第38話 ハニャさんと年末報告を書きます
日々のんびりと採取や動画投稿をしている内に、七月が終わりました。八月に入ってすぐの今日は、ハニャさんと年末報告についての相談です。
年末報告とは、神や天使が今後どう成長していきたいか目標を立てたり、今年一年の反省をしたりして、各々の進捗状況を天界上層部に提出する行事です。
この世界は一年が十か月ですので、八月中に報告書を作成し、九月までに提出するのが毎年恒例となっているのだそうです。それでもし、提出した書類に何らかの問題があれば、上層部から突き返されて再提出となります。
最終的には、十月の終わりまでに認可を得なければまりません。もし認可を得られなければ、最悪の場合、降格も有り得るそうです。今年一年の総決算とでも言うべき行事なのでしょう。
一番下の身分である見習いの場合は降格こそありませんが、こういった重要な仕事をこなせないと、上層部から悪い意味で目を付けられてしまうとか。そしてあまりに素行が悪い場合は、天界からの抹消まで有り得るとか。
そんなお話を聞くと、少し怖いですね。
天界に生まれる存在は善良な魂が選ばれているそうですが、こちらに生まれてから堕落してしまう場合もあるそうで。私はそうならないよう、努々気を付けないといけませんね。
「早めに報告書を作って提出した方がいいんだ。もし万が一、提出した書類に何らかの不備があって再提出になったとしても、期限までに余裕があった方がいいからね。何より、ギリギリに提出するよりも期限に余裕を持って提出した方が、上層部の心象もいい」
「ごもっともです」
「はいでしゅ」
ハニャさんの助言に、私とモリエルさんは深く頷きます。
私の担当官であるハニャさんは、同時にモリエルさんの担当にもなって下さいました。ですので、私達二人の書類作りの相談に乗って下さっています。
「まずは、今年やってきた事をまとめて。それから、今後の目標かな。目標に関しては二人とも、見習いから下級へ上がる為に、来年以降は何をしていくか、計画を立てておくといいと思う」
「昇進の為の計画ですか」
「はわわ、大変でしゅ」
見習いから下級に昇進するには、5年から10年はかかると聞いていました。その為の計画を、最初の一年できっちり立てなくてはならないのでしょうか。
私達が二人して不安そうな顔をしたからでしょうか。ハニャさんが苦笑して、ゆるゆると首を横に振りました。
「別に、昇進に必要な計画を、すべて立てる必要はないよ。いずれは昇進できるように、まずはどれからやりたいか考える、といったところかな」
どうやら、すべての計画を綿密に立てるのではなく、来年やりたい目標を定める程度で良いようです。一安心しました。
ではまずは、今年のまとめです。
私は1月の初めにこの世界に見習い神として生まれ、基礎講座を受けてから、いくつかの職業の体験実習を受けた後に、最終的に採取課に就職しました。
その後、聖獣であるしらたまさんとちまきさんを同居人として迎え入れ、天使のモリエルさんが卵から孵り、同居人が増えました。
今年の後半には、ハンプタン様からのご依頼を受けて、副業のお仕事として、動画投稿も始めています。
これまでに私の取得したスキルは、「採取」「鑑定」「浮遊」の三つです。今後ポイントが貯まれば、「空間術」や「飛翔」といった、私が取得可能なスキルも取得していきたいところですね。ですが、それらのスキルは必要ポイントが多い上に、他にもステータスの強化といった取得条件がありますので、取得できるようになるまでには、かなりの時間がかかりそうです。
モリエルさんの取得したスキルは、「料理」です。そして今後は、「裁縫」、「栽培」、「物質強化」、「付与定着」なども、ポイントが貯まり次第、取得していきたいとの事です。
モリエルさんはスキルを取得する前から、料理も裁縫も栽培も、とてもお上手なのですけど。本人はもっともっと、その道を極めていきたいようです。
しらたまさんは、先日「防御結界」のスキルを取得しました。自分を中心に半円形の結界を張れる能力です。非常時に私達皆を守れるようにと、そのスキルを選んで下さったのです。とても有難い事です。
彼は今後、「身体強化」のスキルの取得を目指すそうです。
ちまきさんは、「身体強化」のスキルを取得しています。こちらは運動能力や反射神経といった、体全体の能力を強化するスキルです。今後は「ブレス(火)」や「斬撃(風)」といったスキルの取得を目指すそうです。
ちまきさんもまた、非常時に私達を守る為に、このスキルを選択して下さいました。本当にお二人の心遣いには、感謝しかありません。
これまでのまとめはこんなところですね。そしてここからは、来年以降の計画となります。
まずは、見習いから下級への昇進する為の条件を確認します。
下級に上がるには、定められた数値以上のステータスが必要となります。こちらはポイントを使って、地道にステータスの強化をしなければなりません。
次に、いくつかの資格を取得する必要があります。この中には、人界に一定期間以上滞在といった、特殊な条件もあります。
そして、それらすべての条件をクリアした上で試験を受けて合格すれば、無事に昇進できます。
「つまり私達はこれから、資格取得の勉強をしたり、人界に滞在する為の準備をしたりしないといけない訳ですね」
神として過ごす以上、人界の状況を自分の目で見て、きちんと知っておかねばならないのでしょう。人界を魔物から守るのも、神や天使の役割ですから。
「でも、人界は危険ってお話でしゅ?」
モリエルさんが心配そうに、ハニャさんに質問します。私もモリエルさんも自衛能力がありませんから、安全な場所の外に出るのが不安な気持ちはわかります。
「そうだね、だから戦闘能力のない神や天使が下に降りる場合は、一定人数を集めて期間を区切って、護衛をつけて対処するんだ」
ハニャさんがそう説明して下さいました。
その護衛役は、エマさんのような戦闘員さんが担当するとの事です。
「人界に降りれる期間は決まっているのですか?」
「うん。年に五回募集しているよ。降りる地域ごとに難易度が違うから、最初はできるだけ安全なところを選んだ方がいい。自分で身を守れるなら自由に降りれるけれど、そうでないならこういった催しを利用しないとね」
自分で自分の身を守れるなら、もっと自由度が高いのですね。エマさんも以前、戦闘員としての訓練で人界に降りていましたし。
(私も護身術を習った方がいいのでしょうか)
いくら護衛がつくとはいえ、危険な場所に行くのにまったく戦えないというのは、危ないかもしれません。後でモリエルさん達に護身術を習ってみないか相談してみましょう。
「それなら来年の計画は、人界に降りる期間を先に決めておいて、その他の期間は資格の勉強、というふうにした方がいいですね」
モリエルさん達と相談しながら計画を立てて、報告書を作成していきます。
……そんな訳で私達は来年は、人界に降りる事になりそうです。
天界でスローライフしています アリカ @alikasupika
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