?」
「・・・どんな娘かねぇ、それより何故メグミがダンジョンを作り替えたと思うの?」
「所々に冒険者ギルドにも記載されていないギミック、ギミックの発動時の奇妙な音、冒険者ギルドの資料には無いですが、落ち人の記録や物語にそのようなこだわりがあると記載されていたのを思い出したので、このダンジョンにもそんな細工がされているのかなと思って尋ねてみました。
もしかして他にこんなギミックのダンジョンが在るのであればボクの思い違いですけれど」
「・・・そうね、大抵のおかしなダンジョンは異世界人が関わっているわね、大概が『ダンジョンマスター』の地位を得て好き勝手の改装しているわ、メグミ達もそれぞれが攻略したダンジョンに手を加えている可能性も無いとは言えないけれど、少なくとも『ダンジョンマスター』にはなっていなかったと思うわ」
「その根拠は?」
「『ダンジョンマスター』は力が強大な分ね制約が多いのよ、冒険者ギルドが知っているだけでもダンジョンの特性にもよるけれど多種多様にあるわ。
そして、余程特殊な状態で無い限りダンジョンから離れる事が出来なくなるのよ、え~とメグミ風に言うと「運命共同体」とかだったかしら、だからそれ以外だと精々出来てもダンジョンコアへのある程度の干渉や交渉かしら、専用のマジックアイテムを使用してね。
そのマジックアイテムも代々各家の当主が受け継いでいるわ」
「ダンジョンを管理するためにですか?」
「そうね、結構危険な所もあるから封印したり、規制したりして代々管理しているのよ・・・でね、20年以上その管理が疎かになっていた可能性が出てねダンジョン伯3家を連れて調べたのよ」
そこからはクレイルさんによるダンジョン都市ウルグドの始まりと4人の異世界人達の物語が語られた、主にメグミさん中心の話ではあったが・・・しかしこの方は何故ボクにこんな話をするのだろうか? 敵対反応は無い、どちらかと言えば慎重・怯え・恐怖・畏怖・感謝の反応がある。
「ナイヤさん、正直に話そう私はアナタが怖い、私のスキルと長年の直感が全力で関わるなと言いている、でもねそれ以上に感謝もしているの、メグミの思いを救ってくれた事にね、初心者ダンジョンに封じてあったネクラマンサーの使い魔を討伐してくれたのはアナタですね・・・ありがとうございます」
なんか色々とバレている? カマを掛けられている? 敵対はしていないし、ここはこの波に乗っておくべきかな?
「ふっ、大したことはしていませんよ、ちょっと依頼を受けただけです、報酬はすでにいただきましたしね」
「あっ、その報酬についてですけれど表には出さないようにして下さいね、初心者ダンジョンの代行管理者が全ての財宝を渡した事を伝えてしまったので、各ダンジョン伯の小僧共が血眼になって行方を捜していますから、まぁ過去約20年の記録を引っくり返している状態なので物的証拠でも出ない限りはナイヤさんに辿り着きはしてこないはずですけれど・・・既にどなたかに見せています?」
真顔で聞かれたが財宝は収納の中なので誰にも知られてはいないが、サンダードラゴンの素材を勘違いされないかちょっと不安かな。
人造人間は冒険者ライフを満喫する!? ku-ma @ku-ma01
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