第2話 王女の友達
サーナとミアリーの十七歳の誕生日パーティーが終わって、三日。
王宮内がドタバタしていた。
「……外が騒がしくなっているようね。どうしたのかしら」
「サーナお姉様が何かしたからではなくて?」
「私が?何かしたといえば……あ、婚約破棄の件かな〜」
「サーナ様、そんなけろっと他人事のように言わないでくださいませ」
王宮内がバタバタしているというのに、サーナとミアリーはお構いなしでサーナの部屋でお茶を飲んでいる。
マイヤも二人のそばでお茶を淹れたりお菓子を用意したりとしているが、ソワソワしてあまり落ち着かない様子。
王宮内と二人の温度差が激しく戸惑ってしまっているのだろう。
バンッ!
「サーナ!話がある!」
「何ですか、ノックもしないで私の部屋に入ってくるだなんて失礼だとわからないのですかヴィアラ。そこまで頭が悪いと思っていませんでしたが、もしかして教育を真面目に受けていらっしゃらなかったのですか?」
「何を言うんだ。そこまで言わなくたっていいだろう!でも今はそんなことはどうだっていい。サーナ、どうしてくれるんだ!」
「どうしてくれる、とは」
「しらばっくれるな!知らないわけがないだろう、いきなり婚約破棄だなんて話を聞いたぞ!」
「あぁ、婚約破棄の件ですか。サインよろしくお願いしますね」
「ああわかったぞ、なんて言うわけがないだろう!どう言うことか、理由を説明しろ!」
大声で怒鳴り込んでくるヴィアラに顔色ひとつ変える事なく、サーナは静かに紅茶のカップに口をつけた。
そして、静かに話しだす。
「言ったでしょう?私は黙ったままではいないのでご容赦くださいませ、と。その言葉通りのことをしたまでですわ」
「だからと言って許可もなく婚約破棄とは、そっちこそ無礼だと思わないのか?!」
「あら、だって、他の御令嬢と遊びたいのではなくて?私という婚約者がいなくなれば、ヴィアラ様は自由に他の御令嬢と会えますし、愛の言葉を囁いて差し上げられるのですよ。いい話なのではないのですか?」
「それとこれと話が違う!」
(何も話をわかっていない)
サーナは静かにため息をつくと、ギロリとヴィアラを睨みつけた。
「では言い方を変えましょう。婚約者を持ちながら、御令嬢に愛を囁くということは不倫と同じですわ。私はあなたがどこに遊びに行こうが気にしませんが、愛の言葉は聞き捨てなりません。そんな婚約者を私が笑って許したままでいると思いますの?」
「っ!」
「私はこの国の王女で、ミアリーと同じ未来の王太子候補です。このリッフィル王国を支えることになった時、遊ぶような夫を持ちたくはありません。婚約破棄は私の中で当然のことをしたまでですが、何か反論はおありで?」
「……何もない」
「では、書類のサインはよろしくお願いします。婚約破棄成立になりますので、どうぞ大人しくお帰りください、元婚約者様」
サーナはそう言って護衛騎士にヴィアラを帰らせるよう命じた。
その様子をマイヤは青ざめた顔で見ており、ミアリーは呆れたような心配するような複雑な表情で見ていた。
ヴィアラが出ていくのと同時に、今度は父である国王が入ってきた。
「サーナ、ヴィアラとは話がついたようだな」
「はい、お父様。ここにいらしたということは何か私とミアリーに御用ですか」
「ああ。三年だけだが、学園に通わないか?」
「学園ですか?」
「いろいろな令息令嬢もいるし、婚約者を見つけるのに二人ともちょうどいいと思ってな」
サーナはそれを聞くと顔を曇らせた。
「……それは嫌ですわ、お父様。だって、私は友人作りどころか人付き合いも下手だと言われるのですよ」
「それに、婚約者様を見つけるのなら、舞踏会やパーティーに参加すればいいのではないですか?」
「そんな頻繁に開くわけにはいかないだろう。いい経験になるはずだ。途中中退してもいいから、とりあえずいってきなさい」
その言葉を聞くと、サーナはさらにむっつりした表情になった。
双子の姉妹王女はお見通し〜秘密にしたってバレますがご存知で?〜 桜月もも @koninia
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