第10話 【終】大人になればわかるのか?

 


 人に怪我をさせると言うことは、とても怖いことだ。


 何度も謝っても相手には傷は残り、時間をまき戻すことなどできない。


 私は、杉田に自分を重ねていたのかもしれない。

 私のように、人を傷つけてから後悔して欲しくなかった。

 誰かを傷つける前に、止めてやりたかった。


 私は、人を傷つけると言うことが、自分が傷つくよりもはるかに痛く苦しいことを誰よりも知っていたからだ。


 けれど、それは自己満足で傲慢だったのかも知れない。


(杉田、ごめん。私はもう怖くてあんたとはやり合えないよ……)


 私は、杉田は私とは全く違う人間であることに納得した


 私の人を傷つけないで欲しいと言う気持ちは、なんど杉田にぶつかっても届かなかった。


 そして、杉田の抱える『闇』や『悪意』を、私は少しも理解できなかった。



 私は、完全に杉田から距離を置いた。


 何かやられても、今までのように反撃はせずに距離をとり、先生にすぐに言うようにした。


 反撃をしなければ、追加の攻撃を食らうことはない。


 悔しいが2回攻撃を食らうよりは痛い思いもしなくて済んで、かなり楽になった。




  * 



 結局、杉田が最終的にどうなったのかは私は知らない。


 小学5年生の冬に私は東北へ転校したからだ。


 クラスで行われた私のお別れ会の時、杉田は参加していなかった。

 その頃はもう、杉田はあまり学校に来ていなかったのかも知れない。 

 

 

 私はその後も時々、杉田の凶暴性は生来のものなのか、あるいは環境がストレスとなって表れたものだったのか考えたが答えは出なかった。


 ただ、どんなに私が本心を叫んでも、どんなに本気でぶつかっても、蹴り合いの喧嘩をしても漫画のように友情が芽生えて和解することはない、ということが現実だと知った。



 小4の私はクラスメイトを守るために闘う美少女戦士だった。


 そして、子供の私では理解できない『悪』があることを知った。



 いつか大人になったら分かるのだろうか?


 

 杉田の心の内が、


 そして本当の『悪』というものが何なのかを……。




 終わり


* * * 



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【実話】美少女戦士だった小4の私は、目の前の『悪』について考える 天城らん @amagi_ran

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