第5話 ヒーローの不思議な運命
「うん、確かにこの石が、力石と呼ぶものだね」
「そうか……、いやはや危ないところだった」という彼は安心と満足で脱力した。あのまま不良たちに力石が蹴られてしまっていたら、不良が最強になり、闇の帝王亡き後、彼に不良の力が宿ってしまっただろう。不良にならずに済んだのかもしれないと彼は心の内でホッと胸を撫で下ろした。
「これから力石は、ちゃんと大事な場所に保管しとくのよー」ミヨッチは言った。「もう肌身離さず持ち歩きなさい。そして、力石が君に与えてくれる恩恵は、闇の帝王の時みたいに忘れたりなんかしないように注意しときなさい」
「分かった、ミヨッチ、短い期間だったが、ありがとう」
「これでお別れね、明日の夜、使いの者がこの自宅にやってくるから、後を着いていけば、君を母星まで宇宙船で送り届けてもらえる。その発着現場は地球人の目に見えないようにカモフラージュしておくから安心しなさい。ちゃんとお土産話でも考えときなさいねー。皆、君で持ち帰ってくる武勇伝を待ち望んでいるわ」という彼女は素手で窓辺を開いた。
「もう行くのか、ミヨッチ」
「チョメチョメマン、本当に強くなれて、良かったわね。君の母星や地球は安全だから、皆君を尊敬すると思うわ。心待ちにしといてね」
「いろいろと教えてくれてありがとう」彼は言った。「おかげで助かったよ」
そこで振り返ったミヨッチは満面の笑顔で応えた。
「君はあたいと出会えて不思議な体験だったでしょうけど楽しかったわ。これから先も末永くお幸せにね」
そう言って、ミヨッチは今度こそ真っ暗な空の彼方に飛翔していった。
彼が手元にある力石は、物言わずともお前こそが最強だと告げている気持ちにさせてくれる。
「よし、これから俺は最強ヒーローとして身も心も強く逞しく生きるぞ!」
あれから一年。
チョメチョメマンの名前は、銀河中で誰からも賞賛されているのだ。
宇宙中の誰もが、不思議な彼のことを羨み崇め立てる。そんな者たちへ手を振って応える彼の雄弁さと温厚さへ定評があった。そんな彼の首飾りにはあの小石が形そのままに埋め込まれてある。その力石の効果を裏で知っている者は、一部の宇宙機関関係者とミヨッチだけである。この秘密情報が外界へ漏れ出る心配もあまりなさそうだ。この男が懐へこの力石を持っている限り、世界中はおろか、全銀河中は平和なまま持続可能状態であろう。
絶対ヒーロー チョメチョメマン!?
その最強の名を、知らぬ者はもはや銀河中どこにもいない。
今の彼では君の平和な日常を陰で見守り続けてくれているのかもしれないよ……。
絶対ヒーロー チョメチョメマン!? マコ @ideazin
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