【スピンオフ】???

遥か遠いある日のこと

 その地には赤い花が枯れずにずっと咲いていた。

 その赤い花については様々な伝説が語られてきたが、誰も真相は分からなかった。

 ただ、共通して語られたのは、その地が呪われていることだった。

 ずっと枯れなかった、ずっと咲き続けていたその赤い花は、いつも天に向かって手を伸ばしているかのように真っ赤な花弁を向けていた。



 数百年経ったある日、その赤い花の花びらが風に向かって一斉に散った。

 風に乗った花弁はそのまま天に消えた。

 だが、一つの花弁がその場に留まった。



 その日の夜、たった一つだけ残った花弁がゆっくり地面に落ちた。

 地面に落ちた瞬間、その花弁は形を変えた。

 花弁はぐにゃりと歪み、だんだん人の形となる。

 そして、は生まれた。

 その瞬間、の頭の中にはっきり浮かんだのは大きな樹の風景だった。


「いつき……」


 乾いた声でそれは己の存在に名前を付けた。


「私は、いつきだ」


 そう言うと、――いつきは空を仰いだ。




……それから数年後の本編へ続く

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【本編「夜明けのマリオネット」のスピンオフ】:遥か遠いある日のこと 蘇芳  @suou1133

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